納税義務の成立(第1項関係)

(法人が解散した場合)

1 法第34条第1項の「法人が解散した場合」とは、株主総会その他これに準ずる総会等で解散の日を定めたときはその日が経過したとき、解散の日を定めなかったときは解散決議をしたとき、解散事由の発生により解散したときはその事由が発生したとき、裁判所の命令又は裁判により解散したときはその命令又は裁判が確定したとき、主務大臣の命令により解散したときはその命令が効力を生じたとき、休眠会社がみなし解散となったとき等をいう(会社法第471条、第472条、第641条、第824条、第833条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第148条、中小企業等協同組合法第62条、第82条の13、第106条第4項、宗教法人法第43条第1項、第2項、第81条第1項、会社更生法第178条、第218条等)。ただし、会社法第921条«吸収合併の登記»、第922条«新設合併の登記»、第919条«持分会社の種類の変更の登記»等の規定による解散の登記をしたときは、清算手続が行われないので、「法人が解散した場合」には含まれない。
 なお、上記の解散は、その登記の有無を問わない。

(注)

1 法人が解散しないで事実上解散状態にある場合には、その法人の財産の分配等がされているときでも、法第34条第1項を適用することはできないが、法第39条«無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務»、通則法第42条«債権者代位権及び詐害行為取消権»等の規定を適用できる場合がある。

2 1人の株主が発行済株式の全部を所有する株式会社(以下「一人会社」という。)にあっては、招集手続がなくても、1人の株主の意思決定により解散決議をし得る(昭和44.3.18大阪地判、昭和46.6.24最高判参照)ことから、客観的事実(例えば、事業譲渡をした後に廃業しているような場合)に基づき、招集手続がなくても解散決議をしたものと認定できる場合には、法第34条第1項の「解散した場合」に該当する。また、一人会社と実質的に同様と認められるような株式会社についても、同様である(昭和52.2.14最高判参照)。

(法人に課されるべき国税等)

2 法第34条第1項の「法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税」とは、法人が結果的に納付しなければならないこととなるすべての国税をいい、解散の時又は残余財産の分配若しくは引渡しの時において成立していた国税に限られない。

(分配又は引渡し)

3 法第34条第1項の「分配」とは、法人が清算する場合において、残余財産を株主、社員、組合員、会員等(以下3において「株主等」という。)に、原則としてその出資額に応じて分配することをいい(会社法第504条、第505条、第666条等)、「引渡し」とは、法人が清算する場合において、残余財産を一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第239条《残余財産の帰属》等の規定により処分することをいう(宗教法人法第50条、医療法第56条等)。
 なお、上記の「分配」又は「引渡し」は、法人が解散した後に行ったものに限らず、解散を前提にそれ以前に行った分配又は引渡し(以下第34条関係において「分配等」という。)も含まれる(昭和47.9.18東京地判参照)。

(注) 法人の解散後にその財産を役員、従業員が取得した場合であっても、それらの者が株主等でないときは、「分配」には当たらない。

(徴収すべき額に不足すると認められる場合)

4 法第34条第1項の「徴収すべき額に不足すると認められる場合」の判定は、第22条関係4と同様であり、また、その判定の時期は、第33条関係1と同様である。

納税義務を負う者(第1項関係)

(清算人)

5 法第34条第1項の「清算人」とは、解散法人(合併により解散した法人及び破産手続が終了していない法人を除く。)の清算事務を執行する者で分配等をした者をいい、納付通知書を発する時において清算人でない者も含まれる。
 なお、清算人に就任することを承諾した上、清算事務を第三者に一任している者は、直接に清算事務に関与しなくても法第34条第1項の「清算人」に該当する(昭和52.2.14最高判参照)。

(任意清算の場合)

6 会社法第668条«任意清算における財産の処分の方法»の規定による任意清算の場合には、清算人が置かれないことがあるが、この場合においても、分配等を受けた者については、法第34条第1項の規定が適用される。

納税義務の範囲(第1項関係)

(責めに任ずる)

