直審(法)72(例規)
昭和41年9月5日

国税局長 殿

国税庁長官

  金融機関の貸付金および有価証券の既経過未収利息については、昭和26年3月10日付直法1−35「銀行等の借入金に対する既払未経過の利息及び再割引料並びに割増金附貯蓄の割増金等の法人税の取扱について」および昭和32年6月14日付直法1−96「信用農業協同組合連合会等の未収利息の計上について」通達により、これを益金に算入しないことができることとしていたのであるが、今回これらの通達を廃止し、今後は下記により既経過未収利息を益金に算入することとしたから、これにより取り扱われたい。

(用語の意義)

1 この通達において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによる。

(1) 金融機関 次に掲げる法人という。

イ 銀行(信託会社を含む。)および相互銀行(無尽会社を含む。)

ロ 信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫および労働金庫連合会

ハ 信用協同組合、信用協同組合連合会および商工組合中央金庫

ニ 信用農業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、信用水産加工業協同組合連合会および農林中央金庫

(2) 貸付金 次に掲げるものに該当しない貸付金をいう。

イ コールローン

ロ 金融機関貸付金(系統金融機関がその出資者である下部系統金融機関に対するものを除く。)

(3) 利息の未収金 利払期の到来した利息のうちまだ収入していないものをいう。

(4) 利息の未収収益 利払期は到来していないが、事業年度終了の時までの期間について発生している利息をいう。

(5) 未収利息 利息の未収金および利息の未収収益をいう。

(貸付金および有価証券にかかる利息の益金算入の原則)

2 金融機関の貸付金および有価証券にかかる未収利息のうち当該事業年度にかかるものの額は、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

(損害金の取扱い)

3 貸付けに関する契約により、貸付金の返済期限までに返済がされないためその返済期限から返済されるまでの期間に応じて損害金を徴収する場合においては、当該損害金の未収収益は計上しないことができる。ただし、分割返済を受けることとなっている貸付金にかかる損害金の未収収益で最終の返済期限までの期間にかかる部分については、当該貸付金についての約定利率により計算した利息の未収収益に相当する金額は益金の額に算入する。

(継続手形貸付金の返済期限)

4 手形貸付けによる貸付金で証書その他の方法による貸付けに関する契約において、手形期間よりも長い貸付期間を定めているものおよび特に期間の定めはないが手形の書換えにより貸付期間が継続することが明らかであると認められるもの(以下「継続手形貸付金」という。)は、その貸付期間が継続している間は、たとえ、その手形期間が経過しても、その手形期間の末日は返済期限とはならない。

(注) 当該手形期間経過後の未収利息の額のうち当該事業年度にかかる部分の金額は、当該事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。

(継続手形貸付金として取り扱わない手形貸付金)

5 金融機関が、従来貸付けに関する取引関係が全くなかった者または相当の期間貸付けに関する取引関係がなかった者に対して、手形貸付け(以下「新規手形貸付け」という。)をした場合において、その手形期間の満了に伴って手形の書換えが行なわれないときは、証書その他の方法による貸付けに関する契約において貸付期間の定めのあるものを除き、その新規手形貸付けによる貸付金は、4の適用については継続手形貸付金に該当しないものとして取り扱うものとする。

(注) 新規手形貸付けについて初回の書換えが行われなかった場合には、当事者間の契約において貸付期間が継続することが明らかであるものを除いては、初回に限って継続手形貸付金とみない趣旨である。このような手形貸付金であっても、一度書換えが行われた後その手形期間が経過した場合には、継続手形貸付金に該当するかどうかをあらためて判断することになるのであるから留意する。

(相当期間未収が継続した場合の貸付金の未収利息の取扱い)

6 金融機関が当該事業年度に利払期の到来する貸付金について、2および3により未収利息(3のただし書による未収収益を含む。)を計上する場合において、次に掲げる要件のすべてに該当するときは、当該貸付金にかかる未収利息の額のうち当該事業年度にかかるものは、2および3にかかわらず、当該事業年度の益金の額に算入しないことができるものとする。

(1) 当該貸付金について当該事業年度終了の日以前6月(利息の計算期間が6月より長い場合には、当該計算期間の月数とする。)に当たる日の直前に到来した利払期以後当該事業年度終了の日までに到来する利払期にかかる利息の全額が当該事業年度終了の時において未収となっていること。

