仮差押えの意義

1 法第140条の「仮差押」とは、裁判所の決定に係る仮差押えをいう(第55条関係10参照)。

仮処分の意義

2 法第140条の「仮処分」とは、裁判所の決定に係る仮処分をいう(第55条関係11参照)。

滞納処分と仮差押えとの関係

(仮差押えの効力)

3 仮差押えを受けた財産についても、法第140条の規定により滞納処分による差押えをすることができる。この場合における仮差押えの効力は、滞納処分による差押えによって消滅するものではないが、その財産が換価された場合には消滅する(第125条関係2参照)。
  なお、仮差押えを受けた財産を滞納処分により換価した場合においては、換価代金等の残余は、当該財産に対する強制執行について管轄権を有する地方裁判所又は仮差押えをした執行官に交付する(滞調法第28条、第6条第1項、第34条第1項、第18条第2項等)。

(仮差押えを受けた動産又は有価証券の差押え)

4 仮差押えを受けている動産又は有価証券については、法第56条第1項《動産又は有価証券の差押手続》の規定によりその差押えを行うことができる(第58条関係4参照)。この場合において、その動産又は有価証券に対し執行官による仮差押えの旨の封印その他の表示がしてあるときは、それらの表示を破棄しないものとする。

(供託された金銭の差押え)

5 仮差押えの執行に係る金銭(保全法第49条第2項)、仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき若しくはその保管のために不相応な費用を要するため売却した売得金(同法第49条第3項)、強制管理の方法による仮差押えの執行における配当等に充てるべき金銭(同法第47条第4項)、強制競売、担保権の実行としての競売、担保不動産収益執行が行われた場合の仮差押債権者への配当金(執行法第91条第1項第2号、第188条、第107条第4項第2号)、又は滞納処分の行政機関等から交付を受けた金銭で売得金若しくは売却代金とみなされる金銭(滞調法第11条第3項、第18条第2項、第3項、第19条参照)が仮差押債権者への配当のために供託されている場合(保全法第49条第2項、第3項、第47条第4項、執行法第91条第1項、第188条、第108条)には、執行官又は裁判所にその供託金の払戻しを請求し、その払戻しがされた金銭について、法第56条第1項《動産又は有価証券の差押手続》の規定により差し押さえる。

(仮差押えを受けた動産等以外の財産の差押え)

6 仮差押えを受けている動産又は有価証券以外の財産については、その財産の種類に応じて、法第62条第1項及び第2項《債権の差押手続》、第68条第1項及び第3項《不動産の差押手続》、第70条第1項《船舶又は航空機の差押手続》、第71条第1項《自動車、建設機械又は小型船舶の差押手続》、第72条第1項及び第3項《特許権等の差押手続》又は第73条第1項及び第3項《電話加入権等の差押手続》等の規定により、それぞれ差し押さえる。

(仮差押解放金の差押え)

7 仮差押えの執行停止のため、又は既に執行した仮差押えの取消しのため、仮差押債務者(滞納者)が仮差押決定の記載に従い供託した金銭(仮差押えによって保全される金銭債権の額に相当する金銭。以下7及び8において「仮差押解放金」という。保全法第22条)については、滞納者の有する供託金取戻請求権を差し押さえるものとする。
  また、第三債務者が仮差押えの執行がされた金銭債権の額に相当する金銭を供託した場合において、保全法第50条第3項《みなす仮差押解放金》の規定により「仮差押解放金」とみなされる供託した金銭については、滞納者の有する供託金還付請求権を差し押さえるものとする。

(仮差押解放金の取立て)

8 7により供託金取戻請求権又は供託金還付請求権を差し押さえたときは、税務署長は、直ちに供託金の払渡しの請求をすることができる(平成2.11.13付民四第5002号法務省民事局長通達)。

(差押えの通知)

9 仮差押えがされている財産を差し押さえたときは、法第55条第3号《仮差押え等をした保全執行裁判所等に対する差押えの通知》の規定により、保全執行裁判所又は執行官に差し押さえた旨その他必要な事項を通知しなければならない。

(差押解除の通知)

