第3節 所得控除

(事業以外の業務用資産の災害等による損失)

72−1 不動産所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務(事業を除く。)の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産(令第81条第1号《譲渡所得の基因とされない棚卸資産に準ずる資産》に規定する資産を含み、山林及び生活に通常必要でない資産を除く。)につき災害又は盗難若しくは横領(以下72−7までにおいて「災害等」という。)による損失が生じた場合において、居住者が当該損失の金額及び令第206条第1項各号《雑損控除の対象となる雑損失の範囲》に掲げる支出(資本的支出に該当するものを除く。)の額の全てを当該所得の金額の計算上必要経費に算入しているときは、これを認めるものとする。この場合において、当該損失の金額の必要経費算入については法第51条第4項《資産損失の必要経費算入》の規定に準じて取り扱うものとし、法第72条第1項の規定の適用はないものとする。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46、令4課個2-13、課法12-16、課審5-9改正)

(注) この取扱いの適用を受けた資産につき、修繕その他原状回復のため支出した費用の額があるときは、51-3の適用がある。

(資産について受けた損失の金額の計算)

72−2 令第206条第3項各号に掲げる資産について受けた損失の金額は、個々の資産ごとに、次に掲げる金額のいずれかを基礎として計算することに留意する。(平26課個2−9、課審5−14追加、令2課個2−12、課法11−3、課審5−6改正)

(1) 損失を生じた時の直前におけるその資産の価額

(2) 令第206条第3項各号に定めるその資産の取得費とされる金額に相当する金額

(原状回復のための支出と資本的支出との区分の特例)

72−3 災害等により損壊した法第72条第1項に規定する資産について支出した金額で、その金額を当該資産の原状回復のための支出の部分の額とその他の部分の額とに区分することが困難なものについては、その金額の30%に相当する額を原状回復のための支出の部分の額とし、残余の額を資本的支出の部分の額とすることができる。(昭57直所3−1改正)

(注) 上記により計算された原状回復のための支出の額であっても、令第206条第1項第2号ロかっこ書の規定により、法第72条第1項に規定する損失の金額に含まれないものがあることに留意する。

(雑損控除の適用される親族の判定)

72−4 居住者の配偶者その他の親族が法第72条第1項に規定する「その者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるもの」に該当するかどうかは、次による。

(1) 生計を一にする親族であるかどうかは、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる日の現況により判定する。

イ 資産そのものについて生じた損失につき当該居住者が雑損控除の適用を受けようとする場合 当該損失が生じた日

ロ 令第206条第1項各号に掲げる支出につき当該居住者が雑損控除の適用を受けようとする場合 当該損失が生じた日又は現実に当該支出をした日

(2) 当該親族のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が基礎控除の額に相当する金額以下であるかどうかは、(1)のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ(1)のイ又はロに掲げる日の属する年の12月31日の現況により判定する。この場合において、当該居住者が年の中途において死亡し又は出国をしたときは、その死亡又は出国の日において見積もった当該日の属する年分の当該合計額を基礎として法第72条第1項の規定を適用する。

(災害等関連支出の控除年分)

72−5 令第206条第1項各号に掲げる支出をした場合には、当該支出をした金額はその支出をした日の属する年分の法第72条第1項に規定する損失の金額となるのであるが、その年1月1日から3月15日までの間に支出をした金額については、その支出をした日の属する年の前年分(災害等のあった日の属する年以後の年分に限る。)の同項に規定する損失の金額として確定申告を行っている場合は、これを認めるものとする。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)

(注) 当該確定申告を行っている場合には、その支出をした金額は、その支出をした日の属する年分の当該損失の金額に含まれないことに留意する。

(大規模な災害の意義)

72−6 令第206条第1項第2号に規定する「大規模な災害」とは、同号イからハまでに掲げる支出その他これらに類する支出が1年を超えて支出されると認められる災害をいうのであるが、大規模災害からの復興に関する法律(平成25年法律第55号)第2条第1号((定義))に規定する「特定大規模災害」は、同項第2号に規定する「大規模な災害」に該当することに留意する。(平27課個2-11、課法10-16、課審5-7追加)

(注) この取扱いは、令第203条第2号((被災事業用資産の損失に含まれる支出))に規定する「大規模な災害」についても同様であることに留意する。

(保険金等及び災害等関連支出の範囲等)

72−7 法第72条第1項に規定する「保険金、損害賠償金その他これらに類するもの」の範囲等、盗難品等の返還を受けた場合の処理及び令第206条第1項各号に掲げる支出の範囲等については、37−15の3、51−6から51−8まで及び70−6から70−12までの取扱いに準ずる。(平30課個2−19、課審5−2改正)

(損失の生じた資産の取得費)

72−8 災害等により法第72条第1項に規定する資産が損壊し、又はその価値が減少した場合において、当該事由が生じた直後における当該資産の価額が、当該事由が生じた直前において当該資産の譲渡又は消滅があったものとして計算した当該資産の取得費に相当する金額に満たないこととなったときは、当該満たない部分の金額は、次に掲げる資産の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。(令2課個2−12、課法11−3、課審5−6改正)

(1) 減価償却資産及び繰延資産 当該事由が生じた時において当該資産の償却費の額に算入された金額とする。

(2) (1)以外の資産 当該資産の取得費から控除する。


(生計を一にする親族に係る医療費)

73−1 法第73条第1項に規定する「自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費」とは、医療費を支出すべき事由が生じた時又は現実に医療費を支払った時の現況において居住者と生計を一にし、かつ、親族である者に係る医療費をいう。