7 法第34条第1項ただし書の「責めに任ずる」とは、清算人は分配等をした財産の価額を、分配等を受けた者はその受けた財産の価額を、それぞれ限度として第二次納税義務を負うことをいう。

(注) 合名会社等が解散した場合において、清算人及び残余財産の分配等を受けた者が、無限責任社員に該当し、法第33条«合名会社等の社員の第二次納税義務»に規定する第二次納税義務を負う場合には、法第34条第1項の規定は適用されない(法第34条第1項かっこ書)。

(財産の価額)

8 法第34条第1項の「財産の価額」とは、分配等がされた時におけるその財産の価額をいう。

(清算人が2人以上ある場合)

9 清算人が2人以上ある場合において、各清算人がそれぞれ別個に分配等をしたときは、その分配等をした財産の価額を、それぞれその第二次納税義務の限度とするが、清算人が共同行為により分配等をしたときは、その分配等をした財産の価額の全額を、それぞれその限度とする。

(第二次納税義務者相互の関係)

10 同一の分配等に基づく法第34条第1項の第二次納税義務者が2人以上ある場合には、それらの者相互の関係は、次のとおりとする。
 なお、2回以上の分配等が行われ、それぞれの分配等ごとに法第34条第1項の第二次納税義務者がある場合においては、第二次納税義務者の1人につき生じた事由は、異なる回の分配等に基づく第二次納税義務者には、影響を及ぼさない。この場合において、第二次納税義務者による納付又は第二次納税義務者について過誤納金等の充当等があったことにより、主たる納税者の国税が消滅したときは、その主たる納税者の国税につき生じた効果が、他の第二次納税義務者に影響を及ぼす場合があることはもちろんである(第32条関係20参照)。

(1) 第二次納税義務者の1人につき生じた納付、過誤納金等の充当等以外の事由は、他の第二次納税義務者の第二次納税義務には、影響を及ぼさない。

(2) 第二次納税義務者の1人による納付又は第二次納税義務者の1人に過誤納金等の充当等があった場合には、その納付、過誤納金等の充当等による第二次納税義務の消滅が他の第二次納税義務者の第二次納税義務の範囲に含まれている限り、その限度で他の第二次納税義務者の第二次納税義務も消滅する。この場合における「範囲に含まれている」かどうかの判定は、分配等に係る財産の価額を基準として行う。
 なお、分配等に係る財産の価額から第二次納税義務者の限度額を控除した額を超える額につき、他の第二次納税義務者による納付、他の第二次納税義務者に過誤納金等の充当等があったときは、その超える額が、上記の「範囲に含まれている」ことになる。

〔例〕

主たる納税者の国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5,000万円

分配をした財産の価額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,000万円

清算人      甲・・・・・・・・・・・・・・・1,000万円

分配を受けた者 乙・・・・・・・・・・・・・・・・600万円

分配を受けた者 丙・・・・・・・・・・・・・・・・400万円

 上記の例において、例えば、甲が第二次納税義務につき500万円納付したとき、甲の責任は、残額500万円(甲の限度額1,000万円−甲の納付額500万円)となり、各第二次納税義務者の責任の最高限度額は500万円となる。したがって、乙の責任は、100万円減少して500万円となり、丙の責任は400万円のままである。

会社法との関係

(会社法第863条との関係)

11 任意清算中の合名会社又は合資会社が、会社法第670条«債権者の異議»の規定に違反して財産を処分した場合において、その処分が残余財産の分配等に該当するときは、法第34条第1項の規定の適用があるが、その他の処分であるときは、会社法第863条«清算持分会社の財産処分の取消しの訴え»の規定により、その処分の取消しを裁判所に請求することができる。

(会社法第499条等との関係)

12 会社法第499条(中小企業等協同組合法第69条、信用金庫法第63条等において準用する場合を含む。)及び第660条«債権者に対する公告等»の規定は、国税については適用されない(明治38.10.11行判参照)。

(清算結了登記との関係)

