【照会要旨】

 被相続人甲は、生前、信託銀行との間で、自己を委託者兼受益者、その信託銀行を受託者、信託財産を非上場会社の株式(以下「本件株式」といいます。)、甲の死亡後は子である乙を受益者とする内容の信託契約(以下、この契約に基づき設定される信託を「本件信託」といいます。)を締結していました。
 今回、甲が死亡したことにより、乙は本件信託の受益者となった後、本件信託の終了に伴って信託財産である本件株式を取得しました。
 このとき、乙が、甲の相続に係る相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに、本件株式をその発行会社に譲渡する場合、乙は、租税特別措置法第9条の7第1項《相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例》に規定する特例(以下「みなし配当特例」といいます。)及び同法第39条第1項《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する特例(以下「相続税額の取得費加算の特例」といいます。)の適用を受けることはできますか。
 なお、本件信託は、所得税法第13条第1項本文《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》の適用を受ける、いわゆる受益者等課税信託に該当します。
 また、甲の相続に係る相続税の申告において、乙には納付すべき相続税額が生じています。

【回答要旨】

 乙は、みなし配当特例及び相続税額の取得費加算の特例の適用を受けることができます。

(理由)
 乙は、被相続人甲の死亡によって本件信託の受益者となったことから、本件信託の信託財産に属する資産である本件株式を遺贈により取得したものとみなされ、その取得につき相続税が課されることになりますので(相法9の226)、乙が本件信託の終了に伴って取得した本件株式の譲渡は、相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の発行した株式の譲渡(措法9の71、391)に該当します。
 したがって、乙は、みなし配当特例及び相続税額の取得費加算の特例の適用を受けることができます。

【関係法令通達】

 相続税法第9条の2第2項、第6項
 租税特別措置法第9条の7第1項、第39条第1項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。