課法2-24

平成15年12月19日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

 損害保険会社の支払備金及び責任準備金の損金算入等の取扱いについて、別添のとおり定めたから、これにより取り扱われたい。
 なお、昭和28年7月14日付直法1-81「法人税法施行規則の一部を改正する政令の施行に伴う法人税の取扱について」(法令解釈通達)及び昭和44年7月16日付直審 (法)36「長期の損害保険業務を営む損害保険会社の法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)は、廃止する。

別添

目次

I 支払備金
II 普通責任準備金
III 自賠責保険の義務積立金
IV 払戻積立金
V 標準責任準備金
VI 契約者配当準備金
VII その他

I 支払備金

(支払備金の損金算入)

1 損害保険会社が各事業年度において保険料収入が計上済となっている保険契約に関して支払備金を積み立てた場合には、当該積立額は、3及び5に定める金額を限度として、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(注) 収入保険料が計上されていない保険契約に係る支払備金を積み立てる場合には、当該保険契約に係る収入保険料を益金の額に算入する。

(支払備金の意義)

2 1の支払備金とは、既に生じた保険事故により保険契約に基づいて保険金の支払義務が発生したものがある場合において、その支払に充てるために積み立てる金額をいい、このうち既発生既報告の保険事故に係るものを普通支払備金、既発生未報告の保険事故に係るものをIBNR備金という。

(普通支払備金の積立限度額)

3 2の普通支払備金の積立額は、既発生既報告の保険事故により保険契約に基づいて保険金の支払義務が発生した場合(当該支払義務に関し係争中の場合を含む。)において、その支払のために必要と認められる金額(再保険による他の保険者からの受取保険金に相当する金額があるときは、当該金額を控除する。 )に相当する金額を限度とする。
 ただし、次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げることに留意する。

(1) 保険金の支払により契約者等から求償権又は残存物を取得した場合には、当該求償権の行使(裁判の判決又は当事者間の合意がないものを除く。)又は残存物の売却によって回収が見込まれる金額を当該事業年度の支払備金の金額から控除した後の金額とする。

(2) (1)にかかわらず、船舶の衝突事故において被保険者が相手方に対して負うことになる損害賠償債務に係る保険金の支払備金については、当該被保険者が相手方に求償し得る損害賠償債権の見積額を当該損害賠償債務から控除した後の金額とする。ただし、求償し得る損害賠償債権の見積額が損害賠償債務の金額を上回る場合には、控除する金額は損害賠償債務の金額を限度とする。

(外国受再保険の普通支払備金)

4 普通支払備金のうち外国受再保険に係るものについては、出再保険者等からの支払備金の報告に基づき、その支払に必要と認められる金額を限度とする。
 ただし、会計制度の相違その他の事情により出再保険者等から報告が得られない契約に係る支払備金については、最近の実績値等を基礎とした合理的な推計方法により支払備金を算定することにつき、あらかじめ所轄国税局長の確認を得た場合には、当該推計方法によって算定した金額を損金の額に算入することができる。
 なお、採用した推計方法については、継続的に適用するものとする。

(注) 出再保険者等からの報告により支払備金を計上する場合には、適時報告を求めることに留意する。

(IBNR備金の積立限度額)

5 2のIBNR備金の積立額は、地震保険及び自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)を除くすべての保険契約について見込まれる既発生未報告の保険事故に係る支払備金として積み立てた金額のうち、保険種目別に次の算式(この算式における支払保険金、普通支払備金は、再保険による他の保険者からの受取保険金に相当する金額があるときは、当該金額を控除した金額とする。)により計算した金額の直近3事業年度の平均額を限度とする。

(前事業年度以前発生事故に係る当該事業エンドの支払保険金+前事業年度以前発生事故に係る当該事業年度末の普通支払備金-前事業年度末の普通支払備金)/発生保険金の伸び率発生保険金の伸び率=(当該事業年度の支払保険金+当該事業年度末の普通支払備金-前事業年度末の普通支払備金)/前事業年度の支払保険金+前事業年度末の普通支払備金-前々事業年度末の普通支払備金)(当該事業年度の支払保険金+当該事業年度末の普通支払備金-前事業年度末の普通支払備金)×1/12  