13 株式会社等が課されるべき国税又は納付すべき国税を完納しないで清算結了の登記をしても、株式会社等は清算のために必要な範囲においてなお存続し、課されるべき国税又は納付すべき国税の納税義務を負う(大正6.7.24行判参照)。したがって、清算結了の登記がされていても、これらの国税を完納していない場合は、法第34条第1項の規定を適用することができる。

(会社法第473条等との関係)

14 株式会社等が解散し、残余財産を分配等した後において、会社法第473条«株式会社の継続»等の規定により株式会社等を継続した場合には、継続の特別決議によって残余財産の分配等の効果は将来に向かって消滅する。したがって、この継続の特別決議後は、残余財産はなかったことになるから、法第34条第1項の規定による第二次納税義務を負わせることはできない。

納税義務の成立(第2項関係)

(信託が終了した場合)

15 法第34条第2項の「信託が終了した場合」とは、信託法第175条«清算の開始原因»の規定により、次に掲げる事由によって信託が終了し、清算をしなければならない場合をいう。

  • (1) 信託の目的を達成したとき(信託法第163条第1号)。
  • (2) 信託の目的を達成することができなくなったとき(信託法第163条第1号)。
  • (3) 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき(信託法第163条第2号)。
  • (4) 受託者が欠けた場合(受託者が二人以上ある信託については、すべての受託者が欠けた場合)であって、新たな受託者が就任しない状態が1年間継続したとき(信託法第163条第3号、第87条第1項)。
  • (5) 受託者が二人以上ある信託の受託者の一部が欠けた場合において、信託行為の定めによりその欠けた受託者の任務が他の受託者によって行われず、かつ、新たな受託者が就任しない状態が1年間継続したとき(信託法第163条第3号、第87条第2項)。
  • (6) 受託者が信託事務を処理するのに必要と認められるために支出した費用の償還等を受けるのに信託財産が不足している場合等において、一定の手続を行っても費用の償還等を受けられなかったこと又は委託者及び受益者が現に存しないことにより、受託者が信託を終了させたとき(信託法第163条第4号、第52条、第53条第2項、第54条第4項参照)。
  • (7) 信託の終了を命ずる裁判があったとき(信託法第163条第6号、第165条、第166条参照)。
  • (8) 信託財産について破産手続開始の決定があった場合において、当該破産手続が終了したとき(信託法第163条第7号、第175条参照)。
  • (9) 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人等により、共にまだ履行が完了していない信託契約の解除がされたとき(信託法第163条第8号、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項、会社更生法第61条第1項、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項参照)。
  • (10) 信託行為において定めた事由が生じたとき(信託法第163条第9号)。
  • (11) 委託者及び受益者が信託の終了について合意したとき(信託法第164条第1項)。
  • (12) 遺言によってされた受益者の定めのない信託において、信託管理人が欠けた場合であって、信託管理人が就任しない状態が1年間継続したとき(信託法第258条第8項、第3条第2号参照)。

(清算受託者)

16 法第34条第2項の「清算受託者」とは、信託が終了した時以後の受託者をいい、現務の結了、信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済、受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済並びに残余財産の給付に係る職務を行い、信託行為に別段の定めがない限り、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する(信託法第177条、第178条)。

(清算受託者に課されるべき国税等)

17 清算受託者に課されるべき、又は清算受託者が納付すべき国税は、その納める義務が信託法第2条第9項に規定する信託財産責任負担債務となるものに限られるが(信託法第21条第1項参照)、信託が終了した時又は残余財産の給付の時において成立していた国税に限られない。
 なお、信託財産責任負担債務となる国税としては、例えば、次に掲げるものがある。

  • (1) 法人課税信託(集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託等を除いた信託のうち法人が委託者となる信託であって、一定の要件を備えたもの等をいう。法人税法第2条第29号の2参照)に係る法人税(法人税法第4条の2参照)、消費税(消費税法第15条第1項参照)及び所得税(所得税法第6条の2第1項参照)
  • (2) 受益者等(相続税法第9条の2参照)が存しない信託等において課される贈与税及び相続税(同法第9条の4参照)
  • (3) 信託事務を処理するに当たり支払った報酬等に対する源泉徴収に係る所得税
  • (注) 「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう(信託法第2条第9項)。

