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- 酒類の公正な取引に関する基準の取扱いについて(法令解釈通達)
課酒1−6
平成29年3月31日
最終改正:令和4年3月31日 課酒4−26
国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿
国税庁長官
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号。以下「法」という。)第86条の3第1項の規定に基づく酒類の公正な取引に関する基準(平成29年3月国税庁告示第2号。以下「取引基準」という。)の取扱いを別冊「酒類の公正な取引に関する基準の取扱い」のとおり定めたから、平成29年6月1日からこれによられたい。
(理由)
法第86条の3第1項の規定に基づく取引基準の制定に伴い、その取扱いの明確化を図るため。
別冊
酒類の公正な取引に関する基準の取扱い
1 取引基準2(公正な取引の基準)について
2 取引基準3及び取引基準4(売上原価の算定方法)について
- (1) 酒類の売上原価の額は、酒類の銘柄等の製造又は仕入れごとに算定するものとし、酒類業者が取り扱う酒類全て又はビールや発泡酒といった酒類の品目ごとに合算して算定しないものとする。
-
(2) 酒類製造業者又は酒類卸売業者が酒類業者に支払うリベートは、酒類の売上原価の額の算定に当たり、原則として次の要件を全て満たすリベートに限り、当該酒類の仕入れに係る値引きとみなすものとする。
- イ リベートに関する基準が明確に定められていること
-
ロ 当該基準が取引の相手方に事前に示されていること
- (注)「当該基準が取引の相手方に事前に示されていること」とは、当該基準の内容が取引の相手方に対して、実際の販売に先立って書面等で示される必要があるほか、当該取引の相手方を対象とするリベートについては、その全体像が示される必要がある。
- ハ 対象酒類の仕入れと密接に関連するリベートであること
- ニ リベートの支払者において取引基準6の販売価格の算出上、控除した値引きの額である旨が 書面等により取引の相手方に伝達されていること
- (注)「書面等により取引の相手方に伝達」とは、契約書、納品書、請求書等の書面又は電磁的記録等において、リベートの対象となる酒類の銘柄、取引年月日、数量、それぞれの酒類ごとの値引きの額及びその合計額を明示して、取引の相手方に伝達されることをいう。
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(3) (2)に照らして、リベートのうち、次のようなものについては、酒類業者の実質的仕入価格の判断において、当該酒類の仕入れに係る値引きとはみなさない。
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イ 年度末等に事後的に額が判明するリベート
- (注)事後的に額が判明する場合であっても、取引期間中の販売状況や過去の販売実績等から当該リベートの受取りが見込まれる場合には、当該期間中の販売に対応する額を上限に、仕入れに係る値引きとみなして差し支えない。
- ロ 裁量的に支払われるリベート
- ハ 酒類の仕入れの際に添付される他の商品(食料品、仕入れに係る酒類以外の酒類等)
- ニ 広告費や販売活動の補助として支払われるチラシ協賛金、出店協賛金等
- ホ 取引の一方の当事者の認識がないまま取引の当事者以外の者から他方の当事者に支払われるもの
3 取引基準5(費用配賦の方法)について
-
(1) 酒類事業と他の事業に共通する費用の配賦に係る「当該酒類業者が選択した合理的な配賦方法」とは、各事業ごとの売上高比、仕入高比、売場面積比、作業従事時間数比など、酒類業者が事業の実情に即した合理的な理由に基づく配賦方法を用いていると認められる場合における当該配賦方法をいい、「その算出根拠が明らかにされている場合」とは、客観的な資料に基づき、当該配賦方法の選択の合理性の具体的な根拠が示され、かつ、計算過程が明らかにされている場合をいう。
なお、取引基準4に照らして、仕入れに係る値引きとみなすことができないリベートについては、酒類の販売に係る販売費及び一般管理費からも控除できないことに留意する。
また、当該酒類業者が通常用いる会計処理の方法と異なる方法による場合であっても、その理由に合理性がある場合には、その配賦方法を用いることとして差し支えない((2)において同じ。)。
- (2) 複数の酒類の銘柄等に共通する費用(これらの酒類に係る広告宣伝費、倉庫費、センターフィー、運送費や本社部門の人件費や通信費など)である販売費及び一般管理費等については、酒類の銘柄等ごとの売上高比や仕入高比、売場面積比、作業従事時間数比など、酒類業者が事業の実情に即した合理的な理由に基づく配賦方法により配賦を行った上で、それぞれの酒類の総販売原価を算定する。
なお、当該酒類業者が事業の実情に即した合理的な理由に基づく配賦方法により配賦を行っていると認められない場合又は(1)の「その算出根拠が明らかにされている場合」に該当しない場合には、売上高比により配賦を行う。
- (3) 研究開発費や酒類製造業者が料理飲食店に支払う契約料など、一括して計上される費用については、酒類業者が事業の実情に即して合理的な期間において当該費用を回収することとしていると認められる場合には、当該期間にわたって費用の配賦を行った上で、総販売原価を算定する。
4 取引基準6(販売価格の算定方法)について
酒類業者が、酒類の販売につき行う値引きに類する行為とは、販売価格の実質的な値引きと判断される行為をいう。
(例)
酒類小売業者が、酒類を販売する際に、販売価格の一部又は全部の減額に充当できるポイント等を提供する場合であって、当該ポイント等の提供が値引きと同等の機能を有すると認められる場合における当該ポイント等の提供
なお、当該ポイント等の提供が値引きと同等の機能を有するかどうかについては、

