第17章 外貨建取引の換算等

(いわゆる外貨建て円払いの取引)

17−1−1 法第61条の8第1項《外貨建取引の換算》に規定する外貨建取引(以下この章において「外貨建取引」という。)は、その取引に係る支払が外国通貨で行われるべきこととされている取引をいうのであるから、例えば、債権債務の金額が外国通貨で表示されている場合であっても、その支払が本邦通貨により行われることとされているものは、ここでいう外貨建取引には該当しないことに留意する。

(外貨建取引及び発生時換算法の円換算)

17−1−2 法第61条の8第1項《外貨建取引の換算》及び第61条の9第1項第1号イ《発生時換算法の意義》の規定に基づく円換算(法第61条の8第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下この章において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下この章において「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下この章において「電信買相場」という。)の仲値(以下この章において「電信売買相場の仲値」という。)による。ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の費用(原価及び損失を含む。以下この章において同じ。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。

(注)

1 本通達の本文の電信売相場、電信買相場及び電信売買相場の仲値については、原則として、その連結法人の主たる取引金融機関のものによることとするが、連結法人が、同一の方法により入手等をした合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める。

2 上記の円換算に当たっては、継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる次のような外国為替の売買相場(以下この章において「為替相場」という。)も使用することができる。

(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値

(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値

3 円換算に係る当該日(為替相場の算出の基礎とする日をいう。以下この (注) 3において同じ。)の為替相場については、次に掲げる場合には、それぞれ次によるものとする。以下この章において同じ。

(1) 当該日に為替相場がない場合には、同日前の最も近い日の為替相場による。

(2) 当該日に為替相場が2以上ある場合には、その当該日の最終の相場(当該日が取引日である場合には、取引発生時の相場)による。ただし、取引日の相場については、取引日の最終の相場によっているときも、これを認める。

4 本邦通貨により外国通貨を購入し直ちに資産を取得し若しくは発生させる場合の当該資産、又は外国通貨による借入金(社債を含む。以下この (注) 4において同じ。)に係る当該外国通貨を直ちに売却して本邦通貨を受け入れる場合の当該借入金については、現にその支出し、又は受け入れた本邦通貨の額をその円換算額とすることができる。

5 法第61条の9第1項《外貨建資産等の換算額》に規定する外貨建資産等(以下この章において「外貨建資産等」という。)の取得又は発生に係る取引は、当該取得又は発生の時における支払が本邦通貨により行われている場合であっても、本通達の本文及び (注) 2から4までを適用し、当該外貨建資産等の円換算を行う。

6 いわゆる外貨建て円払いの取引は、当該取引の円換算額を外貨建取引の円換算の例に準じて見積もるものとする。この場合、その見積額と当該取引に係る債権債務の実際の決済額との間に差額が生じたときは、その差額は、17−1−11により益金の額又は損金の額に算入される部分の金額を除き、当該債権債務の決済をした日(同日前にその決済額が確定する場合には、その確定した日)の属する連結事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

(多通貨会計を採用している場合の外貨建取引の換算)

17−1−3 連結法人が外貨建取引を取引発生時には外国通貨で記録し、各月末、連結事業年度終了の時等一定の時点において本邦通貨に換算するといういわゆる多通貨会計を採用している場合において、法第61条の8第1項《外貨建取引の換算》の規定の適用に当たり、各月末等の規則性を有する1月以内の一定期間ごとの一定の時点において本邦通貨への換算を行い、当該一定の時点を当該外貨建取引に係る取引発生時であるものとして17−1−2の取扱いを適用しているときは、これを認める。この場合、円換算に係る為替相場については、当該一定期間を基礎として計算した平均値も使用することができるものとする。

(注) 法第61条の9第1項《外貨建資産等の換算額》に規定する期末時換算法を選定している場合の連結事業年度終了の時において有する外貨建資産等の円換算は、17−2−5の為替相場による。

(先物外国為替契約等がある場合の収益、費用の換算等)

