【照会要旨】

 当社(3月決算法人)は、X0年3月に3階建てのアパートを取得しましたが、このアパートについては、「居住用賃貸建物」に該当するものとして、その取得に係る消費税額はX0年3月期に対応する課税期間の消費税の申告上、仕入税額控除の対象となりませんでした。
 ところで、当社は、X2年1月に、このアパートの一部(1階部分)において民泊サービス(住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業)を開始する計画としているところ、以後、1階部分は住宅として貸し付けるものではなくなりますので、仕入税額控除が制限されていたアパートの取得に係る消費税額の一部を、X2年3月期に対応する課税期間の申告において仕入税額控除の対象とすることはできないでしょうか。

【回答要旨】

 仕入税額控除が制限されていたアパートの取得に係る消費税額の一部については、一定の方法により計算した金額をX2年3月期に対応する課税期間の仕入れに係る消費税額に加算することにより、仕入税額控除の対象とすることになります(居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整)。

(理由)
 事業者が国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象となりません(居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限)。
 ただし、この制限により仕入税額控除の対象とならなかった課税仕入れ等の税額については、その居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間(以下「第3年度の課税期間」といいます。)の末日までの間にその居住用賃貸建物を非課税となる住宅の貸付け以外の貸付けの用(以下「課税賃貸用」といいます。)に供した場合又は譲渡した場合には、仕入控除税額の調整を行うこととなります。
 具体的には、その居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に一定の方法により計算した割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額を、第3年度の課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の仕入れに係る消費税額に加算することになります(居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整)。
 「民泊サービス」とは、一般に、住宅の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することをいい、これは非課税となる住宅の貸付け以外の貸付けである「施設の貸付け」に当たることから、居住用賃貸建物の一部を民泊サービスの用に供した場合は、「居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合」に該当します。
 したがって、照会の場合において、民泊サービスを第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の末日までに開始した場合には、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整の適用対象となります。

<調整計算の例> 第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の仕入控除税額に加算

  • 居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額:500万円
  • 居住用賃貸部分の賃料合計:180万円
  • 課税賃貸用(民泊サービスの用)に供した部分の賃料:20万円

○第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の仕入控除税額に加算する消費税額=
図

(注)調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の末日までの間をいいます。

【関係法令通達】

消費税法第30条第10項、第35条の2、消費税法施行令第53条の2第1項、消費税法基本通達6−13−4

注記
 令和5年10月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。