(2) 当該直前に到来した利払期前の利払期にかかる利息で当該事業年度の直前事業年度終了の日において未収となっていたものについて、当該事業年度終了の時までの間、その収入が全くないことまたはその収入した金額がきわめて少額であること(その収入したことにより将来当該未収利息の残額の全部または相当部分の回収が可能であると認められる事情がない場合に限る。)

(注) 貸付金で利息を前取りするものの利払期は次に掲げる日をいう。

イ 手形貸付けによるものは、各手形期間の末日。ただし、継続手形貸付金について一つの手形期間の満了に伴って手形の書換えが行われなかった場合には、当該手形期間の末日以後当該期間ごとに区分した各期間の末日

ロ 証書貸付けによるものは、契約に定められている利息の各計算期間の末日

(相当期間未収が継続した場合の利息前取りの貸付金の未収利息の特例)

7 継続手形貸付金および証書貸付けによる貸付金で、利息を前取りするものの未収利息を計上する場合において、当該事業年度終了の日以前6月(利息の計算期間が6月より長い場合には、当該計算の月数とする。)に当たる日の直前に到来した利息の計算期間の開始の日から当該事業年度終了の時までの間に、当該貸付金にかかる利息についてその収入が全くなかったときは、当該貸付金の当該事業年度にかかる未収利息のうち利息の未収収益については、6にかかわらず、これを益金の額に算入しないことができるものとする。

(貸付金の債務者について会社更生法の規定による更生手続の開始の決定等があった場合の利息の取扱い)

8 金融機関の貸付金の債務者について、会社更生法の規定による次の各号に掲げる事実が発生した場合には、当該各号に掲げる当該貸付金の未収利息については、2および3にかかわらず、これを益金の額に算入しないことができるものとする。

(1) 会社更生法の規定による更生手続の開始の決定があった場合 当該貸付金にかかる未収利息で当該更生手続の開始の決定があった日の属する事業年度開始の日以後更生計画の認可の決定の日の属する事業年度前に終了する事業年度終了の日までの間のもの

(2) 会社更生法の規定による更生計画の認可の決定があった場合 当該貸付金にかかる未収利息で当該更生計画の認可の決定により相当期間(おおむね2年以上とする。)たな上げすることとしたもの

(注) たな上げした未収利息であってもすでに益金の額に算入したものについては、11および他の取扱いにおいて損金の額に算入する場合を除いては、損金の額に算入することはできないのであるから留意する。

9 削除

(支払を停止されている有価証券利息の取扱い)

10 金融機関が社債その他の有価証券の未収利息を計上する場合において、当該有価証券の発行法人が会社更生法その他法令の規定による保全処分により有価証券の利息の支払を停止されているときは、その停止されている利息にかかる未収利息については、2にかかわらず、これを益金の額に算入しないことができるものとする。

(注) すでに益金の額に算入した有価証券利息については8の(注)に準ずる。

(焦げ付き未収利息の貸倒れの特例)

11 金融機関が貸付金または有価証券についてその未収利息を資産に計上している場合において、貸付金および有価証券の区分に応じ次に掲げる要件に該当するときは、その計上した事業年度終了の日(当該貸付金または有価証券にかかる未収利息を2以上の事業年度において計上しているときは、これらの事業年度のうち最後の事業年度終了の日。以下11において同じ。)から2年を経過した日の前日を含む事業年度において、その資産に計上している未収利息の額を貸倒れとして処理することができる。

(1) 貸付金 その計上した事業年度終了の日から2年を経過した日の前日を含む事業年度終了の日までの期間において、当該貸付金にかかる未収利息(その資産に計上している未収利息以外の利息の未収金を含む。以下(2)において同じ。)につき、支払の督促をしたにもかかわらず、その収入が全くないこと。

(2) 有価証券 (1)に規定する期間において当該有価証券にかかる未収利息につき、その収入が全くないこと。

(貸付金および有価証券の未収利息計上の経過的取扱い……(1)通達の適用時期)

12 2から11までの取扱いは、金融機関の昭和42年1月1日以後終了する事業年度分の法人税から適用し、同日前に終了する事業年度分の法人税については、なお、この通達による廃止の直前において施行されていた昭和26年3月10日付直法1−35「銀行等の借入金に対する既払未経過の利息及び再割引料並びに割増金附貯蓄の割増金等の法人税の取扱について」通達および昭和32年6月14日付直法1−96「信用農業協同組合連合会等の未収利息の計上について」通達を適用することができるものとする。