10 仮差押えがされている財産について滞納処分による差押えを解除した場合においては、仮差押えをした保全執行裁判所又は執行官にその旨その他必要な事項を通知しなければならない(法第81条)。

(公売等による仮差押えの登記の抹消の嘱託)

11 不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械又は小型船舶に対する仮差押えの執行が、仮差押えの登記(強制管理の開始決定に係る仮差押えの登記を含む。)をすることにより行われている場合において、その仮差押えの登記のある財産を換価し、その権利移転の登記を関係機関に嘱託するときは(法第121条等参照)、法第125条《換価に伴い消滅する権利の登記のまっ消の嘱託》等の規定により、併せて、仮差押えの登記の抹消を嘱託するものとする。

滞納処分と仮処分との関係

(仮処分が執行された財産の差押え)

12 仮処分が執行された財産についても、滞納処分による差押えをすることができる。この場合における仮処分の効力は、滞納処分による差押えによって消滅しない(保全法第58条第1項、第2項、第61条参照)。
 なお、仮処分が執行された財産を差し押さえた場合における換価については、13から20までに定めるところによる。

(不動産の所有権についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

13 所有権についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合、仮処分債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときは、滞納処分による差押えは仮処分債権者に対抗することができない(保全法第58条第1項、第2項)。したがって、差押えに基づく換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わないものとする。

(注)

1 「所有権についての登記」とは、所有権又は共有持分の登記名義人を実質的に変更する登記をいい、例えば、所有権の移転の登記、保存若しくは移転の登記の抹消、移転の登記の抹消回復の登記又は持分の更正の登記をいう。

2 「処分禁止の仮処分」とは、仮処分債務者に対して係争物(不動産、動産、債権等)に係る権利の処分(所有権の移転、担保権の設定等)を禁止することを内容とする仮処分(保全法第24条)をいう。

3 「不動産」とは、不動産登記法第2条第1号の不動産(土地及び建物)及び特別法において不動産とみなされるもの(立木(立木法第2条)、工場財団(工場抵当法第14条)、鉱業財団(鉱業抵当法第3条)、漁業財団(漁業財団抵当法第6条)、港湾運送事業財団(港湾運送事業法第26条)、道路交通事業財団(道路交通事業抵当法第8条)及び観光施設財団(観光施設財団抵当法第8条))をいう。

4 所有権についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行われる(保全法第53条第1項)。したがって、仮処分の執行と滞納処分による差押えの先後は、処分禁止の登記と差押えの登記の先後によって定まる。

5 仮処分債権者は、所有権の登記を申請する場合において、これと同時に申請するときに限り、その仮処分の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる(保全法第58条第2項、不動産登記法第111条第1項)。この場合において、仮処分債権者は、あらかじめ、その登記の権利者に対し、登記を抹消する旨の通知をしなければならない(保全法第59条)。また、差押登記が抹消されたときは登記官から抹消した旨の通知がされることとされている(保全法第59条、平成2.11.8付民三第5000号法務省民事局長通達)。

6 処分禁止の登記より後順位の登記のうち、仮処分債権者の保全すべき登記請求権の登記に係る権利の取得又は消滅に抵触しないものは、仮処分債権者に対抗することができる。例えば、処分禁止の登記の前にされた国税の担保のための抵当権に基づく担保物処分のための差押え(通則法第52条第1項)の登記、仮処分の登記前に登記された抵当権の登記名義人を申立人とする競売開始決定に係る差押えの登記(昭和58.6.22付民三第3672号法務省民事局長通達)、仮処分の債務者に対する破産手続開始(破産法第42条第2項)、再生手続開始(民事再生法第39条第1項、第184条)、株式会社の特別清算開始に伴う保全処分(会社法第515条第1項、第2項)、更生手続開始(会社更生法第50条第1項、第208条)又は企業担保権の実行手続の開始(企業担保法第28条)の各登記がこれに当たる。

7 本案(保全法第1条参照)の帰すうの形態としては、仮処分債権者の勝訴判決又は敗訴判決の確定、和解及び仮処分債権者と仮処分債務者との共同申請による登記の実現等がある。

