【照会要旨】

 A社会福祉協議会は、B市からの委託を受け、保育士を確保することを目的として、新たに保育所等において保育士として勤務を開始した未就学児を持つ保育士に対し、その未就学児に係る保育所等の利用料の一部を無利子で貸し付ける事業(以下「本件事業」といいます。)を始めました。
 本件事業による貸付金(以下「本件貸付金」といいます。)は、本件貸付金を受けた保育士が、一定の勤務条件の下で保育所等に2年間勤務した場合には、返済を免除することとしておりますので、本件貸付金の返済を免除された保育士には経済的利益が生じます。
 この経済的利益(以下「本件債務免除益」といいます。)は、非課税となりますでしょうか。
 なお、本件貸付金の財源については、A社会福祉協議会がB市から交付を受けた補助金により賄われており、本件貸付金の対象者や債務免除となる基準等については、予めB市が作成した本件事業の実施要綱に定められていますので、A社会福祉協議会の裁量の余地はありません。

【回答要旨】

 本件債務免除益は、非課税とされます。
 所得税法第9条第1項第16号は、地方公共団体等が保育に対する助成を行う事業等により保育所等の利用料等に充てるため支給される金品は非課税とされているところ、本件債務免除益は、金銭を支給するものではありません。
 しかしながら、本件貸付金は保育所等の利用料の一部を貸し付けるものですので、その返済を免除することにより、当初から、保育所等の利用料に充てるための金銭の支給を行ったのと同様と考えられますし、本件貸付金の給付額は、保育所等の利用料の一部とされていますので、実際にかかった利用料を超えることもありません。
 したがって、本件債務免除益は、保育所等の利用料に充てるため支給されるものであり、その額も相当なものということができます。
 また、本件債務免除益は、社会福祉協議会が貸与した貸付金について債務免除を受けるものですが、B市の補助金を財源としており、貸与先や債務免除となる基準等については、B市が作成した本件事業の実施要綱に定められており、社会福祉協議会の裁量は入りませんので、本件債務免除益は、B市が助成を行う事業により生ずる経済的利益と認められます。
 以上を踏まえれば、本件債務免除益は、地方公共団体等が保育に対する助成を行う事業等により保育所等の利用料等に充てるため支給されるものといえますので、非課税と取り扱って差し支えありません。

【関係法令通達】

 所得税法第9条第1項第16号

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。