17−1−4 外貨建取引に係る売上その他の収益又は仕入その他の費用につき円換算を行う場合において、その計上を行うべき日までに、当該収益又は費用の額に係る本邦通貨の額を先物外国為替契約等(法第61条の8第2項《先物外国為替契約等により円換算額を確定させた外貨建取引の換算》に規定する先物外国為替契約等をいう。以下この章において同じ。)により確定させているとき(当該先物外国為替契約等の締結の日において、当該連結法人の帳簿書類に規則第27条の11第2項《先物外国為替契約等により円換算額が確定している旨の記載の方法》に規定する記載事項に準ずる事項の記載があるときに限る。)は、その収益又は費用の額については、17−1−2(17−1−3により準用して適用する場合を含む。以下この章において同じ。)にかかわらず、その確定させている本邦通貨の額をもってその円換算額とすることができる。この場合、その収益又は費用の額が先物外国為替契約等により確定しているかどうかは、原則として個々の取引ごとに判定するのであるが、外貨建取引の決済約定の状況等に応じ、包括的に先物外国為替契約等を締結してその予約額の全部又は一部を個々の取引に比例配分するなど合理的に振り当てているときは、これを認める。(平29年課法2−17「二十」により改正)

(注)

1 連結事業年度終了の時において、この取扱いの適用を受けた外貨建取引に係る外貨建資産等で決済時の円換算額を確定させたものを有する場合には、当該外貨建資産等に係る法第61条の10第1項《為替予約差額の配分》に規定する為替予約差額に相当する金額を法第81条の3第1項《個別益金額又は個別損金額》の規定により同項の個別益金額又は個別損金額を計算する場合の法第61条の10第1項から第3項までの規定(各事業年度の所得の金額を計算する場合のこれらの規定を含む。)に基づき各連結事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当しない場合には、当該事業年度)に配分することに留意する。この場合、当該連結事業年度終了の日における当該為替予約差額に相当する金額の計上は、課税上弊害がない限り、為替差損益の調整勘定として処理することができるものとする。

2 法第61条の6《繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ》又は第61条の7《時価ヘッジ処理による売買目的外有価証券の評価益又は評価損の計上》の規定の適用を受ける場合には、当該連結法人の帳簿書類に規則第27条の11第2項に規定する記載を行わず、規則第27条の8第2項《繰延ヘッジ処理》又は第27条の9第2項《時価ヘッジ処理》に規定する記載を行うことになる。

(前渡金等の振替え)

17−1−5 17−1−2により円換算を行う場合において、その取引に関して受け入れた前受金又は支払った前渡金があるときは、当該前受金又は前渡金に係る部分については、17−1−2にかかわらず、当該前受金又は前渡金の帳簿価額をもって収益又は費用の額とし、改めてその収益又は費用の計上日における為替相場による円換算を行わないことができるものとする。

(延払基準の適用)

17−1−6 令第124条《延払基準の方法》の規定による延払基準の方法を適用するリース譲渡(以下17−1−7までにおいて「リース譲渡」という。)の対価の一部につき前受金を受け入れている場合において、その対価の全額につき17−1−2により円換算を行い、これを基として延払基準を適用しているときは、当該前受金の帳簿価額と当該前受金についての円換算額との差額に相当する金額は、当該リース譲渡に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する連結事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、同条第2項に規定する賦払金割合の算定に含めることに留意する。(平30年課法2−8「十八」により改正)

(リース譲渡に係る債権等につき為替差損益を計上した場合の未実現利益繰延額の修正)

17−1−7 リース譲渡について債権総額を計上するとともにその未実現利益を繰延計上する経理を行っている連結法人が、当該リース譲渡に係る外貨建債権(法第61条の9第1項第1号《外貨建資産等の換算額》に規定する外貨建債権をいう。以下この章において同じ。)を当該連結事業年度終了の時の為替相場により円換算を行った場合において、その円換算による為替差損益を計上しているときは、繰延経理をした当該未実現利益の額を調整するものとする。(平30年課法2−8「十八」により改正)

