【照会要旨】

 当社は、従業員の定年を満60歳(以下「旧定年」といいます。)としていましたが、高年齢者安定雇用の確保という社会情勢等を踏まえ、労働協約書等を改定し、定年を65歳まで延長することとしました(以下改定後の定年制度を「本件定年制度」といいます。)。
 当社の退職金制度は、企業内退職一時金と確定給付企業年金から構成されていますが、本件定年制度の導入に併せて、本件定年制度の制定前に入社した従業員のうち、「満60歳を迎えたときに企業内退職一時金が支給されることを前提にマイホームローンや子の教育ローンの返済を計画する等の生活設計をしており、その支給が延長され、不都合が生じること」(以下「本件支給事由」といいます。)を理由として旧定年時に企業内退職一時金の支給を受けることを希望する従業員に対して、旧定年時にその支給を行うこととしました。
 なお、本件定年制度の導入に伴う改正後の確定給付企業年金規約においては、旧定年時に加入員としての資格を喪失したことを給付事由とする一時金(以下「本件一時金」といいます。)の支給を受けることができる(改定後の定年時まで繰り下げることも可能)旨定められています。
 本件希望者に対して、旧定年時に企業内退職一時金及び本件一時金が支払われる場合、これらの一時金については、退職所得として取り扱ってよいでしょうか。

【回答要旨】

 旧定年時に支払われる企業内退職一時金及び本件一時金は退職所得と取り扱って差し支えありません。

 労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その延長前の定年に達した使用人に対しこれまでの勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その支払をすることにつき相当の理由があると認められるものは退職所得となります(所得税基本通達30‐2(5))。
 本件の企業内退職一時金のように、定年延長前に入社した従業員のうち希望者に対して、その個別事情(本件支給事由)を踏まえ、旧定年時に支給するものについては、上記の「相当な理由がある」として退職所得と取り扱っています(令和3年11月11日付東京局文書回答事例「定年を延長した場合に一部の従業員に対してその延長前の定年に達したときに支払う一時金の所得区分について」)。
 また、所得税基本通達30-2(5)の取扱いによる退職手当等が支払われる場合において、当該取扱いによる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入員としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる確定給付企業年金からの一時金は退職所得とみなされます(所得税基本通達31-1(3))。
 本件一時金は、旧定年時に加入員としての資格を喪失したことを給付事由とする一時金ですので、本件一時金も退職所得と取り扱って差し支えありません。

【関係法令通達】

 所得税基本通達30‐2(5)、31−1(3)
 令和3年11月11日付東京局文書回答事例「定年を延長した場合に一部の従業員に対してその延長前の定年に達したときに支払う一時金の所得区分について」

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。