(支払備金の益金算入)

6 1により損金の額に算入した支払備金の金額は、損金の額に算入した事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

II 普通責任準備金

(普通責任準備金の損金算入)

7 損害保険会社が各事業年度において普通責任準備金を積み立てた場合には、当該積立額のうち、保険種目別に8に定めるものについて、それぞれ9、10及び11に定める金額を限度として、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(普通責任準備金の意義)

8 7の普通責任準備金とは、次の(1)の金額及び(2)の金額の合計額をいう。ただし、船舶保険、積荷保険、運送保険、船客傷害賠償責任保険及び原子力保険については、(1)の金額及び(2)の金額の合計額と(3)の金額のうちいずれか多い金額とする。

(1) 保険料積立金
 保険契約に基づく翌事業年度以降の保険責任に対応する部分の金額(再保険に係る他の保険者に対する支払保険料に対応する金額を除く。)に相当する金額

(2) 未経過保険料
 収入保険料(再保険に係る他の保険者に対する支払保険料を除く。)のうち、その未経過分に相当する金額

(3) 初年度収支残
 当該事業年度における収入保険料(再保険に係る他の保険者に対する支払保険料を除く。)から、当該事業年度における収入保険料に係る保険契約に基づき支払う保険金、返戻金及びその他の給付金の金額(再保険に係る他の保険者から受け取る保険金、返戻金その他の給付金の金額を除く。)、当該保険契約のために積み立てた支払備金の金額(損金の額に算入されなかった部分の金額を除く。)並びに当該事業年度の事業費の額を控除した金額

(注) 収入保険料及び返戻金は、16の払戻積立金に充てる部分の金額を含まないものとする。

(保険料積立金の計算方法)

9 8の(1)の保険料積立金の金額については、原則として保険料及び責任準備金の算出方法書(以下「算出方法書」という。)に定められている方法により保険料の計算基礎を基として計算した金額とする。

(未経過保険料の計算方法)

10 8の(2)の未経過保険料の金額については、原則として算出方法書に定められている方法により計算した金額とする。
 また、算出方法書に定められている方法により計算した金額であっても、次の金額が含まれているときは、当該金額については未経過保険料と認めないものとする。

(1) 算出方法書に具体的な計算方法による金額以外に法人が必要と認める額の積増しをすることができるような規定がある場合においては、その積増金額

(2) 算出方法書に具体的な計算方法を定めず、法人が適当と認める方法によって未経過保険料を計算できるような規定がある場合においては、その法人が継続して適用している方法によって計算した金額を超える金額

(初年度収支残の計算方法)

11 8の(3)の初年度収支残の金額については、原則として算出方法書に定められている方法により計算するものとする。なお、この方法に基づく計算において控除する「当該保険契約のために積み立てた支払備金」とは2に定める普通支払備金及びIBNR備金をいうものとし、そのうちIBNR備金の金額については、1により損金の額に算入した金額の12分の11に相当する金額とする。

(普通責任準備金の益金算入)

12 7により損金の額に算入した普通責任準備金の金額は、損金の額に算入した事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

III 自賠責保険の義務積立金

(自賠責保険の義務積立金の損金算入)

13 損害保険会社における各事業年度の自賠責保険に係る責任準備金のうち、自動車損害賠償保障法第28条の3第1項に規定する準備金の積立て等に関する命令第1条第1号に規定する義務積立金を積み立てた場合には、当該積立額のうち、原則として算出方法書に定められている方法により計算した金額を限度として、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(注) 損害保険会社が、当該事業年度において、上記の義務積立金のほかに、自動車損害賠償保障法第28条の3第1項に規定する準備金の積立て等に関する命令第1条第2号、第3号及び第4号に規定する調整準備金、付加率積立金及び運用益積立金を積み立てた場合であっても、これらの準備金は当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないことに留意する。

(自賠責保険の義務積立金の益金算入)

14 13により損金の額に算入した自賠責保険の義務積立金の金額は、損金の額に算入した事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

IV 払戻積立金

(払戻積立金の損金算入)

