第3節 相続時精算課税

(推定相続人の判定)

21の9-1 法第21条の9第1項に規定する「贈与をした者の推定相続人」とは、当該贈与をした日現在においてその贈与をした者の最先順位の相続権(代襲相続権を含む。)を有する者をいい、推定相続人であるかどうかの判定は、当該贈与の日において行うのであるから留意する。(平15課資2-1追加)

(「相続時精算課税選択届出書」の提出先等)

21の9-2 贈与者が贈与をした年の中途において死亡した場合又は贈与により財産を取得した者が相続時精算課税選択届出書の提出期限前に当該相続時精算課税選択届出書を提出しないで死亡した場合において、当該贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けるために提出する相続時精算課税選択届出書の提出先及び提出期限は、次に掲げる場合に応じ、それぞれに掲げるところによることに留意する。(平15課資2-1追加、平16課資2-6、平30課資2−9、令3課資2−14改正)

区分 提出先 提出期限
(1) 贈与者が贈与をした年の中途で死亡した場合
(注) 相続時精算課税選択届出書に係る受贈財産については、贈与税の申告を要しないことに留意する。
1 受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限(相続税法第28条第1項又は第2項に規定する期限)以前に当該贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限(同法第27条第1項又は第2項に規定する期限)が到来するとき 当該贈与者に係る相続税の納税地を所轄する税務署長 当該贈与者に係る相続税の申告書の提出期限
2 贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限
(相続税法第27条第1項又は第2項に規定する期限)前に受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限(同法第28条第1項又は第2項に規定する期限)が到来するとき
当該受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限
(2) 贈与により財産を取得した者が相続時精算課税選択届出書の提出期限前に当該届出書を提出しないで死亡した場合(上記(1)に該当する場合を除く。) 当該受贈者に係る贈与税の納税地を所轄する税務署長 当該受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限

(相続時精算課税選択届出書の提出)

21の9-3 贈与により取得した財産について、相続時精算課税の適用を受けようとする者は、その年分の贈与税の申告書の提出を要しない場合であっても、法第21条の9第2項及び法施行令第5条第1項前段の規定に基づき相続時精算課税選択届出書をその提出期限までに提出する必要があることに留意する。なお、相続時精算課税選択届出書をその提出期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用を受けることはできないことに留意する。(平15課資2-1追加、令5課資2−21改正)

(注)

  1. 1 提出期限までに相続時精算課税選択届出書が提出されなかった場合におけるゆうじょ規定は設けられていない。
  2. 2 法第21条の9第2項及び法施行令第5条第1項前段の規定に基づき相続時精算課税選択届出書のみをその提出期限までに提出した場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることから、例えば、贈与により財産を取得した者が当該規定に基づいてその提出期限までに相続時精算課税選択届出書のみを提出していた場合において、当該贈与を受けた年分に係る贈与税についての期限後申告書を提出することとなった場合でも、引き続き相続時精算課税の適用を受けることができることに留意する。

(年の中途において贈与者の推定相続人になった場合)

21の9-4 年の中途において、その年の1月1日において18歳以上(注1)の者が同日において60歳以上の者の推定相続人になったこと(その者の養子になった場合など)から、法第21条の9第4項の規定により相続時精算課税が適用されない贈与があるときにおける当該贈与により取得した財産に係る贈与税額は、暦年課税により計算することとなり、法第21条の5(措置法第70条の2の4を含む。)の規定の適用があることに留意する。(平15課資2-1追加、平21課資2-11、平25課資2-10、平26課資2−12、課審7−17、徴管6−25、平27課資2-9、令2課資2-10、令4課資2-6、令5課資2−21改正)

(注)

  1. 1 令和4年3月31日以前に贈与により財産を取得する者については、20歳以上。
  2. 2 年の中途において贈与をした者の推定相続人となり、法第21条の9第3項の規定の適用を受ける場合においても、その年分の相続時精算課税に係る基礎控除の額は、110万円(同一年中において2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合には、特定贈与者ごとに21の11の2−2((特定贈与者が2人以上ある場合における相続時精算課税に係る基礎控除の額))の定めにより計算した金額)となることに留意する。

(令和2年1月1日前の贈与に係る相続時精算課税選択届出書の添付書類)

21の9-5 相続税法施行規則等の一部を改正する省令(平成31年財令第8号。以下21の9―5において「平成31年改正省令」という。)附則第2条((相続時精算課税選択届出書の添付書類に関する経過措置))及び相続税法施行規則の一部を改正する省令(平成27年財令第24号。以下21の9―5において「平成27年改正省令」という。)附則第2条第2項((申告書の添付書類に関する経過措置))の規定により、令和2年1月1日前の贈与に係る相続時精算課税選択届出書には、次に掲げる書類の添付が必要とされていることに留意する。この場合において、当該書類のうち住所又は居所を証する書類については、当該贈与をした者又は当該提出をする者に係る平成15年1月1日以後の住所又は居所を証する書類に代えることができることに留意する。(平16課資2-6追加、平26課資2-12、課審7-17、徴管6-25、平28課資2-13、課審7-9、令元課資2−10改正)

