見積価額の意義

1 法第98条第1項の「見積価額」は、著しく低廉な価額による公売を防止し、適正な価額により売却するための売却価額の最低額を保障する機能を有するものであって(法第104条第1項参照)、差押財産等の公売又は随意契約による売却に当たって税務署長が決定する。

公売財産の評価

2 公売財産の評価は、財産の所在する場所の環境、種類、規模、構造等、その財産の特性に応じ、「取引事例比較法」、「収益還元法」、「原価法」その他の評価方法を適切に用いるとともに、次に掲げる事項に留意して行う(法第98条第1項前段参照)。

(1) 公売財産について、例えば、不動産の地目、地積、種類、構造、床面積等について現況と登記簿上の表示が異なる場合であっても、現況のまま行うこと。この場合において、公売によって消滅又は新たに成立する権利があるとき(法第125条、第127条等参照)は、これを適切に考慮すること。

(2) 公売財産の市場性、収益性、費用性その他の公売財産の価格を形成する要因を適切に考慮し、その財産の時価に相当する価額(消費税及び地方消費税相当額を含んだ価額をいい、以下第98条関係において「基準価額」という。)を求めること。

(注) 上記の「基準価額」は、公売財産を直ちに売却する場合に想定される現在価値であって、その財産の種類、性質などにより市場性が劣ること等による固有の減価(以下「市場性減価」という。)を適切に反映させることに留意する。

(注) 「取引事例比較法」、「収益還元法」及び「原価法」は、不動産評価の重要な指針となっている国土交通省の「不動産鑑定評価基準」(平成14年7月3日全部改正)に定められている評価方式である。

見積価額の決定

3 公売財産の見積価額は、その財産の評価額に基づき税務署長が決定する。この場合においては、差押財産を公売により強制的に売却するためのものであることを考慮しなければならない(法第98条第1項後段参照)。

(1) 見積価額は、差押財産等の基準価額から公売の特殊性を考慮した減価(以下第98条関係において「公売特殊性減価」という。)を控除して決定すること。ただし、買受人に対抗することができる公売財産上の負担があるときは、その負担に係る金額を更に控除して決定すること(第95条関係17(5)参照)。

(2) 上記(1)の「公売特殊性減価」は、公売には通常の売買と異なることによる特有の不利な要因として、次に掲げるような公売の特殊性があることから、基準価額のおおむね30%程度の範囲内で減価を行うこと(平成5.8.31東京地判、平成6.2.28東京地判、平成9.7.11東京高決、平成10.2.16東京高判参照)。

イ 公売財産は、滞納処分のために強制的に売却されるため、いわば因縁付財産であり、買受希望者にとって心理的な抵抗感があること。

ロ 公売財産の買受人は、公売財産の種類又は品質に関する不適合についての担保責任等を追及することができず(法第126条、民法第568条)、また、原則として買受け後の解約、返品、取替えをすることができない上、その財産の品質、機能等について買受け後の保証がなく、税務署長は公売した不動産について引渡義務を負わないほか、公売手続に違法があった場合は一方的に売却決定が取り消されること。

ハ 公売の日時及び場所等の条件が一方的に決定され、買受希望者は原則として建物についてその内部を事前に確認することができないなど公売財産に関する情報は限定され、公売の開始から買受代金の納付に至るまでの買受手続が通常の売買に比べて煩雑であり、また、買受代金は、その全額を短期間に納付する必要があること。

(3) 見積価額の決定及び変更に当たっては、鑑定人による鑑定評価額、公売財産の精通者の意見等を参考とすることができる(法第98条第2項参照)。

鑑定人による評価

(必要と認めるとき)

4 法第98条第2項の「必要と認めるとき」とは、公売財産が不動産、船舶、鉱業権、骨とう品、貴金属、特殊機械等である場合において、その価額が高価又は評価困難と認められるとき、公売財産の見積価額について紛争を生ずるおそれがあると認められるとき等、税務署長が鑑定人に評価させ、又は精通者の意見等を聴くことが適当であると認めるときをいう。

(鑑定人に対する評価の委託)

5 法第98条第2項の規定に基づき鑑定人に公売財産の評価を委託する場合には、市場性減価を適切に反映させた基準価額を求めることに留意する。

(鑑定人の評価と見積価額の決定との関係)

6 法第98条第2項の「その評価額を参考とすることができる」とは、単純に、鑑定人の評価額をもって見積価額とすることなく、税務署長が、その評価額を参考として見積価額を決定することをいう。