【照会要旨】

 当社は、企業内退職金制度から確定拠出年金制度への移行に当たって、引き続き勤務する使用人の全員を企業型年金加入者としますが、移行日前の勤続期間に係る使用人の退職金資産については資産移換の方法によることについて労使の合意が得られないため、全使用人を対象に打切支給を実施することになりました。
 この場合、引き続き勤務する使用人に対して支払われる一時金は、所得税法上どのように取り扱われますか。

【回答要旨】

 確定拠出年金制度への移行が、中小企業退職金共済制度と同様の手順(全員打切支給・全員加入)によって行われる場合には、退職所得として取り扱われます。

 確定拠出年金制度は外部拠出された掛金が加入者ごとに明確に区分され、その拠出された掛金とその運用収益との合計額を基に給付額が決定されるタイプの年金制度です。そのため、これまでの年金給付額を企業が保障するタイプの年金制度とは、全員加入要件がないなど、その要件等がやや異なっています。
 所得税基本通達30−2(1)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》で定める「移行」とは、企業内退職金制度の対象者全員に打切支給を実施して中小企業退職金共済制度などの外部拠出型の退職金制度へ移行する場合をいい、その給与が退職所得とされるためには、合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要があって支給されるものでなければならないと考えられます(所得税基本通達30−2(1)注1、最高裁昭和58年12月6日判決)。
 したがって、確定拠出年金制度への移行に伴って、使用人の選択によって支払われる一時金は退職所得に当たりませんが、確定拠出年金制度への移行が、中小企業退職金共済制度と同様の手順で、全員打切支給・全員加入となるような場合には、退職所得として取り扱って差し支えありません(所得税法第30条第1項、所得税基本通達30−2(1))。

【関係法令通達】

 所得税法第30条第1項、所得税基本通達30−2(1)、確定拠出年金法第54条

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。