ポイント等を利用する消費者の割合、

ポイント等の提供条件(購入額の多寡に関わらず提供されるものか、一定金額の購入を条件として提供されるものか等)、

ポイント等の利用条件(ポイント等が利用可能となるタイミング、ポイント等の有効期限、利用に当たっての最低ポイント等の設定の有無等)といった要素を勘案し判断される。
5 取引基準7(指示)について
- (1) 法第86条の3第4項に規定する「公正な取引の基準を遵守すべき旨の指示」に当たっては、具体的な指示事項やその履行までの期間等について、当該指示の対象となる酒類業者の事業規模や取引の相手方との関係、取引条件など、事業や取引の実態を十分に踏まえるものとする。
- (2) 指示に従わない酒類業者について、法第86条の3第5項の規定に基づき公表を行う場合は、問題取引の内容及びこれに対する指示の内容について、可能な限り具体的に公表することとし、他の酒類業者において同様の取引が行われないよう注意を促すものとする。
6 取引基準8(命令)について
- (1) 法第86条の4に規定する「酒税の円滑かつ適正な転嫁が阻害され、又は阻害されるおそれがあると認めるとき」とは、酒類業者が、総販売原価を著しく下回る価格で継続して販売し、自己又は他の酒類業者の酒類事業の収支が悪化するなど、その経営内容に悪影響が生じている事実が客観的に認められ、当該事態が継続すれば、将来的に酒類の円滑な取引の運行が阻害され、ひいては酒税の保全に影響を及ぼすおそれが大きいと認めるときをいう。
- (2) 5(1)は、法第86条の4の規定による命令をする場合において準用する。
7 取引基準9(質問検査権)について
法第91条に規定する「酒類製造業者」又は「酒類販売業者」には、調査対象である酒類業者のほか当該対象者以外の酒類業者が、「その事業に関して関係のある事業者」には、当該酒類業者の持株会社や取引のある金融機関、運送業者、料理飲食店などが含まれる。
なお、取引基準2に規定する「他の酒類業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある」かどうかを判断するために同条の質問検査権を行使する場合は、その判断のために必要な限度において行うものとする。
8 取引基準10(公正取引委員会との連携)について
- (1) 法第94条第3項の規定により、公正取引委員会から報告を受ける場合は、問題取引に係る事実認定の内容等について、公正取引委員会と十分な情報共有と協議を行った上で、適当な措置を講ずるものとする。
- (2) 法第94条第4項の規定により、公正取引委員会に報告をする場合は、問題取引に係る事実認定の内容等について、公正取引委員会と十分な情報共有と協議を行った上で、適当な措置を講ずることを求めるものとする。