(不動産の所有権以外の権利の移転又は消滅についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

14 所有権以外の権利の移転又は消滅についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合には、仮処分債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときにおいても、滞納処分による差押えは効力を失わない(保全法第58条第1項)。ただし、差押えに基づく換価は、当該不動産を仮処分の負担付きで換価できる場合等を除き、本案の帰すうが定まるまでの間は行わないものとする(第89条関係9、第124条関係6参照)。

(注)

1 「不動産の所有権以外の権利の移転の登記」とは、当該権利の全部又は一部の名義人を実質的に変更する登記で保存又は設定の登記に変更を加えないものをいい、例えば、抵当権若しくは地上権の全部若しくは一部の移転の登記、移転の更正の登記又は移転の抹消回復の登記をいう。

2 「不動産の所有権以外の権利の消滅の登記」とは、当該権利の全部又は一部が設定者との関係において実質的に消滅する登記をいい、例えば、抵当権抹消の登記、一部弁済による抵当権変更の登記又は被担保債権額を減額する抵当権更正の登記をいう。

(不動産の所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

15 所有者以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合には、仮処分債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときにおいても、滞納処分による差押えは効力を失わない(保全法第58条第1項)。この場合において、当該仮処分が担保権の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分であるときは換価を行うことができるが、当該仮処分が不動産の使用又は収益をする権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分であるときは、本案の帰すうが定まるまでの間は換価を行わないものとする(法第133条第3項、令第50条第4項参照)。

(注)

1 「所有権以外の権利の保存、設定又は変更の登記」とは、実質的に新たに権利を設定する登記をいい、例えば、先取特権の保存の登記、抵当権若しくは地上権設定の登記、その抹消回復の登記、根抵当権の極度額を増額する変更若しくは更正の登記又は民法第376条による抵当権の処分の登記をいう。

2 「担保権の保存、設定又は変更の登記」とは、1に掲げたもののうち、担保権に関する登記をいう。

3 上記の仮処分の執行は、処分禁止の登記とともに保全仮登記をする方法により行われる(保全法第53条第2項)。この場合において、処分禁止の登記は、処分禁止の対象が所有権であるときには甲区に、所有権以外であるときには乙区にされ、保全仮登記は乙区にされる(平成2.11.8付民三第5000号法務省民事局長通達参照)。

4 担保権の保存、設定又は変更登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分が執行された後に新たな担保権が設定された財産を差し押さえて換価した場合においては、仮処分の執行後における担保権の設定は有効であるから、当該新たな担保権により担保される債権に対しても配当を行う(保全法第58条第1項、第3項参照)。

(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

16 不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについて、登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分がされている場合の仮処分と滞納処分との関係については、13から15までに定めるところに準ずる(保全法第54条、第61条参照)。

(注) 不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものには、例えば、特許権(特許法第98条第1項)、実用新案権(実用新案法第26条)、意匠権(意匠法第36条)、商標権(商標法第35条)、育成者権(種苗法第32条)、回路配置利用権(半導体集積回路配置法第21条)、自動車の所有権及び抵当権(道路運送車両法第5条、自動車抵当法第5条)、航空機の所有権及び抵当権(航空法第3条の3、航空機抵当法第5条)、建設機械の所有権及び抵当権(建設機械抵当法第7条)並びに船舶の所有権、賃借権及び抵当権(商法第686条、第687条、第701条、第847条)等がある。

(その他の財産に対する処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

17 不動産及び不動産以外の権利でその処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするもの以外の財産について処分禁止の仮処分がされている場合における滞納処分については、13から15までに定めるところに準じて行う。

(物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分と滞納処分との関係)

18 物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するため、債務者に対し、その物の占有の移転を禁止し、及びその占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずるとともに、執行官にその物の保管をさせ、かつ、債務者がその物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官がその物を保管している旨を公示させることを目的とする仮処分(以下第140条関係において「占有移転禁止の仮処分」という。保全法第62条)がされた物を差し押さえた場合における仮処分と滞納処分との関係は、次のとおりである。

