【照会要旨】

 当社は、住宅建築に係る構造設計等を主な業務としていますが、この度、従業員の高度な知識の習得を目的として、一級建築士等の当社が指定する資格の取得を希望する従業員(役員を除きます。)に対し、専門学校等の授業料等の資格取得に必要な費用に充てるための社内奨学金制度を設けることとしました。
 本制度では、制度の利用を希望した従業員のうち当社が承認した者に対して、専門学校等に当社が授業料等を直接払い込むことにより奨学金(以下「本件奨学金」といいます。)を貸与することとしています。
 本件奨学金は無利息で、貸与を受けた従業員は、資格取得後、一定期間当社で勤務することにより、その勤務期間に応じて全部又は一部の返済を免除されることになっており、免除を受けた従業員の給与が減額されることもありません。
 この場合、奨学金の返済を免除された従業員が受ける経済的利益(以下「本件経済的利益」といいます。)は、学資に充てるため給付される金品(所得税法第9条第1項第15号)に該当し、非課税として取り扱ってよいでしょうか。

【回答要旨】

 本件経済的利益については、非課税として取り扱って差し支えありません。

 学資に充てるため給付される金品(以下「学資金」といいます。)については、給与その他対価の性質を有するものを除き、非課税とされています(所得税法第9条第1項第15号)。
 ここでいう学資金とは、一般に、学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので、かつ、その目的に使用されるものをいうものとされ、学資金には、金品として給付される場合だけでなく、金銭を貸与し、その後に一定の条件によりその返済を免除する場合の経済的利益も含むものとされています。
 また、「給与その他対価の性質を有するもの」については非課税とされる学資金から除かれますが、給与所得者がその使用者から受ける学資金であっても、その学資金が通常の給与に加算して給付されるものであって、法人の役員や使用人の親族等の一定の者の学資に充てるもの以外のものであれば、「給与その他対価の性質を有するもの」に該当しないものとして、非課税とされています。
 本件奨学金は、使用者が、専門学校等において資格を取得するために従業員が直接必要とする費用を専門学校等に直接払い込むことにより貸与するものですので、学術を習得するための資金であり、かつ、その目的に使用されるものであるといえ、その返済を免除したことによる本件経済的利益については、学資金に該当するものと考えられます。
 そして本件経済的利益については、その利益を受けた従業員の給与が減額されることなどもないことから通常の給与に加算して給付されるものであると認められ、従業員のみを対象としていることから「給与その他対価の性質を有するもの」にも当たらないものと考えられます。
 したがって、本件経済的利益は、「給与その他対価の性質を有するもの」に該当しない学資金に該当し、非課税として取り扱って差し支えありません。

【関係法令通達】

所得税法第9条第1項第15号、所得税基本通達9−14

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。