【照会要旨】

 甲は、昨年に死亡した乙から相続した乙の自宅であったA家屋とその敷地を譲渡するため、本年6月に売買契約を締結しました。
 なお、売買契約の締結に当たり、買主から更地にしてほしい、との要望があったため、「当該土地上の建物を7月までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す。」旨の特約条項を売買契約書に記載しました。
 甲は、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることができますか。

【回答要旨】

 甲がA家屋を取り壊した場合、甲は、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることができます。

(理由)
 乙の自宅であったA家屋とその敷地を相続により取得した甲が、A家屋の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後に、A家屋の敷地を譲渡した場合には、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることができます。
 また、資産の譲渡の時期(譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)は、原則として、資産の引渡しがあった日によるものであるため(所基通36−12)、引渡しがあった日の属する年分の譲渡(引渡し日ベース)として申告する場合には、引渡時までに被相続人居住用家屋が取り壊されたものであれば、その敷地等の譲渡は対象譲渡に該当することとなります。
 そのため、本事例のように、売買契約の締結時には建物が存在していたとしても、引渡時には現に建物が取り壊され、敷地のみの譲渡となる場合には、租税特別措置法第35条第3項第2号に該当し、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることができます。

(注)1 敷地の引渡後に家屋の取壊しを行う場合については、A家屋の譲渡が租税特別措置法第35条第3項第1号に該当するものであれば、特例の適用を受けることができます。

2 令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋の譲渡又は被相続人居住用家屋とともにする被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡については、被相続人居住用家屋がその譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15 日までの間にその全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合であれば、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用対象とされました。

【関係法令通達】

 租税特別措置法第35条第3項
 所得税基本通達36−12

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。