1 平成31年改正省令第1条の規定による改正前の法施行規則第11条第1項第2号に掲げる贈与をした者の氏名、生年月日及びその者が60歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類

2 平成27年改正省令による改正前の法施行規則第11条第1項第1号に掲げる相続時精算課税選択届出書の提出をする者が20歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類(当該提出をする者が平成27年1月1日において20歳以上である場合に限る。)

(注) 平成31年改正省令による改正前の法施行規則第11条第2項に掲げる住所又は居所を証する書類についても上記と同様であることに留意する。

第21条の11の2《相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除》関係

(相続時精算課税に係る基礎控除の額)

21の11の2−1 相続時精算課税に係る基礎控除の額は、各年分において、相続時精算課税適用者ごとに110万円であることに留意する。(令5課資2−21追加)

(注)

  1. 1 同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の相続時精算課税に係る基礎控除の額は、特定贈与者ごとに21の11の2−2の定めにより計算した金額となることに留意する。
  2. 2 上記の「110万円」は、措置法第70条の3の2第1項の規定の適用後の金額であることに留意する。

(特定贈与者が2人以上ある場合における相続時精算課税に係る基礎控除の額)

21の11の2−2 相続時精算課税適用者が同一年中において2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合における特定贈与者ごとの贈与税の課税価格から控除される相続時精算課税に係る基礎控除の額の計算を算式で示せば、次のとおりである。(令5課資2−21追加)
特定贈与者が2人以上ある場合における相続時精算課税に係る基礎控除の計算

(注)

  1. 1 上記の算式により計算した特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額に1円未満の端数がある場合には、特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額の合計額が110万円になるようにその端数を調整して差し支えない。
  2. 2 上記算式中の「特定贈与者」には、贈与をした年の中途において死亡した特定贈与者も含まれることに留意する。

(特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る贈与税の課税価格に異動があった場合)

21の11の2−3 相続時精算課税適用者が同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得している場合において、当該贈与に係るその年分の贈与税の申告書の提出期限の経過後に、当該年分の贈与税の課税価格に異動が生じたときにおける特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除の額は、当該異動後の贈与税の課税価格を基礎として計算した金額となることに留意する。(令5課資2−21追加)

第21条の12《相続時精算課税に係る贈与税の特別控除》関係

(特別控除を適用する場合の申告要件)

21の12-1 法第21条の12第1項の規定は、贈与税の期限内申告書の提出がない限り、適用がないのであるから留意する。(平15課資2-1追加)

(注) 贈与税の期限内申告書の提出がなかった場合におけるゆうじょ規定は設けられていない。

第21条の15《相続時精算課税に係る相続税額》関係

(相続税の課税価格への加算の対象となる財産)

21の15-1 法第21条の15第1項の規定による相続税の課税価格への加算の対象となる財産は、被相続人である特定贈与者からの贈与により取得した財産(相続時精算課税選択届出書の提出に係る財産の贈与を受けた年以後の年に贈与により取得した財産に限る(当該相続時精算課税選択届出書の提出に係る年の中途において特定贈与者の推定相続人となったときには、推定相続人となった時前に当該特定贈与者からの贈与により取得した財産を除く。)。)のうち、法第21条の3、第21条の4、措置法第70条の2第1項、第70条の2の2第1項、第70条の2の3第1項及び東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成23年法律第29号)第38条の2第1項の規定の適用により贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されないもの以外の贈与税の課税価格計算の基礎に算入される全てのものであり、贈与税が課されているかどうかを問わないことに留意する。(平15課資2-1追加、平19課資2−5、平21課資2-5、平21課資2-11、平22課資2-12、課審6-15、課評2-22、平25課資2-10、平27課資2−9、令5課資2−21改正)

(注) 法第21条の12第1項に規定する相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の金額に相当する金額及び所得税法等の一部を改正する法律(平成22年法律第6号)により廃止された措置法第70条の3の2第2項に規定する住宅資金特別控除額に相当する金額についても法第21条の15第1項の規定により相続税の課税価格に加算されることに留意する。
 ただし、令和6年1月1日以後に特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る同項の規定により相続税の課税価格に加算される金額は、当該財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除をした残額となることに留意する。

(相続時精算課税の適用を受ける財産の価額)

21の15-2 法第21条の15第1項に規定する「第21条の9第3項の規定の適用を受けるものの価額」は、相続開始時における当該財産の状態にかかわらず、当該財産に係る贈与の時における価額となり、法第21条の15第1項の規定により相続税の課税価格に加算される金額は、法第21条の9第3項の規定の適用を受けるものの価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除をした残額となることに留意する。(平15課資2-1追加、令5課資2−21改正)

(注)

  1. 1 特定贈与者が贈与をした年の中途で死亡した場合において、その年中に当該特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る法第21条の15第1項の規定により相続税の課税価格に加算される金額についても同様であることに留意する。
  2. 2 当該残額は、特定贈与者から贈与により財産を取得した年分ごとに計算することに留意する。
  3. 3 令和5年12月31日以前に特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る法第21条の15第1項の規定により相続税の課税価格に加算される金額については、当該財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除の額は控除しないことに留意する。

