賃借人が新リース会計基準(企業会計基準第34号)に基づき、所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「所有権移転外リース取引」をいいます。)における使用権資産について資産計上した場合において、使用権資産の計上価額とリース料総額(対価の額)が異なることとなりますが、仕入れに係る消費税額の控除を適用するための帳簿要件は満たしているでしょうか。
仕入れに係る消費税額の控除の適用に当たって、帳簿の摘要欄等にリース料総額を記載している場合や、使用権資産の計上価額からリース資産の譲受けの対価の額を算出するための資料を作成し、整理の上綴って保存している場合など、リース料総額(対価の額)が明らかとなる場合には、その仕入れの帳簿要件を満たしていると考えられます。
(理由等)
(1) 新リース会計基準(注)に基づく会計処理
新リース会計基準においては、借手は、リース負債について、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値により算定された額をリース負債として計上することとされています。また、使用権資産(借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産)として、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額を計上することとされています(リース会計基準第33・34項、リースに関する適用指針(企業会計基準適用指針第33号)第18項)。
なお、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、
借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法
利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法のいずれかの方法が認められています(リースに関する適用指針第40項)。
(2) 消費税法上の規定
消費税法では、仕入れに係る消費税額の控除を適用する場合の帳簿に係る記載要件があります(法30
)。消費税法上の取扱いにおいては、賃借人が賃貸人からリース資産の引渡しを受けた日に、当該資産の売買があったものとして、リース料総額をリース資産の譲受けの支払対価の額として仕入れに係る消費税額の控除をする必要があります。
(3) (1)の会計処理と(2)の規定との調整による消費税法上の取扱い
会計処理においては、リース会計基準に基づき処理することとなるため、会計帳簿には消費税における課税仕入れに係る支払対価の額(リース料総額)が記載されないことになります。
このため、帳簿の摘要欄等にリース料総額(対価の額)を記載するか、会計上のリース資産の計上価額から消費税における課税仕入れに係る支払対価の額を算出するための資料を作成し、整理の上綴って保存することなどにより、帳簿においてリース料総額(対価の額)を明らかにする必要があります。
(注)2024年9月13日に企業会計基準第34号(以下「新リース会計基準」といいます。)が公表されました。
新リース会計基準は、金融商品取引法の適用会社等において2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されることされていますが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から当該リース会計基準を適用できることとされています。
消費税法第30条第7項、第8項
注記
令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。