納税義務の成立

(会社)

1 法第35条第1項の「会社」とは、株式会社又は持分会社をいい(会社法第2条第1号)、相互会社(保険業法第2編第2章第2節参照)は含まれない。

(同族会社の判定)

2 法第35条第1項の「同族会社」に該当するかどうかの判定は、滞納者と会社の株主又は社員の有する株式の数、出資の金額若しくは議決権の数又は滞納者と会社の社員の数によって、法人税法第2条第10号《同族会社の定義》の同族会社に該当するかどうかにより行うものとする。
 なお、法第35条の株主又は社員は、株主名簿、社員名簿の記載等にかかわらず、実質上の株主又は社員をいう。

(出資)

3 法第35条の「出資」とは、持分会社の持分をいう。

(徴収すべき国税に不足すると認められるとき)

4 法第35条第1項の「徴収すべき国税に不足すると認められるとき」の判定は、第22条関係4と同様である。ただし、判定の対象となる滞納者の財産には、その同族会社の株式又は出資は含まない。
 なお、不足するかどうかの判定の時期は、第33条関係1と同様である。

(買受人がない場合)

5 法第35条第1項第1号の「買受人がない」とは、滞納処分による再度の換価をした場合において、売却決定を受けた者がないとき及び売却決定が取り消されたときをいう。

(持分会社の持分の譲渡制限)

6 持分会社の持分は、会社法第585条《持分の譲渡》の規定により、他の社員の全員(業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員の全員)の承諾がなければ譲渡できないから、例えば、換価前に社員のうち1人(業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員のうち1人)でも換価による持分の譲渡に反対の意思表示をした場合は、法第35条第1項第2号に該当する。

(株券が発行されていない場合)

7 法第35条第1項第2号の「株券の発行がないため、これらを譲渡することにつき支障があること」とは、株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社(会社法第214条参照)について、株券の作成及び交付がされていないために、株式を差し押さえて換価することにつき支障があることをいう。
 なお、この場合においては、次のことに留意する。

(1) 合理的な期間内に株券が発行される(会社法第215条参照)見込みがあるとき及び株式の申込証拠金領収証等の書面を株券に準じて差し押さえて換価できるとき(第56条関係15参照)は、法第35条第1項第2号の事由に当たらないものとして取り扱うこと。

(2) 株券が発行されていない場合において、その株式を差し押さえた上で、その取立権に基づき株券の発行及び交付請求権を行使したにもかかわらず、指定した期限までに会社が株券の発行及び交付をしないときは、法第35条第1項第2号の事由に当たること。

納税義務の範囲

(納付すべき国税)

8 法第35条第1項の「納付すべき国税」には、所得税法第142条第2項《純損失の繰戻しによる還付》(同法第166条において準用する場合を含む。)又は法人税法第80条第10項《欠損金の繰戻しによる還付》(同法第144条の13第13項において準用する場合を含む。)若しくは地方法人税法第23条第1項《欠損金の繰戻しによる法人税の還付があった場合の還付》の規定により還付した金額に係る還付加算金(通則法第58条第1項)があったときは、その還付加算金のうち修正申告又は更正によって減少する還付金の額に相当する所得税額又は法人税額若しくは地方法人税額に対応する部分の金額が含まれる(通則法第19条第4項第3号ハ、第28条第2項第3号ハ参照)。

(申告等があった日)

9 法第35条第1項の「還付の基因となつた申告、更正又は決定があつた日」とは、還付金の額に相当する国税を減少させる修正申告又は更正があった場合において、還付の基因となった申告、更正又は決定があった日をいう。
 なお、修正申告又は更正により納付すべき国税が還付金の額を超えることとなった場合には、その超えることとなった国税の額に相当する部分の国税の法定納期限は、当該国税の本来の法定納期限である。

(1年以上前)

10 法第35条第1項の「1年以上前に取得したものを除く」とは、法定納期限の1年前の応当日以前に取得したものを除くことをいい、応当日の当日に取得したものも第二次納税義務の対象から除かれる。この場合の応当日については、通則法第10条第2項《期限の特例》の規定は適用されない。
 なお、滞納者が租税特別措置法第70条の7第1項《非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除》又は第70条の7の5第1項《医療法人の持分に係る経済的利益についての贈与税の納税猶予及び免除》の規定による納税の猶予を受けた贈与税を滞納している場合には、当該贈与税に係る法第35条の規定による第二次納税義務の適用に当たっては、当該贈与税に係る贈与の前に取得したものが第二次納税義務の対象から除かれることに留意する(租税特別措置法第70条の7第14項第7号、第70条の7の5第10項第6号)。

(相続等があった場合の株式等の取得時期)

11 相続等があった場合における法第35条第1項の「取得」の時期は、次による。

(1) 相続により承継された国税と相続により承継した株式又は出資との関係においては、被相続人が株式又は出資を取得した日

(2) 相続人の固有の国税と相続により承継した株式又は出資との関係においては、相続があった日

(3) 合併により承継された国税と合併により承継した株式又は出資との関係においては、合併により消滅した法人が株式又は出資を取得した日

(4) 合併後存続する法人又は合併により設立した法人の固有の国税と合併により承継した株式又は出資との関係においては、合併があった日

(5) 滞納者が、合併後存続する法人又は合併により設立した法人(法第35条第1項の同族会社)の株式又は出資を有する場合において、その株式又は出資の取得が、合併により消滅した法人の株式又は出資を有していたことによるときは、合併があった日

(6) 分割承継法人の固有の国税と当該分割をした法人から取得した株式又は出資との関係においては、分割があった日

(7) 分割承継法人の通則法第9条の3《法人の分割に係る連帯納付の責任》の規定による連帯納付の責任に係る国税と当該分割をした法人から取得した株式又は出資との関係においては、その分割をした法人が株式又は出資を取得した日

(8) 分割承継法人の通則法第9条の3《法人の分割に係る連帯納付の責任》の規定による連帯納付の責任に係る国税と当該分割に係る他の分割をした法人から取得した株式又は出資との関係においては、分割があった日

(徴収できる国税と株式又は出資との関係)

12 法第35条の規定により同族会社に対して第二次納税義務を負わせることができる国税は、その会社の株式又は出資を納税者が取得した日から起算して1年を経過する日以前にその法定納期限があるものに限られる(法第35条第1項)。

(資産及び負債の額の計算)

13 法第35条第2項の「資産の総額」及び「負債の総額」の算定に当たっては、法第32条第1項《納付通知書による告知等》の規定による納付通知書を発する日における貸借対照表又は財産目録を参考とし、債権の回収可能性や債務の発生の確実性等を考慮して、その日における会社の資産及び負債の客観的な価額を算定する。この場合において、上記の納付通知に係る第二次納税義務は、負債に含めない。
 なお、上記の資産及び負債の総額の計算は、納付通知書を発する日の現況によるが、資産及び負債について著しい増減がないなど、特に徴収上支障がない限り、その日の直前の決算期(中間決算を含む。)の貸借対照表、財産目録又は法人税の決議書を参考として行っても差し支えない。

(現物、労務又は信用による出資)

14 法第35条第2項の「出資の数」については、現物、労務又は信用をもって出資の目的とした場合には、出資の評価についての定款による価額又は評価の標準によって、納税者の有する出資の価額を計算し、その価額を現金による出資の価額と同様に取り扱って、出資の数を計算する。