換価財産の取得

1 法第116条第1項の「換価財産を取得する」とは、買受人が滞納者から換価財産を承継取得することをいう(第89条関係7参照)。

権利移転の時期 

2 換価財産の権利移転の時期は、買受人が買受代金の全額を納付した時である(法第116条第1項)。
 なお、おおむね次に掲げる財産については、それぞれに掲げる要件を満たさなければ権利移転の効力が生じない。

  • (1) 鉱業権又は特定鉱業権の移転については鉱業原簿又は特定鉱業原簿への登録(鉱業法第60条、大陸棚特別措置法第32条第1項第1号)
  • (2) 特許権、実用新案権若しくは意匠権又はこれらについての専用実施権の移転については特許原簿、実用新案原簿又は意匠原簿への登録(特許法第98条第1項、実用新案法第26条、第18条第3項、意匠法第36条、第27条第4項)
  • (3) 商標権及びその専用使用権の移転については商標原簿への登録(商標法第35条、第30条第4項)
  • (4) 育成者権若しくは回路配置利用権又はこれらについての専用利用権の移転については品種登録簿又は回路配置原簿への登録(種苗法第32条第1項、半導体集積回路配置法第21条第1項)
  • (5) 電話加入権の移転については、NTTの承認(電気通信事業法附則第9条第1項、旧公衆電気通信法第38条第1項)
  • (6) 農地又は採草放牧地の所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃貸借又はその他の使用及び収益を目的とする権利の移転については、農業委員会の許可(農地法第3条第1項、第6項)
  • (7) 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするためのこれらの土地の所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃貸借又はその他の使用及び収益を目的とする権利の移転については、都道府県知事又は農林水産大臣が指定する市町村の長の許可(農地法第5条第1項、第3項)
  • (8) 定置漁業権及び区画漁業権の移転については、都道府県知事の許可(漁業法第26条第1項)

危険負担の移転の時期

3 買受人が買受代金の全額を納付した場合は、その時に換価財産の権利が移転するから、換価財産の換価に伴う危険負担もその時に買受人に移転する。したがって、換価財産の買受人から買受代金の納付を受ける前において、その財産上に生じた危険(例えば、焼失、盗難等)は、滞納者が負担する。また、換価財産の買受人から買受代金の納付があった後において、その財産上に生じた危険は、その財産の登記の手続の既未済又は現実の引渡しの有無にかかわらず、買受人が負担する。
 なお、2の(1)から(8)までに掲げる一定の要件を満たさなければ権利移転の効力が生じない財産については、当該要件が満たされ、その権利が移転した時に、換価財産の換価に伴う危険負担が買受人に移転する。

徴収したものとみなす

4 法第116条第2項の「徴収したものとみなす」とは、徴収職員が買受代金を受領したときは、その限度において、滞納者の換価に係る国税の納税義務を消滅させることをいう。