(事業の遂行上生じた売掛金、貸付金等に準ずる債権)

51-10 法第51条第2項に規定する「事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権」(以下51−12までにおいて「貸金等」という。)には、販売業者の売掛金、金融業者の貸付金及びその未収利子、製造業者の下請業者に対して有する前渡金、工事請負業者の工事未収金、自由職業者の役務の提供の対価に係る未収金、不動産貸付業者の未収賃貸料、山林経営業者の山林売却代金の未収金等のほか、次に掲げるようなものも含まれる。(平11課所4−1改正)

(1) 自己の事業の用に供する資金の融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上し、又は支払手形を振り出している場合のその受取手形に係る債権

(2) 自己の製品の販売強化、企業合理化等のため、特約店、下請先等に貸し付けている貸付金

(3) 事業上の取引のため、又は事業の用に供する建物等の賃借りのために差し入れた保証金、敷金、預け金等の債権

(4) 使用人に対する貸付金又は前払給料、概算払旅費等

(貸金等の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)

51−11 貸金等について次に掲げる事実が発生した場合には、その貸金等の額のうちそれぞれ次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。(昭57直所3−1、平11課所4−25、平12課所4−30、平16課個2−23、課資3−7、課法8−8、課審4−33、平18課個2−18、課資3−10、課審4−114、平22課個2−16、課法9−1、課審4−30改正)

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。  これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。  この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられたこと。  その切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知したこと。  その通知した債務免除額

(回収不能の貸金等の貸倒れ)

51−12 貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額について貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできない。(昭57直所3−1改正)

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)

51−13 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下この項において同じ。)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れになったものとして、当該売掛債権に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。(昭46直審(所)19、昭57直所3−1改正)

(1) 債務者との取引の停止をした時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上を経過したこと(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)。

(2) 同一地域の債務者について有する売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないこと。

(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

(更生債権者が更生計画の定めるところにより株式を取得した場合)

51−14 更生債権者が更生計画の定めるところにより、新たに払込み又は現物出資をしないで更生会社(新会社を含む。以下51−15において同じ。)が発行する株式を取得した場合において、当該取得した株式の価額の合計額が当該株式の割当ての基礎とされた債権額に満たないときは、その差額に相当する金額を貸倒れとすることができる。(平19課個2−11、課資3−1、課法9−5、課審4−26改正)

(更生債権者が更生会社の株式を取得する権利の割当てを受けた場合)

51−15 更生債権者が更生計画の定めるところにより更生会社の株式を取得する権利の割当てを受けた場合において、払込みをしなかったとき又は当該株式を取得する権利の価額が当該割当ての基礎とされた更生債権の金額に満たないときは、それぞれ当該更生債権の金額又は当該更生債権の金額と当該株式を取得する権利の価額との差額を貸倒れとすることができる。(昭50直所3−4、平19課個2−11、課資3−1、課法9−5、課審4−26改正)

(更生手続の対象とされなかった更生債権の貸倒れ)

51−16 指定された期限までに裁判所に届け出なかったため更生手続の対象とされなかった更生債権については、その金額をその更生計画の認可の決定のあった日において貸倒れとすることができる。

(金銭債権の譲渡損失)

51−17 金銭債権を譲渡したことにより生じた損失の金額については、当該損失が当該譲渡により実質的に贈与したと認められる場合に生じたものである場合を除き、当該損失の金額に相当する金額の貸倒れによる損失が生じたものとして、法第51条第2項若しくは第4項、第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》又は第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》の規定を適用する。