第3節 保全担保及び保全差押え

保全担保の提供命令

(納税者)

1 法第158条第1項の「納税者」は、法第2条第6号《納税者の定義》の納税者のうち、消費税等(消費税を除く。)を滞納した者に限られる。
 なお、消費税等(消費税を除く。)については、その附帯税及び滞納処分費を含む(以下第158条関係において同じ。)ことに留意する。

(担保提供命令の要件)

2 法第158条第1項の担保提供の命令をすることができる要件は、納税者が現に消費税等(消費税を除く。)を滞納していること及びその後その者に課すべきそれらの国税の徴収を確保することができないと認められることである。この場合における「国税の徴収を確保することができない」かどうかの判断は、その者が滞納しているすべての国税及びその者に課すべきすべての国税を考慮して行うものとする。

(提供命令)

3 法第158条第1項の規定による保全担保の提供命令は、令第55条第1項各号《保全担保の提供命令書の記載事項》に掲げる事項を記載した書面により行う。この書面の様式は、別に定めるところによる。

(指定すべき期限)

4 法第158条第1項の「期限」は、保全担保の提供命令に係る書面を発する日から起算して7日を経過した日以後の日としなければならない。ただし、納税者について通則法第38条第1項各号《繰上請求》のいずれかに該当する事実が生じたときは、この期限を繰り上げることができる(令第55条第2項)。
 なお、上記の「7日を経過した日」が休日等に当たるときは、これらの日の翌日をもってその期限とみなされる(通則法第10条第2項)。

(前月分の国税)

5 法第158条第2項の「前月分」の国税とは、ある月の前月分の移出又は引取り等に係る国税(その国税に係る各種加算税を含む。)をいう。例えば、前月分の移出に係る酒税について、その移出数量の一部について申告があり、その後正当移出数量が判明し、その移出残数量に係る酒税につき更正をした場合には、その総額の酒税が移出した前月分の国税となる。

(根担保の設定)

6 法第158条の担保権の設定は、担保の設定の形式により、指定した金額を限度額として行うものとする(根抵当権(民法第398条の2第1項)等)。

(担保の種類、その提供手続等)

7 法第158条第1項の規定による担保の種類、提供手続及び担保の変更については、それぞれ通則法第50条《担保の種類》、通則令第16条《担保の提供手続》並びに通則法第51条第1項及び第2項《担保の変更》の定めるところによる。

(注) 金銭担保を提供した者(納税者以外の者を含む。)は、その金銭をもって金銭担保に係る国税の納付に充てることができるが、この場合において、その国税に充てようとする者は、その旨を記載した書面を税務署長に提出しなければならない(通則令第18条第1項)。この書面の様式は、別に定めるところによる。また、その書面の提出があったときは、その担保として提供された金銭の額(その額が納付すべき国税の額を超えるときは、その国税の額)に相当する国税の納付があったものとみなされる(同令第18条第2項)。

抵当権の設定

(法定抵当権の設定の除外)

8 法第158条第3項の「酒税を除く」とは、酒税について、納税者が担保を提供しない場合は、酒類製造免許の取消し(酒税法第12条第5号)の間接強制の手段によることとし、一方的に抵当権を設定しないことを明らかにしたものである。

(抵当権の目的となるもの)

9 法第158条第3項の「抵当権の目的となるもの」とは、民法その他の法律の規定により抵当権の目的とすることができるものをいい、土地、建物、工場財団、地上権、永小作権、採掘権等がある。
 なお、法第158条第3項の規定により抵当権設定の通知をする場合における財産は、原則として、通則法第50条第3号から第5号まで《担保の種類》に掲げるものとするが、同条第4号に掲げる財産で保険に付されていないものでも差し支えない。

(抵当権の設定通知書)

10 税務署長は、納税者がその指定された期限までにその命ぜられた担保を提供しないときは、納税者の財産で抵当権の目的となるものにつき、法第158条第1項の規定により指定した金額を限度として抵当権を設定することを書面で納税者に通知することができる(法第158条第3項)。この書面の様式は、別に定めるところによる。

(みなす設定)

11 10の抵当権の設定通知書が納税者に到達した場合には、納税者の意思にかかわらず、その通知書に記載された財産につき通知に係る国税のために、法律上当然に、抵当権を設定したものとみなされる(法第158条第4項前段)。この書面の様式は、別に定めるところによる。
 なお、法第158条第4項後段の「関係機関」は、第68条関係36、第70条関係5及び第71条関係6と同様である。

(証する書面)

12 法第158条第5項の「証する書面」とは、配達証明書(郵便法第47条参照)、信書便の役務のうち配達証明書に準ずるもの、交付送達の交付の事績が記載された通則規則第1条《交付送達の手続》の書面その他送達を証明することができる書面をいう。

担保の解除

(第1項の命令に係る国税等)

13 法第158条第7項の「第一項の命令に係る国税」とは、法第158条第1項の規定により担保の提供を命じた時に納税者に課せられていた消費税等(消費税を除く。)及びその後その者に課されたこれらの国税をいう。
 なお、担保を解除しなければならない場合としては、法第158条第7項のほか、通則令第17条第1項《担保を解除しなければならない場合》の規定がある。

(その他の事情の変化)

14 法第158条第8項の「その他の事情の変化」とは、例えば、担保の提供等があった納税者の滞納税額の発生がきん少であり、又は滞納期間が極めて短い等その納税者に誠意があり、担保の提供を命じた時と比べて、担保の提供等の必要がなくなったと認められる程度の事情の変化をいう。

(解除手続)

15  法第158条の規定により徴した担保の解除手続は、通則令第17条第2項及び第3項《担保の解除手続》の定めるところによる。

他の税法の規定による保全担保との関係

16 保全担保についての酒税法第31条第1項《保全担保の提供命令》、たばこ税法第23条第1項《保全担保の提供命令》、揮発油税法第18条第1項《保全担保の提供命令》、地方揮発油税法第8条第2項《保全担保の提供命令》、石油ガス税法第21条第1項《保全担保の提供命令》、航空機燃料税法第16条第1項《保全担保の提供命令》、石油石炭税法第19条第1項《保全担保の提供命令》又は印紙税法第15条第1項《保全担保の提供命令》の規定と法第158条の規定との適用関係については、酒税法等の他の税法の規定を優先して適用するものとする。