直審3-49
直審4-23
直審5-6
平成3年6月3日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、社団法人日本証券業協会から別紙2のとおり照会があり、これに対して当庁直税部審理室長名をもって別紙1のとおり回答したから了知されたい。


別紙1

直審3-48
直審4-22
直審5-5
平成3年6月3日

社団法人日本証券業協会
専務理事○○○○ 殿

国税庁直税部
審理室長○○○○

 標題のことについては、貴見のとおり解して差し支えありません。


別紙2

日証協(企)3第4号
平成3年5月27日

国税庁直税部
審理室長○○○○ 殿

社団法人日本証券業協会
専務理事○○○○

 本年5月、メキシコの国営企業民営化の一環として、同国の電話会社であるテレフォノス・デ・メヒコ社(以下「テルメックス社」という。)の株式の売出しが、わが国を含め欧米諸国で行われたところですが、同社株式のメキシコ国外の売出し分については、テルメックス社株式20株を1ADRとして売出しが行われ、同ADRはニューヨーク証券取引所に上場されております。

このADR(米国預託証書:American Depositary Receipt)は、原株式の保管を見合いとして米国の預託機関(今回の場合は米国銀行モルガン・ギャランティー・トラスト社)が発行する証書であり、米国証券市場において早くから確立された外国株式の取引手法であります。したがって、ADRの発行は、常に原株式の裏付けを伴って行われることとなります。

発行会社との権利関係では、ADR保有者は、実質的に原株式の保有者として取り扱われ、当該ADR保有者による原株式に関する諸権利の実行(配当受領、議決権行使、会社からの諸通知の受領等)は預託機関を通じて直接ADR保有者により行われることになります。

つきましては、テルメックス社株式のADR形態での取得又は譲渡については、税務上、下記の通り取り扱われるものと解して差し支えないかお伺い申し上げます。

1. ADRの売買による所得の種類について

 ADRの取得又は譲渡は、税務上、有価証券(外国株式)の売買として取り扱うものとする。

(理由)
ADRと原株式は、その経済的効果、株主の地位に実態上相違がないこと、及び、大蔵省証券局から、ADRの取引は、その実態に鑑み、原株式の取引の一形態として取り扱う旨の判断がなされていることから、税務上も有価証券(外国株式)の売買とするのが適当である。

2. ADRに係るテルメックス社の配当所得の金額、邦貨換算時期について

 ADRに係るテルメックス社の配当の額(源泉徴収の対象となる配当の収入金額)は、同社が支払を決議した原株式に係る配当金額(ペソ建)でなく、預託機関が支払を決定した配当金額(ドル建)とし、当該ドル建配当金額を預託機関が支払を開始した日の外国為替公認銀行の対顧客直物電信買相場(TTB)により邦貨換算する。

(理由)
ADR保有者に対するテルメックス社の配当は、その総額が、預託機関に、いったん支払われ、預託機関が、米ドルに換算し、端数調整(1セント未満は次回に繰越される)を行ってから、テルメックス社の配当支払決議日の翌日において、ドル建の1ADR当たりの配当金額を決定し、支払うこととなる。このような過程でADRの配当金額は、決定・支払がなされるので、預託機関が米ドル建で決定・支払われた金額をADRの配当金額とし、邦貨換算日は、当該ドル建配当金額の支払を開始した日とすることが適当である。

3. ADRの期末評価について

 低価法を適用する場合には、ニューヨーク証券取引所において公表された最終価格に購入手数料等のADRを取得するために要する費用の額を加算した金類をもって期末評価額とする。

(理由)
ADRについて低価法を適用する場合の期末評価については、ADRが原株式の見返りとして発行されるものであるので、メキシコ証券取引所におけるメキシコペソ建の価格をもとに期末評価すべきとの考えもあるが、売出しが米ドル建のADRで行われ、当該取引のADRがニューヨーク証券取引所で取引が行われていることから、ニューヨーク証券取引所の最終価格に購入手数料等のADRを取得するために要する費用の額を加算した金額をもって期末評価額とすることが適当である。

4. 有価証券取引税について

ADRの売買は、株式の売買として取り扱うので、相対取引等国内で行われるADRの取引については、有価証券取引税は課税される。なお、証券会社を通じてニューヨーク証券取引所で行われるADRの取引については、課税されない。

(理由)
ADRは、株式の取引形態に過ぎないので、国内取引については、有価証券取引税が課税されるが、ニューヨーク証券取引所での取引については、同取引所における他の上場証券の取引と同様に課税の対象とされないと解するのが相当である。

以上