第2章 国税と他の債権との調整

第1節 一般的優先の原則

納税者の総財産

1 法第8条の「納税者の総財産」とは、納税者に帰属する財産で差押えが禁止されているものを除いたすべての財産をいうが、次に掲げる場合には、それぞれに掲げる財産に限定される。

(1) 法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》の規定により、譲渡担保権者を第二次納税者とみなして納税者の国税をその譲渡担保財産から徴収する場合には、その譲渡担保財産

(2) 法第36条第1号《実質課税額等の第二次納税義務》の規定により、国税の賦課の基因となった収益が生じた財産から納税者の国税を徴収する場合には、その財産(取得財産を含む。)

(3) 法第36条第2号《実質課税額等の第二次納税義務》規定により、国税の賦課の基因となった資産の貸付けに係る財産から納税者の国税を徴収する場合には、その財産(取得財産を含む。)

(4) 法第37条《共同的な事業者の第二次納税義務》の規定により、納税者の事業の遂行に欠くことができない重要な財産であって、第二次納税義務者に帰属するものから納税者の国税を徴収する場合には、その財産(取得財産を含む。)

(5) 法第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》の規定により、納税者からの事業譲渡により譲り受けた財産から納税者の国税を徴収する場合には、その財産(取得財産を含む。)

(6) 法第41条第1項《人格のない社団等に係る名義人の第二次納税義務》の規定により、納税者の財産で法律上第二次納税義務者に帰属するとみられる財産から納税者の国税を徴収する場合には、その財産

(7) 通則法第52条第1項《担保の処分》の規定により、物上保証人が提供した担保財産から納税者の国税を徴収する場合には、その財産

(8)限定承認をした相続人が承継した被相続人の国税を徴収する場合には、その相続により取得した財産

別段の定め

2 法第8条の「別段の定」とは、法第2章《国税と他の債権との調整》に規定する事項のうち第9条から第11条まで《強制換価手続の費用等の優先》、第15条から第21条まで《法定納期限等以前に設定された質権の優先等》、第23条《法定納期限等以前にされた仮登記により担保される債権の優先等》及び第26条《国税及び地方税等と私債権との競合の調整》に規定されている事項をいう。

国税の優先徴収

(その他の債権)

3 法第8条の「その他の債権」とは、国税、地方税を除くすべての債権(公課を含む。)で金銭の給付を目的とするものをいう。

(優先徴収)

4 法第8条の「先だって徴収する」とは、納税者の財産が強制換価手続により換価された場合に、その換価代金から国税を優先して徴収することをいう。

国税の優先徴収の例外

(法における優先徴収の例外)

5 法第59条第3項後段及び第4項《動産の前払賃料の優先配当》並びに第71条第4項《自動車等の前払賃料の優先配当等の準用規定》の規定により、これらに規定する前払借賃に相当する債権が国税(法第10条の滞納処分費を除く。)に先立って配当されることがある。

(他の法律における優先徴収の例外)

6 法以外の法律の規定により、国税が地方税、公課その他の債権と同順位又は後順位になる場合として、次のものがある。

(1) 地方税法第14条の4《強制換価の場合の道府県たばこ税等の優先》又は第14条の8《担保を徴した地方税の優先》の規定により、道府県たばこ税、市町村たばこ税又は軽油引取税等の地方税に後れて配当を受けることがある。

(2) 収容貨物が関税法の規定により公売又は随意契約により売却された場合には、同法第85条第1項《公売代金等の充当》の規定により、公売又は随意契約による売却に要した費用、収容に要した費用、収容課金及び関税が国税に優先する。

(注) 上記の場合において、国税に優先する質権又は留置権により担保される債権は、配当を受けることができず、残金があるときに所有者に交付するに先立って交付を受けることができるにすぎない(関税法第85条第2項参照)。

(3) 国税を徴収すべき外国貨物について、関税を徴収するための換価又は交付要求がされた場合には、関税法第9条の10第1項及び第2項後段《徴収の順位》の規定により、当該外国貨物に係る関税が国税に優先する。

公課が徴した担保との関係

7 公課が担保を徴している場合における当該公課と国税との関係は、公課に関する法律が国税に劣後する旨の優先順位を規定している場合であっても、法第2章第3節から第5節まで《国税と被担保債権との調整等》に規定する私債権と国税との関係と同様に取り扱うものとする。