(1) 仮処分債権者が、本案の債務名義に基づいて、その物の引渡し又は明渡しの強制執行をしたときにおいても、滞納処分による差押えは効力を失わない(保全法第58条、第62条参照)。

(2) 仮処分債権者は、本案の債務名義に基づいて、仮処分の執行がされたことを知ってその物を占有した者に対し、その物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるから、差押えに基づく換価は本案の帰すうが定まるまでの間は行わないものとする(保全法第62条参照)。

(注) 占有移転禁止の仮処分は、所有者が不法占拠者に目的物の返還を請求する場合、売買契約・賃貸借契約に基づき買主・賃借人が目的物の引渡しを請求する場合、賃貸借契約終了により賃貸人が目的物の返還を請求する場合等において、占有関係が転々とするのを防止するために行われる。

(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分と滞納処分との関係)

19 建物収去土地明渡請求権を保全するための処分禁止の仮処分(保全法第55条)がされた建物を差し押さえた場合における仮処分と滞納処分との関係は、次のとおりである。

(1) 仮処分債権者は、差押登記の抹消を請求することはできない(保全法第58条、第64条参照)が、本案の債務名義に基づいて、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行を行うことができる(保全法第64条参照)。

(2) 仮処分債権者は、本案の債務名義に基づき、処分禁止の登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行を行うことができるから、差押えに基づく換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わないものとする(保全法第64条参照)。

(その他の仮処分と滞納処分との関係)

20 係争物に関する仮処分(保全法第23条第1項)のうち、13から19までに掲げた以外の仮処分がされた財産を差し押さえた場合における仮処分と滞納処分との関係は、次のとおりである。

(1) 仮処分債権者が、本案の債務名義に基づいて、強制執行をした場合においても、滞納処分による差押えは効力を失わない。

(2) 当該仮処分の効力は、滞納処分による換価によって消滅しないから、差押えに基づく換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わないものとする。

(注) 上記の仮処分には、滞納者名義の土地につき第三者が所有権に基づいて立入禁止の仮処分をする場合及び滞納者の所有建物につき第三者が賃借権に基づいて占有使用妨害禁止の仮処分をする場合等がある。

(差押え後に仮処分が執行された場合における滞納処分と仮処分との関係)

21 滞納処分による差押え後に係争物に関する仮処分(保全法第23条第1項)が執行された場合、処分禁止の仮処分等差押えに対抗することができない仮処分の効力は、滞納処分による換価によって消滅する(執行法第59条第3項参照)。ただし、仮処分債権者が、本案において係争物に係る実体上の所有権を主張しているときは、本案の帰すうが定まるまでの間は換価を行わないものとする。
  なお、建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分等係争物に係る権利の処分を禁止する効力を有しない仮処分については、滞納処分による換価によって効力が消滅しない場合があることに留意する。

(仮差押えの準用)

22 仮処分を受けた動産の差押え、仮処分を受けた動産以外の財産の差押え、仮処分を受けた財産に対する差押えの通知及び仮処分を受けた財産に対する差押えの解除については、4及び6並びに9から11までに定めるところに準じて行う。

(仮処分解放金の差押え)

23 仮処分の執行の停止のため又は既にした仮処分の執行の取消しのため、仮処分命令の決定書の記載に従い仮処分債務者が供託した金額(以下第140条関係において「仮処分解放金」という。保全法第25条)の差押えは、次により行うものとする。

(1) 一般の仮処分に基づく仮処分解放金(以下第140条関係において「一般型仮処分解放金」という。)が供託された場合には、仮処分債権者が滞納者であるときは供託金還付請求権を、仮処分債務者が滞納者であるときは供託金取戻請求権を、それぞれ差し押さえる。

(2) 詐害行為取消権(民法第424条第1項)を保全するための仮処分に基づく仮処分解放金(以下第140条関係において「特殊型仮処分解放金」という。)が供託された場合には、民法第424条第1項の債務者(以下第140条関係において「詐害行為の債務者」という。)が滞納者であるときは供託金還付請求権(保全法第65条)を、仮処分債務者が滞納者であるときは供託金取戻請求権を、それぞれ差し押さえる。

