甲は、自己の所有するA土地(長期保有資産 時価31,000万円)を乙の所有するB土地(時価31,000万円)と交換しました。その後、甲は、その交換をした年と同一年中に保証債務の履行のためB土地を30,000万円で譲渡し、保証債務26,000万円をその譲渡代金から支払いましたが、これについての求償権の行使は不能です。
なお、甲及び乙の交換については、B土地の乙の所有期間が1年未満であったことから、所得税法第58条の特例の適用はありません。
この場合、保証債務の履行のために譲渡したB土地の損失の金額27,000万円(30,000万円(譲渡価額)-26,000万円(求償権行使不能額)-31,000万円(取得費))は、A土地の譲渡所得の金額と通算することができますか。
保証債務の履行のためにした資産の譲渡により生じた損失金額は、他の資産の譲渡益の範囲で通算できます。したがって、照会の場合には長期譲渡所得の金額は2,450万円となります。
(注)
1 譲渡所得の金額(所法64の適用がないとした場合)
A土地 31,000万円 − | 1,550万円=29,450万円 | …長期譲渡所得の金額 |
(譲渡価額の5%とする) | ||
B土地 30,000万円 − | 31,000万円=△1,000万円 | …短期譲渡所得の金額 |
2 回収不能金額の算定
次のうち最も小さい金額が回収不能金額となります。
26,000万円(実際の回収不能額)…回収不能金額
28,450万円(保証債務履行前の合計所得金額)
28,450万円(保証債務履行前の譲渡所得金額)
3 保証債務を履行した場合の譲渡所得の計算
(1) 保証債務の履行による回収不能額 26,000万円
(2) B土地の譲渡所得(短期譲渡所得)の金額 △27,000万円
収入金額 30,000万円
取得費 31,000万円
保証債務の履行による回収不能額 26,000万円
譲渡所得(短期譲渡所得)の金額(
-
-
) △27,000万円
(3) A土地の譲渡所得(長期譲渡所得)の金額
31,000万円 - 1,550万円 = 29,450万円
(4) 通算後の譲渡所得(本件の場合A土地に係る長期譲渡所得)の金額
29,450万円−27,000万円 = 2,450万円
B土地の譲渡により生じた損失の額27,000万円は、A土地の譲渡所得(長期譲渡所得)の金額29,450万円から控除(通算)することができますので、A土地の譲渡所得(長期譲渡所得)の金額は2,450万円となります。
所得税法第58条、第64条第2項
所得税法施行令第180条第2項
所得税基本通達64-2の2
租税特別措置法第31条第1項、第32条第1項
租税特別措置法関係通達31・32共-2
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。