(貸付金および有価証券の未収利息計上の経過的取扱い……(2)経過措置)

13 昭和41年4月1日に現に存する金融機関の未収利息のうち貸付金および有価証券にかかるものについては、次に掲げる金融機関の区分に応じ、次に掲げる事業年度については、それぞれに掲げる算式により計算した金額をくだらない金額を当該貸付金および有価証券にかかる未収利息として当該事業年度の益金の額に算入したときは、2および3にかかわらず、これを認めるものとする。

(1) 事業年度の期間が6月の金融機関(長期信用銀行法に規定する長期信用銀行(以下「長期信用銀行」という。)を除く。)の昭和41年10月1日から昭和44年9月30日までの間に終了する事業年度

[算式]

昭和41年10月1日から昭和44年9月30日までの間に終了する各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額×昭和41年10月1日から当該事業年度終了の日までの期間の月数÷36

(注) 算式の被乗数の各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額には、昭和41年10月1日前に発生した未収利息の額およびこの通達により資産に計上することを要しない未収利息の額は含めないことができる。

(2) 長期信用銀行の昭和41年10月1日から昭和46年9月30日までの間に終了する事業年度

[算式]

昭和41年10月1日から昭和44年9月30日までの間に終了する各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額×昭和41年10月1日から当該事業年度終了の日までの期間の月数÷60

(注) (1)の(注)に準ずる。

(3) 事業年度の期間が1年である金融機関((4)および(5)に該当するものを除く。)の昭和41年4月1日から昭和44年3月31日までの間に終了する事業年度

[算式]

昭和41年4月1日から昭和44年3月31日までの間に終了する各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額×昭和41年4月1日から当該事業年度終了の日までの期間の月数÷36

(注) (1)の(注)に準ずる。この場合において、同(注)の「昭和41年10月1日」とあるのは「昭和41年4月1日」と読み替えるものとする。

(4) 1の(1)のニに掲げる法人((5)に該当するものを除く。)の昭和41年4月1日から昭和46年3月31日までの間に終了する事業年度

[算式]

昭和41年4月1日から昭和44年3月31日までの間に終了する各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額×昭和41年4月1日から当該事業年度終了の日までの期間の月数÷60

(注) (3)の注に準ずる。

(5) 1の(1)のニに掲げる法人で昭和41年4月1日から同年12月31日までの間に事業年度が終了するものの当該事業年度の翌事業年度開始の日から5年以内に終了する事業年度

[算式]

昭和41年4月1日から同年12月31日までの間に終了した事業年度の翌事業年度開始の日から5年以内に終了する各事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額×昭和41年4月1日から同年12月31日までの間に終了した事業年度の翌事業年度開始の日から当該事業年度終了の日までの期間の月数÷60

(注) (1)の(注)に準ずる。この場合において、同(注)の「昭和41年10月1日」とあるのは「昭和41年4月1日から同年12月31日までの間に終了した事業年度の翌事業年度開始の日」と読み替えるものとする。

(貸付金および有価証券の未収利息計上の経過的取扱い……(3)13により計算した金額をこえて計上した場合の取扱い)

14 金融機関が13により貸付金および有価証券の未収利息を当該各号に掲げる算式により計算した金額をこえて益金の額に算入した事業年度後の各事業年度においては、13にかかわらず、13により計算した金額にそのこえる部分の金額に相当する金額を加算した金額(当該加算した金額が当該事業年度終了の日における未収利息の額をこえるときは、当該未収利息の額)をくだらない金額を当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

(貸付金および有価証券の未収利息計上の経過的取扱い……(4)13の特例の不適用)

15 13の(1)から(5)までに掲げる各事業年度において、益金の額に算入することとなった貸付金および有価証券にかかる未収利息の額が、当該事業年度終了の日における未収利息の額に達したときは、当該事業年度後の事業年度については、13および14の適用はないものとする。

(貸付金および有価証券の未収利息計上の経過的取扱い……(5)計上未収利息の翌期損金算入)

16 13または14の適用された事業年度(これらの事業年度のうち最後の事業年度を除く。)において、13または14により益金の額に算入した未収利息の額は、その翌事業年度の損金の額に算入するものとする。

(注) 13または14の適用された事業年度の最後の事業年度においては、当該事業年度終了の日における貸付金および有価証券の未収利息の額を益金の額に算入しているので、その翌事業年度において損金の額に算入するかどうかは、法人の経理に従って処理することとなるから、この取扱いの適用から除外しているのである。