第3節 財産の換価

第1款 通則

換価執行決定を取り消さなければならない場合

(2以上の参加差押えに基づく換価執行決定がされた場合)

1 2以上の参加差押えに基づき換価執行決定をした場合において、そのうちの一部の参加差押えのみを解除したときは、換価執行決定を取り消す必要はない。

(消滅しない権利)

2 令第42条の3第1項第3号の「旧差押えが解除される前に当該旧差押えに係る不動産を換価したとすれば消滅する権利で、新差押えに係る不動産の換価に伴い消滅しないもの」には、旧差押え(換価同意行政機関等の滞納処分による差押えをいう。以下この項において同じ。)の登記と参加差押え(2以上の参加差押えがある場合には、そのうち最も先にされたもの)の登記の間に設定された用益物権等(その用益物権等の設定前に換価により消滅する質権、抵当権、先取特権、留置権、買戻権又は担保のための仮登記がある場合におけるその用益物権等を除く。第89条関係9参照)が該当し、旧差押えの登記と参加差押えの登記の間に設定された抵当権等の担保権は、該当しない。

(特定参加差押えに係る滞納処分費)

3 法第89条の3第1項第3号の「特定参加差押えに係る滞納処分費」とは、特定参加差押え(換価執行決定に係る参加差押えをいう。以下同じ。)に係る国税の滞納処分費のうち、その特定参加差押えに係る財産についての滞納処分費をいう(法第10条、第10条関係2〔例3〕参照)。

(金銭的価値が失われたとき)

4 特定参加差押不動産の金銭的価値が全く失われたときは、法第89条の3第1項第3号に該当するものとして取り扱う。

(生活の窮迫)

5 令第42条の3第2項の「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」とは、滞納者(個人に限る。)の特定参加差押財産の換価をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態になるおそれのある場合をいう。

換価執行決定を取り消すことができる場合

(その他の理由)

6 法第89条の3第2項第1号の「その他の理由」とは、特定参加差押えに係る国税に優先する他の国税、地方税又は公課の交付要求が解除されたこと、特定参加差押えに係る国税に優先する債権が弁済されたこと、特定参加差押不動産の改良等によりその価額が増加したこと等をいう。

(参加差押超過による取消し)

7 法第89条の3第2項第1号に該当することにより換価執行決定を取り消す場合におけるその取消しに係る財産は、その超過する価額に相当する範囲を超えないものとし、特定参加差押不動産が不可分物である場合には、その換価執行決定は取り消さないものとする。

(適当な財産を提供した場合)

8 法第89条の3第2項第2号の「適当な財産を提供した場合」は、第79条関係9と同様である。

(三回公売等)

9 法第89条の3第2項第3号の「三回公売に付し」、「入札等がなかった場合」、「その他の事情」又は「更に公売に付しても買受人がないと認められ、かつ、随意契約による売却の見込みがないと認められるとき」は、第79条関係10から第79条関係13までと同様である。

(換価執行決定の取消しを相当と認める事由)

10 令第42条の3第3項の「その他これらに類するものとして換価執行税務署長が換価執行決定の取消しを相当と認める事由があるとき」とは、おおむね次に掲げるときをいう。

(1) 国税に関する法律の規定により換価することができない期間(第89条関係6参照)が終了するまでに長期間を要すると認められるとき。

(2) 換価執行税務署長(換価執行決定をした税務署長をいう。以下この項において同じ。)が特定参加差押えに係る国税につき納付受託をしたとき(通則法第55条)。

(3) 次に掲げる場合において、換価執行税務署長が換価執行決定を取り消すことを相当と認めるとき。

イ 換価同意行政機関等が納税の猶予をしたとき。

ロ 換価同意行政機関等の処分に対する不服申立て又は訴訟が提起された場合において、その争点が差押財産の帰属など、換価執行税務署長の参加差押えの違法事由となり得るものであるとき。

換価執行決定の取消し後の交付要求の効力

(交付を受けているとき)

11 令第42条の3第4項の「交付要求書等の交付を受けているとき」には、換価執行行政機関等が令第42条の2第1項の規定により交付要求書等の引渡しを受けているときが含まれる。

(交付要求書等の引渡しを要しない場合)

12 換価執行決定が取り消されたことによって効力が消滅する交付要求に係る交付要求書は、差押えの効力を生ずべき参加差押えをした行政機関等に引き渡す必要はない(令第42条の3第4項、第5項参照)。