【照会要旨】

 甲は、平成21年中に取得した土地(A土地)について、令和4年度税制改正による改正前の租税特別措置法(以下「旧措法」といいます。)第37条の9第1項《平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の課税の特例》(以下「先行取得土地等の特例」といいます。)に規定する先行取得土地等として所轄税務署に届出書を提出していました。
 その後、甲は平成30年に他の事業用の土地(B土地)の譲渡について先行取得土地等の特例を適用し、その譲渡所得の金額の計算上、繰延利益金額の控除を受けています。
 今回、A土地を譲渡しましたが、その譲渡所得について租税特別措置法第35条の2第1項《特定期間に取得した土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除》に規定する特例(以下「1,000万円控除の特例」といいます。)の適用を受けることはできますか。

【回答要旨】

 A土地の譲渡について1,000万円控除の特例の適用を受けることができます。
 なお、B土地の譲渡について先行取得土地等の特例の適用を受けたことによりその譲渡所得の計算上控除を受けた繰延利益金額に相当する金額については、A土地の譲渡に係る譲渡所得の計算上、その取得価額から控除する必要があります。

(注)1,000万円控除の特例と先行取得土地等の特例の重複適用が制限されているのは、事業用土地等(B土地)の譲渡であり、先行取得土地等(A土地)の譲渡について1,000万円控除の特例を適用することについて制限は設けられていません。

(参考)先行取得土地等の特例の概要

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う個人が、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に、国内にある土地等の取得をし、かつ、その取得をした日の属する年の翌年3月15日までにその取得をした土地等(先行取得土地等)につき一定の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合において、その取得をした日の属する年の12月31日後10年以内に、その個人の所有する事業の用に供している他の土地等(事業用土地等)の譲渡(1,000万円控除の特例などの適用を受けるものなどを除きます。)をしたときは、その事業用土地等に係る利益金額から繰延利益金額(注)を控除した金額に相当する金額をその事業用土地等の譲渡による譲渡所得の金額とすることとされていました(旧措法37の91)。
 この特例は令和4年度税制改正により廃止されましたが、事業用土地等の譲渡についてこの特例の廃止前にその適用を受けていた場合は、先行取得土地等の譲渡に係る譲渡所得の計算については従前どおりこの特例の適用による効力が生じることとされています(令和4年改正法附則3213)。

(注)「繰延利益金額」とは、その事業用土地等の譲渡に係る利益金額の100分の80(この適用に係る先行取得土地等が平成22年1月1日から同年12月31日までの間に取得をされたもののみである場合には、100分の60)に相当する金額(先行取得土地等の取得価額の合計額を限度とします。)をいいます。

【関係法令通達】

 租税特別措置法第35条の2
 令和4年法律第4号による改正前の租税特別措置法第37条の9、令和4年法律第4号附則第32条第13項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。