※ 令和5年6月20日付課法2−8ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)(以下「令和5年6月改正通達」といいます。)の発遣により、本通達は、令和5年6月20日をもって廃止されています。
 なお、本通達の廃止に伴う、経過的取扱いは、令和5年6月改正通達の別紙の第9(経過的取扱い関係)(PDF/99KB)によることとされています。

課法2−5
課審6−5
査調5−12
平成28年6月16日

各国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

標題のことについて、下記のとおり定めたから、これによられたい。
 なお、この通達による取扱いについては、個々の法人の実情に応じ、懇切かつ具体的に指導するよう万全を期することとされたい。

(用語の意義)

1 この通達において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。

  • (1) 災害 平成28年熊本地震をいう。
  • (2) 被災資産 次に掲げる資産で災害により被害を受けたものをいう。
    • イ 法人(連結法人を含む。以下同じ。)の有する棚卸資産及び固定資産(契約により賃借人が修繕等を行うこととされているものを除く。)
    • ロ 法人が賃借をしている資産又は販売等をした資産で、契約により当該法人が修繕等を行うこととされているもの
  • (3) 事業年度等 次に掲げる期間をいう。
    • イ 法人税法第13条((事業年度の意義))及び第14条((みなし事業年度))に規定する事業年度
    • ロ 同法第15条の2((連結事業年度の意義))に規定する連結事業年度
  • (4) 確定申告書等 次に掲げる申告書をいう。
    • イ 法人税法第2条第31号((定義))に規定する確定申告書
    • ロ 同条第32号に規定する連結確定申告書

(災害損失特別勘定への繰入額の損金算入)

2 法人が、災害のあった日の属する事業年度等(以下「被災事業年度等」という。)において、被災資産の修繕等のために要する費用の見積額として次の(1)又は(2)に掲げる金額のうちいずれか多い金額の合計額(当該被災資産に係る保険金、損害賠償金、補助金その他これらに類するもの(以下「保険金等」という。)によりほてんされる金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)以下の金額を災害損失特別勘定として経理したときは、その災害損失特別勘定として経理した金額は、当該被災事業年度等の所得の金額(連結所得の金額を含む。以下同じ。)の計算上、損金の額に算入する。
 この場合、当該被災事業年度等の確定申告書等に災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書(別紙様式1)を添付するものとする。

  • (1) 被災資産(法人税法第33条第2項((資産の評価損の損金算入))の規定の適用を受けたものを除く。)の被災事業年度等終了の日における価額がその帳簿価額に満たない場合のその差額に相当する金額
  • (2) 被災資産について、災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる次に掲げる費用(以下「修繕費用等」という。)の見積額(被災事業年度等終了の日の翌日以後に支出すると見込まれるものに限る。)
    • イ 被災資産の取壊し又は除去のために要する費用
    • ロ 被災資産の原状回復のために要する費用(被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出する費用を含む。)
    • ハ 土砂その他の障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用
    • ニ 被災資産の損壊又は価値の減少を防止するために要する費用
  • (注)

    • 1 法令の規定、地方公共団体の定めた復興計画等により、一定期間修繕等の工事に着手できないこととされている場合には、上記(2)の「災害のあった日から1年を経過する日」は、「修繕等の工事に着手できることとなる日から1年を経過する日」と読み替えることができる。
    • 2 上記(2)に掲げる金額により災害損失特別勘定に繰り入れる場合には、次のことに留意する。
      • (1) 法人税基本通達7−7−2((有姿除却))又は連結納税基本通達6−7−2((有姿除却))の適用を受けた資産については、上記イ及びハに掲げる費用に限り災害損失特別勘定の繰入れの対象とすることができる。
      • (2) 法人税法第33条第2項の規定により評価損を計上した資産については、上記ハ及びニに掲げる費用に限り災害損失特別勘定の繰入れの対象とすることができる。
    • 3 法人税法第72条第1項((仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等))に規定する期間(その期間のうちに災害のあった日を含む場合に限る。以下「被災中間期間」という。)について同項の規定を適用した同法第2条第30号に規定する中間申告書を提出する場合には、その被災中間期間において災害損失特別勘定に繰り入れることができることに留意する。
       同法第81条の20第1項((仮決算をした場合の連結中間申告書の記載事項等))に規定する期間(その期間のうちに災害のあった日を含む場合に限る。被災中間期間と併せて、以下「被災中間期間等」という。)について同項の規定を適用した同法第2条第31号の2に規定する連結中間申告書を提出する場合にも、同様とする。
       この場合、当該被災中間期間等の中間申告書又は連結中間申告書に災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書(別紙様式1)を添付するものとする。
    • 4 上記(注)3により被災中間期間等において災害損失特別勘定に繰り入れた金額(以下「中間繰入額」という。)がある場合における被災事業年度等の災害損失特別勘定の繰入れに当たり、被災事業年度等の終了の日の翌日から災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる修繕費用等の見積額が中間繰入額から被災下半期(被災中間期間等の終了の日の翌日から被災事業年度等の終了の日までの期間をいう。以下同じ。)に修繕費用等として損金の額に算入した金額を控除した金額を超えるときには、その超える部分に相当する金額を繰入れの対象とすることができる。

