第7章 減価償却資産の償却等

第1節 減価償却資産の範囲

(美術品等についての減価償却資産の判定)

7−1−1 「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととされているが、次に掲げる美術品等は「時の経過によりその価値の減少しない資産」と取り扱う。(昭55年直法2−8「十九」、平元年直法2−7「二」、平26年課法2−12「一」により改正)

  • (1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
  • (2) (1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)
  • (注) 1 時の経過によりその価値が減少することが明らかなものには、例えば、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれる。
  • 2 取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。

(貴金属の素材の価額が大部分を占める固定資産)

7−1−2 ガラス繊維製造用の白金製溶解炉、光学ガラス製造用の白金製るつぼ、か性カリ製造用の銀製なべのように、素材となる貴金属の価額が取得価額の大部分を占め、かつ、一定期間使用後は素材に還元のうえ鋳直して再使用することを常態としているものは、減価償却資産には該当しない。この場合において、これらの資産の鋳直しに要する費用(地金の補給のために要する費用を含む。)の額は、その鋳直しをした日の属する事業年度の損金の額に算入する。(昭55年直法2−8「十九」により改正)

(注) 白金ノズルは減価償却資産に該当するのであるが、これに類する工具で貴金属を主体とするものについても、白金ノズルに準じて減価償却をすることができるものとする。

(稼働休止資産)

7−1−3 稼働を休止している資産であっても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとする。(昭55年直法2−8「十九」により改正)

(注) 他の場所において使用するために移設中の固定資産については、その移設期間がその移設のために通常要する期間であると認められる限り、減価償却を継続することができる。

(建設中の資産)

7−1−4 建設中の建物、機械及び装置等の資産は減価償却資産に該当しないのであるが、建設仮勘定として表示されている場合であっても、その完成した部分が事業の用に供されているときは、その部分は減価償却資産に該当するものとする。

(常備する専用部品の償却)

7−1−4の2 例えば航空機の予備エンジン、電気自動車の予備バッテリー等のように減価償却資産を事業の用に供するために必要不可欠なものとして常備され、繰り返して使用される専用の部品(通常他に転用できないものに限る。)は、当該減価償却資産と一体のものとして減価償却をすることができる。(昭55年直法2−8「十九」により追加)

(工業所有権の実施権等)

7−1−4の3 法人が他の者の有する工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権及び商標権をいう。以下同じ。)について実施権又は使用権を取得した場合におけるその取得のために要した金額については、当該工業所有権に準じて取り扱う。この場合において、その実施権又は使用権のその取得後における存続期間が当該工業所有権の耐用年数に満たないときは、当該存続期間の年数(1年未満の端数は切り捨てる。)をその耐用年数とすることができる。(昭55年直法2−8「十九」により追加)

(織機の登録権利等)

7−1−5 繊維工業における織機の登録権利、許可漁業の出漁権、タクシー業のいわゆるナンバー権のように法令の規定、行政官庁の指導等による規制に基づく登録、認可、許可、割当て等の権利を取得するために支出する費用は、営業権に該当するものとする。(昭55年直法2−8「十九」、平11年課法2−9「八」により改正)

(注) 例えば当該権利に係る事業を廃止する者に対して残存業者が負担する補償金のように当該権利の維持又は保全のために支出する費用についても、営業権として減価償却をすることができる。

(無形減価償却資産の事業の用に供した時期)

7−1−6 令第13条第8号《無形減価償却資産の範囲》に掲げる無形減価償却資産のうち、漁業権、工業所有権及び樹木採取権については、その存続期間の経過により償却すべきものであるから、その取得の日から事業の用に供したものとして取り扱う。(昭55年直法2−8「十九」、令2年課法2−17「五」により改正)

(温泉利用権)

7−1−7 法人が温泉を湧出する土地を取得した場合におけるその取得に要した金額から当該土地に隣接する温泉を湧出しない土地の価額に比準して計算した土地の価額を控除した金額又は温泉を利用する権利を取得するために要した金額については、水利権に準じて取り扱う。ただし、温泉を利用する権利だけを取得した場合において、その利用につき契約期間の定めがあるもの(契約期間を延長しない旨の明らかな定めのあるものに限る。)については、その契約期間を耐用年数として償却することができる。

(公共下水道施設の使用のための負担金)

7−1−8 法人が、下水道法第2条第3号《公共下水道の定義》に規定する公共下水道を使用する排水設備を新設し、又は拡張する場合において、公共下水道管理者に対してその新設又は拡張により必要となる公共下水道の改築に要する費用を負担するときは、その負担金の額については、水道施設利用権に準じて取り扱う。

(研究開発のためのソフトウエア)

7−1−8の2 法人が、特定の研究開発にのみ使用するため取得又は製作をしたソフトウエア(研究開発のためのいわば材料となるものであることが明らかなものを除く。)であっても、当該ソフトウエアは減価償却資産に該当することに留意する。(平12年課法2−19「七」により追加、平20年課法2−5「十二」により改正)

(注) 当該ソフトウエアが耐用年数省令第2条第2号に規定する開発研究の用に供されている場合には、耐用年数省令別表第六に掲げる耐用年数が適用されることに留意する。

(電気通信施設利用権の範囲)

7−1−9 令第13条第8号ツ《電気通信施設利用権》に規定する電気通信施設利用権とは、電気通信事業法施行規則第2条第2項第1号から第3号まで《用語》に規定する電気通信役務の提供を受ける権利のうち電話加入権(加入電話契約に基づき加入電話の提供を受ける権利をいう。)及びこれに準ずる権利を除く全ての権利をいうのであるから、例えば「電信役務」、「専用役務」、「データ通信役務」、「デジタルデータ伝送役務」、「無線呼出し役務」等の提供を受ける権利は、これに該当する。(昭48年直法2−81「18」、昭49年直法2−71「5」、昭58年直法2−11「五」、昭60年直法2−11「一」、平2年直法2−6「二」、平8年課法2−7「一」、平11年課法2−9「八」、平14年課法2−1「十五」、平16年課法2−14「五」、平23年課法2−17「十二」、平28年課法2−11「三」、令2年課法2−17「五」により改正)

(社歌、コマーシャルソング等)

7−1−10 社歌、コマーシャルソング等の制作のために要した費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(昭55年直法2−8「十九」により追加、昭60年直法2−11「一」により改正)