【照会要旨】

 建築業者A(個人)は、本年元請会社から請け負った青果市場の改修工事中に事故を起こし、同市場に損害を与えたため、元請会社は同市場に対して1,500万円の損害賠償金を支払うこととなりました。
 Aは、元請会社にその損害賠償金の一部負担金として400万円を支払うこととなりましたが、その念書には「翌年4月以降4年間の分割払。ただし、1年を2期に分け9月末、3月末までに各50万円を支払う」旨の記載があります。
 この場合、Aの事業所得の金額の計算上、その損害賠償金を必要経費に算入すべき年分は、損害賠償金額の合意があった年分又は実際に支払われる各年分のいずれとすべきですか。
 なお、この事故の発生についてAは重過失を負いません。

【回答要旨】

 実際に支払われる各年分の事業所得の必要経費に算入されます。

 業務の遂行に関連して他の者に与えた損害を賠償するための損害賠償金は、その債務が確定したときの必要経費に算入されることとなります。しかし、損害賠償金を年金で支払う場合には、その年金の額は、これを支払うべき日の属する年分の必要経費に算入することとしています(所得税基本通達37-2の2注書)。
 この取扱いは、損害賠償金を年金として支払うこととしている場合、年金は支払期日が到来してはじめて具体的に債務が確定すると解されることから、仮にその総額について当事者間で合意があったとしても、総額を一括して未払金に計上することは認められず、その年金の支払期日が到来する都度、その支払期日の到来した金額を必要経費に算入していくことを明らかにしたものです。
 税務上「年金」の定義は設けられていませんが、一般的には終身年金、扶養料及び地代等と同じ定期金債権の一種で毎年定期的に支給される金銭とされています。また、定期金債権は、ある期間定期的に金銭(又はその他の代替物)の給付を受けることを目的とする債権で、毎期の支分権ではなく基本債権を指しますが、支払総額が確定しているかどうかは問いません。
 このことからすると、「年金」とは、時の経過により支払義務が生じるもので、1年を超える期間にわたってあらかじめ定められた支払日に金銭が支払われるものと解することができます。
 そして、損害賠償金は法律上の損害填補義務の履行であり、1年を超える期間にわたってあらかじめ定められた日に賠償金が支払われるものであるときは、年金として取り扱うべきであると考えられます。
 したがって、本件の損害賠償金は、各年の9月末及び3月末を支払日とする年金であることから、実際に50万円を支払うこととなった日の属する年分の事業所得の必要経費に算入することとなります。

【関係法令通達】

 所得税法第37条、所得税基本通達37-2の2

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。