直審5−22
昭和54年10月27日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 他人のために農業協同組合から借入れし、その借入金を返済するために資産を譲渡した納税者から、当庁に対して別紙記載要旨のような照会があった。これについては、その債務を履行するための資産の譲渡が、その事実からみて保証債務を履行するための資産の譲渡と同等のものであると認められたので、所得税法第64条第2項の規定を適用することとしたから了知されたい。
 なお、これと同様の事案については、下記のいずれにも該当する場合に限り、これに準じて取扱うこととされたい。

(注) この取扱いは、名目上の債務者が、実質上の債務者のために債務を保証したと同様の事情にあると認められるものについて所得税法第64条第2項の規定を適用することとしたものであるから、名目上の債務者が当初から貸付けた資金の回収を意図していないと認められるような場合には適用がないことに留意する。

1 資金の借入をしようとする者(以下「実質上の債務者」という。)が農業協同組合の組合員でないため、当該組合から資金の借入ができないので、当該組合の組合員(以下「名目上の債務者」という。)がその資格を利用して当該組合から資金を借入れて、これを実質上の債務者に貸付けた場合のように、その借入及び貸付が債務を保証することに代えて行われたものであること。

2 実質上の債務者が、その貸付を受ける時において資力を喪失した状態にないこと。

3 名目上の債務者が借入れた資金は、その借入を行った後直ちに実質上の債務者に貸付けられており、その資金が名目上の債務者において運用された事実がないこと。

4 名目上の債務者が、その貸付に伴い実質上の債務者から利ざやその他の金利に相当する金銭等を収受した事実がないこと。


別紙

照会の要旨 

 A農業協同組合の組合員である甲(照会者)は、組合員でないために同組合から融資を受けることができない乙からの依頼により、甲名義で同組合から借入を行い、直ちにこれを乙に貸付けた。
 その後、乙が資力を喪失し、その貸付に係る債務の弁済が困難な状態に陥入ったため、甲は自己の負担においてA農業協同組合からの借入金を返済しなければならないこととなった。そこで甲は、自己所有の土地を譲渡して当該借入金の返済を行った。
 甲がした当該借入は、融資資格を有しない乙のために債務の保証をすることに代えて行われたものであるが、甲は、乙が資力を喪失して債務を履行することができないこととなったためやむを得ず自己の所有する土地を譲渡してその債務の履行をすることとしたものであり、その土地の譲渡は、その実質において保証債務を履行するための資産の譲渡に該当するものと考えられるから、当該土地の譲渡については所得税法第64条第2項に規定する保証債務を履行するための資産の譲渡として取扱われたい。