【照会要旨】

 債務者の債務を第三者が引き受けることにした場合、債務者と第三者(引受人)との間の契約には各種の態様があると聞いていますが、その場合の印紙税の取扱いについて説明してください。

【回答要旨】

 債務の引受けというのは、債務者の債務を承継的に第三者に移転する契約をいいます。一般に行われている債務の引受契約は、債権者甲、債務者乙、引受人丙の三者間で行われますが、乙の意思に反しない限り甲と丙の間でも契約ができるものになっています(民法第474条第2項参照)。したがって、甲、乙、丙の三者間の契約書及び甲、丙間の契約書はすべて第15号文書(債務の引受けに関する契約書)として取り扱われます(基通別表第一第15号文書の3)。
 債務者と引受人との間の契約については各種のものがありますので、その内容により印紙税の取扱いを説明しますと次のようになります。

(1) 債務者と引受人との間で債権者の承諾を条件とする債務引受契約を結ぶもの
  一般に、債務者と引受人の間においても、債権者の承諾を停止条件とする債務引受契約を有効に締結できるとされていますから、あらかじめ債権者の承諾を受けている場合又は債権者の承諾を条件とする場合は、債務者と引受人間の契約であっても第15号文書に該当することになります。

(2) 債務の履行引受け
  債務者と引受人の間で、引受人が債務者の債務を履行することを約する契約(いわゆる債務の履行引受け契約)は、引受人が債務者に対して債務を負担するにとどまり、直接債権者に対して義務を負担するものではありませんから、第15号文書には該当せず、他の課税文書にも該当しません。

(3) 引受人の債務の消滅を条件とした債務の履行引受け
  引受人が、債務者に対し債務を負担している場合に、債務者の履行を引き受ける代わりに、債務者に対する債務を消滅させることにすれば、これは、目的の変更による更改ないし代物弁済契約(予約)になります。
 すなわち、その契約によって引受人の債務を消滅させる代わりに、債務者の債務についてその履行を行うという債務を成立させるのであれば、これは更改契約になります。
 更改契約書は、新たに成立する債務の内容によって印紙税の課否が決まることになりますが、成立する債務は課税物件表のいずれの課税事項にも該当しませんから、結局、この場合の文書は、課税文書には該当しないことになります。
 一方、その契約によって、引受人が債務者の有する債務を履行した場合には、債務者が引受人に対して有する債務と相殺することにしたものであれば、これは将来の相殺という一種の代物弁済的な契約になります。したがって、この場合には、債務の支払を相殺の方法によって行うことを約することになり、支払方法を定める変更又は補充契約書に該当することになります。
 相殺契約の場合には、それぞれの債務の内容により課税文書の所属が決まることになりますが、ご質問の場合には、一方の債務は課税事項とは認められませんから、結局、引受人が債務者に有している債務の内容により課税文書の所属が決定されることになり、例えば、不動産の売買代金であれば第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)ということになります。

【関係法令通達】

 印紙税法基本通達別表第一 第15号文書の3

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。