(分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産の範囲)

31・32共−1 措置法第31条第1項又は第32条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定により分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産は、次に掲げる資産に限られるから、鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)、温泉を利用する権利、配偶者居住権(当該配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利を含む。)、借家権、土石(砂)などはこれに含まれないことに留意する。(平19課資3−5、課個2−15、課審6−9、令2課資3−7、課個2−18、課法11−4、課審7−9改正)

(1) 土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその付属設備若しくは構築物(以下「土地建物等」という。)

(2) 事業又はその用に供する資産の譲渡に類するものとして措置法令第21条第4項第2号に掲げる株式等(措置法第32条第2項に規定する株式等をいう。)のうち措置法令第21条第3項各号に掲げるもの

(転用未許可農地)

31・32共−1の2 農地法第3条第1項《農地又は採草放牧地の権利移動の制限》若しくは第5条第1項《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定による許可を受けなければならない農地若しくは採草放牧地又は同項第6号の規定による届出をしなければならない農地若しくは採草放牧地を取得するための契約を締結した者が当該契約に係る権利を譲渡した場合には、当該譲渡による譲渡所得は、措置法第31条又は第32条の規定の適用がある譲渡所得に該当するものとする。(平21課資3−8、課個2−24、課審6−23、令2課資3−7、課個2−18、課法11−4、課審7−9、令5課資3-5、課法10-37、課審7-5、徴管6-27改正)

(受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡等)

31・32共−1の3 受益者等課税信託(所得税法第13条第1項《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》に規定する受益者(同条第2項の規定により同条第1項に規定する受益者とみなされる者を含む。以下「受益者等」という。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいう。以下同じ。)の信託財産に属する資産が31・32共−1に掲げる分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産である場合における当該資産の譲渡又は受益者等課税信託の受益者等としての権利の目的となっている信託財産に属する資産が31・32共−1に掲げる分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産である場合における当該権利の譲渡による所得は、原則として分離課税とされる譲渡所得となり、措置法第31条又は第32条の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用することとなる。なお、この場合においては次の点に留意する。(平19課資3−5、課個2−15、課審6−9追加、平19課資3−12、課個2−35、課審6−17改正)

(1) 受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡があった場合において、当該資産の譲渡に係る信託報酬として当該受益者等課税信託の受益者等が当該受益者等課税信託の受託者に支払った金額については、所得税法第33条第3項《譲渡所得》に規定する「資産の譲渡に要した費用」に含まれる。

(2) 委託者と受益者等がそれぞれ一であり、かつ、同一の者である場合の受益者等課税信託の信託財産に属する資産の譲渡があった場合又は当該受益者等課税信託の受益者等としての権利の譲渡があった場合における当該資産又は当該権利に係る資産の措置法第31条第2項に規定する「その取得をした日」は、当該委託者が当該資産の取得をした日となる。

(注) 当該受益者等課税信託の信託財産に属する資産が信託期間中に信託財産に属することとなったものである場合には、当該資産が信託財産に属することとなった日となる。

(3) 受益者等課税信託の受益者等としての権利の譲渡があった場合において、当該受益者等としての権利の目的となっている信託財産に属する債務があるため、当該譲渡の対価の額が当該債務の額を控除した残額をもって支払われているときは、当該譲渡による収入すべき金額は、所得税法第36条第1項《収入金額》の規定により、その支払を受けた対価の額に当該控除された債務の額に相当する金額を加算した金額となる。

(注) 譲渡された受益者等としての権利の目的となっている資産(金銭及び金銭債権を除く。)の譲渡収入金額は、当該受益者等としての権利の譲渡により収入すべき金額からその信託財産に属する金銭及び金銭債権の額を控除した残額を基礎として、当該受益者等としての権利の譲渡の時における当該受益者等としての権利の目的となっている各資産(金銭及び金銭債権を除く。)の価額の比によりあん分して算定するものとする。