(「第21条の11の2の第1項の規定による控除」の意義)

21の15−2の2 法第21条の15第1項に規定する「第21条の11の2第1項の規定による控除」は、法第21条の11の2第1項の贈与に係る贈与税の申告書の提出又は更正若しくは決定(以下21の15−2の2において「贈与税の申告等」という。)がされている場合には、当該贈与税の申告等に係る相続時精算課税に係る基礎控除の額によることに留意する。
 なお、相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与税の申告等がない場合における相続時精算課税に係る基礎控除の額は、110万円(同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合には、特定贈与者ごとに21の11の2−2の定めにより計算した金額)となることに留意する。(令5課資2−21追加)

(「課せられた贈与税」の意義)

21の15-3 法第21条の15第3項に規定する「課せられた贈与税」には、相続時精算課税の適用を受ける贈与財産に対して課されるべき贈与税(法第37条第1項及び第2項の規定による更正又は決定をすることができなくなった贈与税を除く。)も含まれるものとして取り扱うものとする。この場合において、当該贈与税については、速やかに課税手続をとることに留意する。(平15課資2-1追加、令5課資2-12改正)

(贈与税相当額の控除の順序)

21の15-4 法第21条の15第3項の規定による贈与税の税額に相当する金額の控除は、20の2-4の(1)から(6)までに掲げる控除を順次行った後に相続税額の残額がある場合に当該残額(同項の注書きに該当する場合には零となる。)から控除するのであるから留意する。(平15課資2-1追加)

第21条の16《相続時精算課税に係る相続税額》関係

(法第21条の15の規定に関する取扱いの準用)

21の16-1 法第21条の16第3項の規定により相続税の課税価格に算入する金額については21の15−2、同項第2号に規定する「第21条の11の2第1項の規定による控除」については21の15−2の2、法第21条の16第4項に規定する「課せられた贈与税」については21の15-3、同項による贈与税の税額に相当する金額の控除の順序については21の15-4の取扱いに準ずるものとする。(平15課資2-1追加、令5課資2−21改正)

第21条の17《相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等》関係

(承継される納税に係る権利又は義務)

21の17-1 相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、特定贈与者を除く。以下21の18-1までにおいて同じ。)が特定贈与者の死亡前に死亡した場合には、第21条の17第4項の規定により、当該相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務(以下「相続時精算課税の適用に伴う権利義務」という。)は、当該相続人の相続人(以下21の17-1において「再承継相続人」という。)に承継されるが、再承継相続人が当該特定贈与者の死亡前に死亡した場合には、当該相続時精算課税の適用に伴う権利義務は当該再承継相続人の相続人には承継されず消滅することになるのであるから留意する。(平15課資2-1追加)

(承継の割合)

21の17-2 相続時精算課税適用者の相続人が2人以上あるときに各相続人が承継する相続時精算課税の適用に伴う権利義務の割合について、基本的な設例を基に示せば、次のとおりである。(平15課資2-1追加)

設例1

相続時精算課税適用者に配偶者、子供がいる場合の図
 上記の場合において、特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者が死亡したときには、配偶者及び子が相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継することになり、その割合は、配偶者と子がそれぞれ2分の1ずつとなる。

設例2

相続時精算課税適用者に母、配偶者がいる場合の図
 上記の場合において、特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者が死亡したときには、母及び配偶者が相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継することになり(特定贈与者には承継されない。)、その割合は、母が3分の1、配偶者が3分の2となる。

(相続人が特定贈与者のみである場合)

21の17-3 相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務は当該特定贈与者及び当該相続時精算課税適用者の民法第889条((直系尊属及び兄弟姉妹の相続権))の規定による後順位の相続人となる他の者には承継されないのであるから留意する。
 したがって、この場合には、当該特定贈与者の死亡に係る当該相続時精算課税適用者の相続税の申告は必要がないこととなる。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)

(限定承認をした場合の承継)

21の17-4 法第21条の17第2項は、特定贈与者の死亡に係る相続税額の計算において算出された相続時精算課税適用者の相続税額を当該相続時精算課税適用者の相続人が納付する場合のその限度額について規定しているものであり、当該相続時精算課税適用者に係る納付すべき相続税額の計算方法についての規定ではないことに留意する。(平15課資2-1追加)

第21条の18《相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等》関係

(相続人が特定贈与者のみである場合)

21の18-1 贈与により財産を取得した者の相続人が当該贈与をした者のみである場合には、相続時精算課税選択届出書を提出することはできないのであるから留意する。(平15課資2-1追加)

(相続人が2人以上いる場合)

21の18-2 法第21条の18第1項の規定による相続時精算課税選択届出書を提出しようとする相続人(贈与者を除く。以下21の18-2において同じ。)が2人以上いる場合の当該相続時精算課税選択届出書の提出は、一の相続時精算課税選択届出書に当該相続人全員が連署して行うのであるが、当該相続人のうち1人でも欠けた場合には、相続時精算課税の適用を受けることはできないのであるから留意する。(平15課資2-1追加)