(被災資産の修繕費用等の見積りの方法)

3 2((災害損失特別勘定への繰入額の損金算入))の(2)の修繕費用等の見積額は、その修繕等を行うことが確実な被災資産につき、例えば次の金額によるなど合理的に見積もるものとする。

  • (1) 建設業者、製造業者等による当該被災資産に係る修繕費用等の見積額
  • (2) 相当部分が損壊等をした当該被災資産につき、次のイからロを控除した金額
    • イ 再取得価額又は国土交通省建築物着工統計の建築価額等を基礎として、その取得の時から被災事業年度等終了の日まで償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額
    • ロ 被災事業年度等終了の日における価額
    • (注) 被災中間期間等において災害損失特別勘定に繰り入れる場合には、上記の「被災事業年度等終了の日」は「被災中間期間等終了の日」と読み替えることに留意する。

(災害損失特別勘定の益金算入)

4 次に掲げる事業年度等の区分に応じ、災害損失特別勘定の金額のうちそれぞれ次に掲げる金額を当該事業年度等の所得の金額の計算上、益金の額に算入するものとする。この場合、当該事業年度等の確定申告書等には、災害損失特別勘定の益金算入に関する明細書(別紙様式2)を添付するものとする。

  • (1) 災害のあった日から1年を経過する日の属する事業年度等(以下「1年経過事業年度等」という。) 当該1年経過事業年度等終了の日における災害損失特別勘定の金額
  • (2) 1年経過事業年度等前の各事業年度等
    • イ 当該各事業年度等が、被災中間期間等において災害損失特別勘定に繰り入れた場合の被災事業年度等であるとき 被災下半期において被災資産に係る修繕費用等として損金の額に算入した金額の合計額(保険金等によりほてんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)
    • ロ 当該各事業年度等が、半年決算であるなどにより被災事業年度等と1年経過事業年度等との間に事業年度等が存する場合における当該事業年度等であるとき 当該事業年度等において被災資産に係る修繕費用等として損金の額に算入した金額の合計額(保険金等によりほてんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額)
  • (注) 2((災害損失特別勘定への繰入額の損金算入))の(注)1の適用を受けている場合であっても、1年経過事業年度等は「修繕等の工事に着手できることとなる日から1年を経過する日」の属する事業年度等とはならないことに留意する。

(修繕等が遅れた場合の災害損失特別勘定の益金算入の特例)

5 被災資産に係る修繕等がやむを得ない事情により1年経過事業年度等終了の日までに完了しなかったため、同日において災害損失特別勘定の残額(次の(1)に掲げる金額から(2)に掲げる金額を控除した金額をいう。以下同じ。)を有している場合において、当該1年経過事業年度等終了の日までに災害損失特別勘定の益金算入時期の延長確認申請書(別紙様式3)を所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長)に提出し、その確認を受けたときは、修繕等が完了すると見込まれる日の属する事業年度等(以下「修繕完了事業年度等」という。)をもって4(1) ((災害損失特別勘定の益金算入))の1年経過事業年度等とすることができる。

  • (1) 被災事業年度等において災害損失特別勘定に繰り入れた金額
  • (2) 被災事業年度等終了の日の翌日から1年経過事業年度等終了の日までにおいて被災資産に係る修繕費用等として損金の額に算入する金額の合計額(保険金等によりほてんされる金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、以下「修繕済額」という。)
  • (注) 上記の取扱いの適用を受ける場合には、その取扱いの適用を受ける前の1年経過事業年度等までの各事業年度等において、修繕済額と災害損失特別勘定の残額から修繕費用等の見込額(1年経過事業年度等終了の日の翌日から修繕完了事業年度等終了の日までに支出することが見込まれる修繕費用等の金額の合計額(保険金等によりほてんされる金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、災害損失特別勘定の残額を限度とする。)をいう。)を控除した金額との合計額に相当する災害損失特別勘定の金額を益金の額に算入することとなる。

