甲は、昨年に死亡した乙から相続した乙の自宅であったA家屋の敷地を譲渡するため、本年12月に売買契約を締結しました。
また、売買契約の締結に当たり、「当該土地上の建物を来年2月26日までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す。」旨の特約条項を売買契約書に記載しました。
甲は、契約日ベースで本年分において確定申告を行った場合、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることができますか。
なお、A家屋は地震に対する安全基準等に適合している家屋ではありません。
甲は、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることはできません。
(理由)
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例は、被相続人居住用家屋とその敷地等を相続又は遺贈により取得し、その家屋の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後に、その家屋の敷地等を譲渡した場合、又は、
その家屋とその敷地等を譲渡し、その譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15 日までの間にその家屋の全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合には、適用を受けることができることとされています。
ところで、その敷地等の譲渡の時期、すなわち、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、それらの資産の引渡しがあった日によるところですが、納税者の選択により、契約の効力発生の日(契約締結日)によること(契約日ベース)も認められています(所基通36−12)。
したがって、納税者が選択したそれぞれの譲渡の時期を判定の基礎として、本特例要件が充足されているかを判断することとなります。
そのため、契約日ベースで申告する場合には、売買契約の締結時又は売買契約の締結日の属する年の翌年2月15 日までに建物の取壊し等を了している必要があることから、本事例において、甲は、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることはできません。
租税特別措置法第35条第3項
所得税基本通達36−12
租税特別措置法関係通達35−9の4
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。