(注)

1 供託書中の「被供託者」欄に仮処分債権者が記載されている場合には一般型仮処分解放金に係る供託と、仮処分債権者以外の者が記載されている場合には特殊型仮処分解放金に係る供託と判断して差し支えない(平成2.11.13付民四第5002号法務省民事局長通達参照)。

2 一般型仮処分解放金の供託は、所有権留保付売買契約における代金債務の不履行による目的物の引渡請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分及び譲渡担保契約における金銭債務の不履行による担保目的物の引渡請求権保全のための仮処分等に基づいて行われる。

3 特殊型仮処分解放金が供託された場合には、仮処分債権者は供託金還付請求権を有しない(保全法第65条参照)。

(仮処分解放金の取立て)

24 23により供託金還付請求権又は供託金取戻請求権を差し押さえた場合においては、次により取り立てるものとする(平成2.11.13付民四第5002号法務省民事局長通達参照)。

(1) 一般型仮処分解放金に係る供託金還付請求権を差し押さえた場合において、仮処分債権者の本案訴訟の勝訴が確定したとき又は勝訴判決と同一内容の和解又は調停が成立したときは、供託所に対して供託金の払渡しを請求することができる。この場合においては、供託物払渡請求書に、確定判決の正本及びその確定証明書(民事訴訟規則第48条参照)又は和解調書、調停調書等のほか、仮処分の被保全権利と本案の訴訟物の同一性を証する書面(仮処分申立書、仮処分命令決定書等をいう。以下(2)から(4)までにおいて同じ。)を添付する(民事訴訟法第91条第3項、保全法第5条参照)。

(2) 一般型仮処分解放金に係る供託金取戻請求権を差し押さえた場合においては、仮処分の本案判決の確定前に仮処分の申立てが取り下げられたとき又は仮処分債権者の本案訴訟の敗訴が確定したときは、供託所に対して供託金の払渡しを請求することができる。この場合においては、供託物払渡請求書に、仮処分の申立てが取り下げられたことを証する書面又は本案判決の正本及びその確定証明書のほか、仮処分の被保全権利と本案の訴訟物との同一性を証する書面を添付する。

(3) 特殊型仮処分解放金に係る供託金還付請求権を差し押さえた場合においては、次により取り立てるものとする。

イ 仮処分の執行が保全法第57条第1項《仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し》の規定により取り消され、かつ、本案訴訟の判決が確定した後に仮処分債権者が詐害行為の債務者の有する供託金還付請求権に対して強制執行をしたときは、執行裁判所から支払証明書の交付を受け、供託所に対して供託金の払渡しを請求することができる(保全法第65条)。この場合においては、供託物払渡請求書に当該支払証明書を添付する。

ロ 仮処分債権者が供託金還付請求権に対する強制執行の申立てを取り下げたときは、供託所に対して供託金の払渡しを請求することができる。この場合においては、供託物払渡請求書に、本案判決の正本及びその確定証明書のほか、仮処分の被保全権利と本案の訴訟物との同一性を証する書面及び仮処分債権者の強制執行の申立てが取り下げられたことを証する書面を添付する。

(4) 特殊型仮処分解放金に係る供託金取戻請求権を差し押さえた場合において、本案の勝訴判決の確定前に仮処分の申立てが取り下げられたとき又は仮処分債権者が本案訴訟で敗訴したときは、供託所に対して供託金の払渡しを請求することができる。この場合においては、供託物払渡請求書に仮処分の申立てが取り下げられたことを証する書面又は本案判決の正本及びその確定証明書のほか、仮処分債権者が本案訴訟で敗訴した場合においては仮処分の被保全権利と本案の訴訟物の同一性を証する書面を、それぞれ添付する。

担保の差押え

25 保全法第32条第3項《保全異議の申立てについての決定》、第38条第1項《事情の変更による保全取消し》、第39条《特別の事情による保全取消し》等の規定により仮差押え又は仮処分の取消しのための担保として金銭又は有価証券が供託されているとき(同法第4条)は、滞納者の有する供託物取戻請求権を差し押さえることができる。