(注) リース譲渡に係る短期外貨建債権(令第122条の4第1号《短期外貨建債権債務》に規定する短期外貨建債権をいう。以下この章において同じ。)につき計上した為替差損益に対応する未実現利益の額を連結法人が継続して調整しないこととしているときは、本文にかかわらずこれを認める。

(海外支店等の資産等の換算の特例)

17−1−8 連結法人が国外に支店等を有する場合において、当該支店等の外国通貨で表示されている財務諸表を本店の財務諸表に合算する場合における円換算額については、当該支店等の財務諸表項目の全てについて当該連結事業年度終了の時の為替相場による円換算額を付すことができるものとする。(平23年課法2−17「二十九」により改正)

(注) 上記の円換算に当たっては、継続適用を条件として、収益及び費用(前受金等の収益性負債の収益化額及び前払金等の費用性資産の費用化額を除く。)の換算につき、取引日の属する月若しくは半期又は当該連結事業年度の一定期間内における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値も使用することができる。この場合、当該国外支店等に係る当期利益の額又は当期損失の額の円換算額は、当該国外支店等に係る貸借対照表に計上されている金額の円換算額となることに留意する。

(為替差益を計上した場合の資産の取得価額の不修正)

17−1−9 資産の取得に要した法第61条の9第1項第1号《外貨建資産等の換算額》に規定する外貨建債務(以下この章おいて「外貨建債務」という。)を当該連結事業年度終了の時の為替相場により円換算を行ったため為替差益が生じた場合であっても、当該資産の取得価額を減額することはできないことに留意する。

(外貨建てで購入した原材料の受入差額)

17−1−10 連結法人が、外貨建てで購入した原材料についての仕入金額の換算を社内レートによって行う等17−1−2及び17−1−4に定める方法によって行っていない場合には、17−1−2又は17−1−4に定める方法によって換算した金額と当該連結法人が計上した金額との差額は、原材料受入差額に該当する。

(注) 当該差額については5−3−10《原材料受入差額の処理の簡便計算方式》を適用することができる。

(製造業者等が負担する為替損失相当額等)

17−1−11 製造業者等が商社等を通じて行った輸出入等の取引に関して生ずる為替差損益の全部又は一部を製造業者等に負担させ又は帰属させる契約を締結している場合における商社等及び製造業者等の取扱いについては、次による。(平22年課法2−1「三十四」、平23年課法2−17「二十九」により改正)

(1) 商社等 外貨建債権又は外貨建債務(以下この章において「外貨建債権債務」という。)について法第61条の9第1項第1号ロ《外貨建資産等の換算額》に規定する期末時換算法(以下この章において「期末時換算法」という。)を選定している場合(同号イに規定する発生時換算法(以下この章において「発生時換算法」という。)を選定している外貨建債権債務につき令第122条の3第1項《外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外貨建資産等の期末時換算》の規定の適用を受けたときを含む。)において、当該契約に係る外貨建債権債務につき当該連結事業年度終了の時にその決済が行われたものと仮定した場合において製造業者等に負担させ又は帰属させることとなる金額(当該外貨建債権債務に係る換算差額又は法第61条の10第1項から第3項まで《為替予約差額の配分》の規定により各連結事業年度に配分すべき金額に相当する金額のうち、負担させ又は帰属させることとなる金額に限る。)を当該連結事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

(2) 製造業者等 全ての商社等に対する当該契約に係る金銭債権及び金銭債務につき当該連結事業年度終了の時にその決済が行われたものと仮定した場合において負担し又は帰属することとなる金額(当該金銭債権及び金銭債務につき外貨建債権債務を有するとした場合において当該外貨建債権債務に係る換算差額又は同条第1項から第3項までの規定により各連結事業年度に配分すべき金額に相当する金額のうち、負担し又は帰属することとなる金額に限る。)を当該連結事業年度の損金の額又は益金の額に算入しているときは、継続適用を条件として、これを認める。