15 損害保険会社が各事業年度において払戻積立金(分割払等積立金を含む。以下同じ。)を積み立てた場合には、当該積立額のうち、原則として算出方法書に定められている方法により計算した金額を限度として、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(払戻積立金の意義)

16 15の払戻積立金とは、保険料又は保険料として収受する金銭を運用することによって得られる収益の全部又は一部の金額の払戻しを約した保険契約に基づいて行う当該払戻しに充てるための積立金(再保険に係る他の保険者に対する支払保険料に対応する金額を除く。)をいう。

(払戻積立金の益金算入)

17 15により損金の額に算入した払戻積立金の金額は、損金の額に算入した事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

V 標準責任準備金

(標準責任準備金)

18 保険業法第 116条第2項の適用を受ける保険契約に係る保険料積立金及び払戻積立金にあっては、7及び15の規定にかかわらず、標準責任準備金の積立方式及び計算基礎率を定める告示(平成8年2月29日付大蔵省告示第48号)により定められている計算基礎を基として計算した金額(当該計算した金額が契約者価額を下回る場合には、当該契約者価額)をそれぞれ保険料積立金及び払戻積立金の損金算入限度額とすることができる。

VI 契約者配当準備金

(契約者配当準備金の損金算入)

19 損害保険会社が各事業年度において契約者配当準備金(分割払配当等準備金を含む。以下同じ。)を積み立てた場合には、原則として算出方法書に定められている方法により計算した金額のうち、当該事業年度において新たに積み立てるべき金額を限度として、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(契約者配当準備金の意義)

20 19の契約者配当準備金とは、保険契約に基づき各契約者に対して支払う契約者配当に充てるための準備金をいう。

(注)

1 契約者配当準備金は、各契約者に割当済のものをいい、いわゆる未割当の金額は含まれないことに留意する。

2 契約者配当準備金の計算に用いる契約者配当利回りは、損害保険会社が金融庁長官に提出する決算状況表に記載された契約者(社員)配当利回りとする。

(契約者配当準備金の益金算入)

21 当該事業年度の前事業年度末までに損金の額に算入した契約者配当準備金のうち、算出方法書に定められている方法により当該事業年度において契約者配当準備金の取崩しを行った金額については、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

(注) 当該事業年度において支払うこととなった契約者配当の額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されることに留意する。

VII その他

(損害保険契約に係る負債の利子に準ずるもの)

22 法人税法施行令第19条第3項第2号に規定する「前号に掲げる金額に準ずる金額」は、次の(1)、(2)及び(3)に掲げる金額の合計額による。

(1) 当該事業年度において、保険料積立金として損金の額に算入した金額のうち利子に相当する部分の金額(保険料積立金に係る積立利率の異なる保険ごとに、当該事業年度開始の日及び当該事業年度終了の日における保険料積立金の合計額に、当該積立利率/(2+当該積立利率)の算式により計算した割合を乗じて計算した金額の合計額に相当する金額をいう。)

(2) 当該事業年度において払戻積立金(保険料として 収受する金銭を運用することによって得られる収益の全部又は一部の金銭の払戻しを約していない保険契約に係るものを除く。以下この項において同じ。)として損金の額に算入した金額及び当該事業年度において支払った満期返戻金(分割払等による分割金等を含む。以下同じ。)の合計額から当該事業年度において益金の額に算入した払戻積立金及び当該事業年度において収入した保険料に含まれる積立保険料(分割払等の原資としての収入を含む。)の合計額を控除した金額

(3) 当該事業年度において契約者配当準備金として損金の額に算入した金額

(対象外支払利子等の額に含まれる保険負債利子の額)

22の2 措置法令第39条の13の2第13項第2号に規定する「前号に掲げる金額に準ずる金額」は、責任準備金に係る積立利率の異なる保険ごとに、22(1)及び(2)により計算することに留意する。(令3年課法2-21により追加)

(経過的取扱い)

23 この通達の取扱いは、平成16年3月31日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。

(令和3年課法2-21改正に伴う経過的取扱い)

改正後の取扱いについては、令和3年3月31日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。