(支払った医療費の意義)

73−2 法第73条第1項に規定する「その年中に支払った当該医療費」とは、その年中に現実に支払った医療費をいうのであるから、未払となっている医療費は現実に支払われるまでは控除の対象とならないことに留意する。

(控除の対象となる医療費の範囲)

73−3 次に掲げるもののように、医師、歯科医師、令第207条第4号《医療費の範囲》に規定する施術者又は同条第6号に規定する助産師(以下この項においてこれらを「医師等」という。)による診療、治療、施術又は分べんの介助(以下この項においてこれらを「診療等」という。)を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとする。(平11課所4−25、平14課個2−22、課資3−5、課法8−10、課審3−197、平19課個2−11、課資3−1、課法9−5、課審4−26改正)

(1) 医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの

(2) 自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用

(3) 身体障害者福祉法第38条《費用の徴収》、知的障害者福祉法第27条《費用の徴収》若しくは児童福祉法第56条《費用の徴収》又はこれらに類する法律の規定により都道府県知事又は市町村長に納付する費用のうち、医師等による診療等の費用に相当するもの並びに(1)及び(2)の費用に相当するもの

(健康診断及び美容整形手術のための費用)

73−4 いわゆる人間ドックその他の健康診断のための費用及び容姿を美化し、又は容ぼうを変えるなどのための費用は、医療費に該当しないことに留意する。ただし、健康診断により重大な疾病が発見され、かつ、当該診断に引き続きその疾病の治療をした場合には、当該健康診断のための費用も医療費に該当するものとする。

(医薬品の購入の対価)

73−5 令第207条第2号に規定する医薬品とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品をいうのであるが、同項に規定する医薬品に該当するものであっても、疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入の対価は、医療費に該当しないことに留意する。(平26課法10−14、課個2−22、課審5−27改正)

(保健師等以外の者から受ける療養上の世話)

73−6 令第207条第5号に掲げる「保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話」とは、保健師助産師看護師法第2条《保健師》、第5条《看護師》又は第6条《准看護師》に規定する保健師、看護師又は准看護師がこれらの規定に規定する業務として行う療養上の世話をいうのであるが、これらの者以外の者で療養上の世話を受けるために特に依頼したものから受ける療養上の世話も、これに含まれるものとする。(平14課個2−22、課資3−5、課法8−10、課審3−197改正)

(助産師による分べんの介助)

73−7 令第207条第6号に掲げる「助産師による分べんの介助」には、助産師が行う保健師助産師看護師法第3条《助産師》に規定する妊婦、じょく婦又は新生児の保健指導も含まれるものとする。(平14課個2−22、課資3−5、課法8−10、課審3−197改正)

(医療費をほてんする保険金等)

73−8 法第73条第1項かっこ内に規定する「保険金、損害賠償金その他これらに類するもの」(以下73−10までにおいて「医療費をほてんする保険金等」という。) には、次に掲げるようなものがあることに留意する。(昭55直所3−19、直法6−8、昭60直所3−21、直資3−5、平7課所4−1、課資3−1、平15課個2−23、課資3−7、課法8−11、課審4−37、平21課個2-29、課審4-52、平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)

(1) 社会保険又は共済に関する法律その他の法令の規定に基づき支給を受ける給付金のうち、健康保険法第87条第2項((療養費))、第97条第1項((移送費))、第101条((出産育児一時金))、第110条((家族療養費))、第112条第1項((家族移送費))、第114条((家族出産育児一時金))、第115条第1項((高額療養費))又は第115条の2第1項((高額介護合算療養費))の規定により支給を受ける療養費、移送費、出産育児一時金、家族療養費、家族移送費、家族出産育児一時金、高額療養費又は高額介護合算療養費のように医療費の支出の事由を給付原因として支給を受けるもの

(2) 損害保険契約又は生命保険契約(これらに類する共済契約を含む。)に基づき医療費のほてんを目的として支払を受ける傷害費用保険金、医療保険金又は入院費給付金等(これらに類する共済金を含む。)

(3) 医療費のほてんを目的として支払を受ける損害賠償金

(4) その他の法令の規定に基づかない任意の互助組織から医療費のほてんを目的として支払を受ける給付金

(医療費をほてんする保険金等に当たらないもの)

73−9 次に掲げるようなものは、医療費をほてんする保険金等に当たらないことに留意する。(昭57直所3−8、平7課所4−1、課資3−1、平15課個2−23、課資3−7、課法8−11、課審4−37、平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)

(1) 死亡したこと、重度障害の状態となったこと、療養のため労務に服することができなくなったことなどに基因して支払を受ける保険金、損害賠償金等

(2) 社会保険又は共済に関する法律の規定により支給を受ける給付金のうち、健康保険法第99条第1項《傷病手当金》又は第102条《出産手当金》の規定により支給を受ける傷病手当金又は出産手当金その他これらに類するもの

(3) 使用者その他の者から支払を受ける見舞金等(73−8の(4)に該当するものを除く。)

(医療費をほてんする保険金等の見込控除)

73−10 医療費をほてんする保険金等の額が医療費を支払った年分の確定申告書を提出する時までに確定していない場合には、当該保険金等の見込額に基づいて同項の規定を適用する。この場合において、後日、当該保険金等の確定額と当該見込額とが異なることとなったときは、遡及してその医療費控除額を訂正するものとする。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46改正)