(4) 委託者が受益者等課税信託の受益者等となる信託の設定により信託財産に属することとなった資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、当該委託者が当該資産を引き続き有しているものとして、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》及び第61条《昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費等》の規定を適用して計算した金額となる。

(注) 当該受益者等課税信託の信託期間中に、当該受益者等課税信託に係る信託財産に属することとなった資産の取得費は、受益者等が、当該資産を当該受益者等課税信託の受託者がその取得のために要した金額をもって取得し、引き続き有しているものとして、所得税法第38条及び第61条の規定を適用して計算する。この場合において、当該資産の取得に係る信託報酬として当該受益者等課税信託の受益者等が当該受益者等課税信託の受託者に支払った金額については、同条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に含まれる。

(5) 分離課税とされる譲渡所得に関する課税の特例等の規定の適用を受けようとする受益者等が確定申告書に添付すべき書類については、昭和55年12月26日付直所3−20ほか1課共同「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)の28の4−53《信託の受益者における書類の添付》に準ずる。

(譲渡所得の金額の計算)

31・32共−2 分離短期譲渡所得(譲渡所得のうち措置法第32条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用がある所得をいう。以下同じ。)の金額又は分離長期譲渡所得(譲渡所得のうち措置法第31条第1項の規定の適用がある所得をいう。以下同じ。)の金額を計算する場合において、これらの所得の基因となった資産のうちに譲渡損失の生じた資産があるときは、その年中に譲渡した資産を分離短期譲渡所得の基因となる資産及び分離長期譲渡所得の基因となる資産に区分して、これらの資産の区分ごとに、それぞれの総収入金額から当該資産の取得費及び譲渡費用の合計額を控除して譲渡損益を計算する。この場合において、その区分ごとに計算した金額のうちに損失の生じたものがあるときは、その損失の金額は、次により他の譲渡益から控除する。

(1) 分離短期譲渡所得の損失の金額は、分離長期譲渡所得の譲渡益から控除し、なお控除しきれない損失の金額は生じなかったものとみなす。

(2) 分離長期譲渡所得の損失の金額は、分離短期譲渡所得の譲渡益から控除し、なお控除しきれなかった損失の金額については、当該損失の金額のうちに居住用財産の譲渡損失の金額(措置法第41条の5第1項に規定する居住用財産の譲渡損失の金額をいう。)又は特定居住用財産の譲渡損失の金額(措置法第41条の5の2第1項に規定する特定居住用財産の譲渡損失の金額をいう。)があることとなる場合を除き、生じなかったものとみなす。

(特別控除額の異なる資産の譲渡がある場合の譲渡所得の構成)

31・32共−3 その年中の分離短期譲渡所得又は分離長期譲渡所得のうちに、収用交換等の場合の5,000万円控除(措置法33の4)、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除(措置法35)、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円控除(措置法34)、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円控除(措置法34の2)、特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の1,000万円控除(措置法35の2)、農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円控除(措置法34の3)若しくは低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円控除(措置法35の3)の対象となる所得又はその他の所得の2以上がある場合において、その年中に譲渡した資産のうちに譲渡損失の生ずる資産があるときは、分離短期譲渡所得の譲渡益又は分離長期譲渡所得の譲渡益は、それぞれの金額の範囲内において、まず収用交換等の場合の5,000万円控除の対象となる資産の譲渡益から成るものとし、次に、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除、2,000万円控除、1,500万円控除、1,000万円控除、800万円控除若しくは100万円控除の対象となる資産の譲渡益又はその他の資産の譲渡益から順次成るものとする。
 その年分の分離短期譲渡所得の金額又は分離長期譲渡所得の金額の計算上、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41の5)、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41の5の2) 又は雑損失の繰越控除の適用がある場合もこれに準ずる。 (平21課資3−5、課個2−14、課審6−12、令2課資3−7、課個2−18、課法11−4、課審7−9改正)

計算例
具体的な計算例を示すと次のようになる。

特別控除額の異なる資産の譲渡がある場合の譲渡所得の計算例


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