(給付)

18 法第34条第2項の「給付」とは、信託が終了した時以後に、残余財産を残余財産受益者等(20参照)に、原則として信託行為に定めるところにより給付することをいう(信託法第177条第4号、第181条参照)。

(徴収すべき額に不足すると認められる場合)

19 法第34条第2項の「徴収すべき額に不足すると認められる場合」とは、納付通知書を発する時の現況において、信託財産に属する財産及び清算受託者(特定清算受託者以外の清算受託者に限る。)に帰属する固有財産で滞納処分(交付要求及び参加差押えを含む。)により徴収できるものの価額が、その信託に係る清算受託者に課されるべき又はその清算受託者が納付すべき国税の総額に満たないと客観的に認められる場合をいい、その判定は、滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はないものとする(第22条関係4参照)。
 なお、上記の場合における財産の価額の算定については、平成26・6・27付徴徴3-7「公売財産評価事務提要の制定について」(事務運営指針)に定めるところによるほか、第22条関係4の(1)から(6)までに定めることに留意する。

納税義務を負う者(第2項関係)

(残余財産受益者等)

20 法第34条第2項の「残余財産受益者等」とは、残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者(以下20において「残余財産受益者」という。)及び残余財産の帰属すべき者(以下20において「帰属権利者」という。)をいう。
 なお、第二次納税義務を負う残余財産受益者等には、信託行為において残余財産受益者又は帰属権利者となるべき者として指定された者のほか、みなし帰属権利者(信託行為に残余財産受益者等の指定に関する定めがない場合又はこれらの指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合において、信託行為に定めがあるとみなされることにより帰属権利者となる委託者又はその相続人その他の一般承継人)が含まれる(信託法第182条第1項、第2項)。

(特定清算受託者)

21 法第34条第2項の「特定清算受託者」とは、信託財産責任負担債務となる国税について信託財産に属する財産のみをもって納付する義務を負う清算受託者をいい、残余財産の給付をした清算受託者で納付通知書を発する時において清算受託者でない者も含まれる。
 なお、具体的には次に掲げる場合がこれに該当する。

  • (1) 清算受託者が限定責任信託(信託法第2条第12項)の受託者である場合
  • (2) 清算受託者が当該国税の納付義務の成立後に就任した新たな清算受託者である場合(信託法第76条第2項)
  • (注) 一般に、清算受託者は、信託財産責任負担債務となる国税について信託財産に属する財産だけではなく、自己の固有財産をもって納付義務を履行する責任を負っているが、上記の特定清算受託者は、法第34条第2項に規定する第二次納税義務を負うことにより初めて自己の固有財産をもって国税を納付する義務を負うことになる。

納税義務の範囲(第2項関係)

(責めに任ずる)

22 法第34条第2項ただし書の「責めに任ずる」とは、特定清算受託者は給付をした財産の価額を、残余財産受益者等は給付を受けた財産の価額を、それぞれ限度として第二次納税義務を負うことをいう。

(財産の価額)

23 法第34条第2項の「財産の価額」とは、給付がされた時におけるその財産の価額をいう。

(清算受託者が2人以上ある場合)

24 清算受託者が2人以上ある場合において、各清算受託者がそれぞれ別個に給付をしたときは、その給付をした財産の価額を、それぞれその第二次納税義務の限度とするが、清算受託者が共同行為により給付をしたときは、その給付をした財産の価額の全額を、それぞれその限度とする。

(第二次納税義務者相互の関係)

25 同一の給付に基づく法第34条第2項の第二次納税義務者が2人以上ある場合、又は2回以上の給付が行われ、それぞれの給付ごとに法第34条第2項の第二次納税義務者がある場合には、それらの者相互の関係は、第34条関係10と同様である。