(災害損失特別勘定を設定した場合の災害損失の範囲)

6 法人税法第58条第1項((青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し))の規定の適用に当たり、災害のあった日の属する事業年度(以下「被災事業年度」という。)において災害損失特別勘定に繰り入れた金額は、当該被災事業年度の災害損失の額(法人税法施行令第116条第1項((災害による繰越損失金の範囲))に規定する損失の額をいう。以下同じ。)に含まれることに留意する。

(注) 被災事業年度が法人税法第2条第37号に規定する青色申告書を提出する事業年度(以下「青色事業年度」という。)である場合には、この取扱いはないことに留意する。

(修繕費用等の支出がある場合の災害損失の額の計算)

7 法人税法第58条第1項の規定の適用に当たり、災害損失特別勘定に繰り入れた被災事業年度後の事業年度(当該事業年度が青色事業年度である場合を除く。)開始の日において災害損失特別勘定の金額がある場合には、当該事業年度において修繕費用等として損金の額に算入した金額(保険金等によりほてんされた金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、災害損失の額に該当する部分の金額に限る。)の合計額から当該事業年度開始の日における災害損失特別勘定の金額を控除した残額が当該事業年度における災害損失の額となることに留意する。

(繰延資産の基因となった資産について損壊等の被害があった場合)

8 2から7まで((災害損失特別勘定への繰入額の損金算入等))の取扱いは、災害により法人税法施行令第114条((固定資産に準ずる繰延資産))に規定する繰延資産につき、当該繰延資産に係る他の者の有する固定資産について損壊等の被害があった場合について準用する。

(損壊した賃借資産等に係る補修費)

9 法人が賃借資産(賃借をしている土地、建物、機械装置等をいう。)につき修繕等の補修義務がない場合においても、当該賃借資産が災害により被害を受けたため、当該法人が、当該賃借資産の原状回復のための補修を行い、その補修のために要した費用を修繕費として経理したときは、これを認める。
 法人が、修繕等の補修義務がない販売をした又は賃貸をしている資産につき補修のための費用を支出した場合においても、同様とする。

(注)

  • 1 この取扱いにより修繕費として取り扱う費用は、災害損失特別勘定の繰入れの対象とはならないことに留意する。
  • 2 当該法人が、その修繕費として経理した金額に相当する金額につき賃貸人等から支払を受けた場合には、その支払を受けた日の属する事業年度等の益金の額に算入する。
  • 3 法人が賃借している法人税法第64条の2第1項((リース取引に係る所得の金額の計算))に規定するリース資産が災害により被害を受けたため、契約に基づき支払うこととなる規定損害金(免除される金額及び被災事業年度等において支払った金額を除く。)については、被災事業年度等において、未払金として計上することができることに留意する。

(被災者用仮設住宅の設置費用)

10 法人が、災害により被災した役員又は従業員(以下「従業員等」という。)の住居として一時的に使用する建物(以下「仮設住宅」という。)の用に供する資材(以下「仮設住宅用資材」という。)の取得又は賃借をして仮設住宅を設置した場合において、当該仮設住宅の組立て、設置のために要した金額につきその居住の用に供した日の属する事業年度等において費用として経理したときには、これを認める。
 法人が取得をした仮設住宅用資材について、これを反復して使用する場合には、通常の例により償却するものとするが、仮設住宅のためにのみ使用することとしている場合には、その見積使用期間を基礎として償却することを認める。この場合において、当該見積使用期間を基礎として償却を行うときは、その取得価額から当該見積使用期間に基づき算定した処分見込価額を控除した金額を基礎として償却額を計算するものとする。

(注) 法人が、仮設住宅の一部を自己の従業員等以外の被災者の居住の用に供した場合においても、同様とする。



(参考)建築物着工統計「構造別、用途別−建築物の数、床面積の合計、工事費予定額」(国土交通省ホームページ)(Excel/5,445KB)

○ 平成28年熊本地震関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例(PDF/335KB)

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