【照会要旨】

 私は、不動産貸付けの事業を営んでおり、青色申告の承認を受けています。本年について、不動産所得の他に給与所得(年末調整済)があります。
 私の本年分の不動産所得については、青色申告特別控除前の所得金額が74万円であるため、租税特別措置法第25の2条第3項第1号の青色申告特別控除(控除額55万円)の規定を適用した場合には、不動産所得の金額は19万円となります。
 給与所得者については、年末調整が行われた給与等以外の所得金額が20万円以下の場合には確定申告書の提出を要しないとのことですので、上記の事実関係を前提とする限り、私は本年分の所得税の確定申告書を提出する必要はないと考えますがいかがでしょうか。

【回答要旨】

 照会者は本年分の所得税の確定申告書を提出する必要があります。

 1か所から給与等の支払を受けている給与所得者については、その年分の給与等の金額が2,000万円以下であり、かつ、その給与等の全部について源泉徴収又は年末調整がされている場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、原則として、所得税の確定申告書を提出する必要はありません(所得税法第121条第1項第1号)。
 上記における「給与所得及び退職所得以外の所得金額」とは、法令の規定により確定申告書の提出又は確定申告書への記載若しくは明細書等の添付を要件として適用される特例等を適用しないで計算した金額をいいます(所得税基本通達121−6)。
 この点、租税特別措置法第25の2条第3項第1号の青色申告特別控除(控除額55万円)の規定は、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人が、帳簿書類に基づいて作成した貸借対照表等を添付した確定申告書を確定申告期限までに提出した場合に限り適用されますので(租税特別措置法第25の2条第6項)、上記「給与所得及び退職所得以外の所得金額」については、当該青色申告特別控除(控除額55万円)の規定を適用しないで計算した金額により判定することとなります。
 ただし、租税特別措置法第25条の2第1項第1号の青色申告特別控除(控除額10万円)の規定は、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人について適用を受けるものとされていますので、上記「給与所得及び退職所得以外の所得金額」については、当該青色申告特別控除(控除額10万円)の規定を適用して計算した金額により判定することとなります。
 したがって、照会者の本年分の「給与所得及び退職所得以外の所得金額」は、租税特別措置法第25の2条第3項第1号の青色申告特別控除適用前、かつ、同法第1項第1号適用後の金額(64万円)となり、その金額は20万円を超えますので、照会者は本年分の所得税の確定申告書を提出する必要があります。

【関係法令通達】

 所得税法第121条第1項第1号、租税特別措置法第25の2条第3項第1号、第6項、所得税基本通達121−6

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。