【照会要旨】

 当社は解散法人であるところ、清算中に終了する事業年度である当期の終了の時において、実態貸借対照表(法人の有する資産・負債の価額(時価ベース)で作成された貸借対照表)における資産及び負債の価額が同額(残余財産が零)となります。
 当期について、解散法人の残余財産がないと見込まれる場合の損金算入制度(法法59まる4)の適用に際し、その事業年度終了の時において残余財産が零となる(すなわち、債務超過の状態にない)場合であっても、法人税法第59条第4項の「残余財産がないと見込まれるとき」に該当し、その清算中に終了する事業年度(当期)前の各事業年度において生じた欠損金額(期限切れ欠損金額)を基礎として計算した金額に相当する金額をその事業年度(当期)の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができますか。

【回答要旨】

 貴社は、期限切れ欠損金額を基礎として計算した金額に相当する金額をその事業年度(当期)の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。

(理由)

1 法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、期限切れ欠損金額を基礎として計算した金額に相当する金額を、その清算中に終了する各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することが規定されています(法法59まる4)。
 当該規定の趣旨は、平成22年度税制改正において、解散した法人に対しても各事業年度の所得の金額を課税標準として法人税を課税するものとしたことにより、残余財産がないにもかかわらず、債務免除等によって所得金額が生ずることで税額が発生する場合があることから、期限切れ欠損金の損金算入を認めたものであると解されます。

2 この場合の「残余財産がないと見込まれるとき」について、法人税基本通達12−3−8⦅残余財産がないと見込まれることの意義⦆では、解散した法人が当該事業年度終了の時において債務超過の状態にあるときは、これに該当することが明らかにされています。
 また、「残余財産がないと見込まれるとき」の判定は、清算を前提とした場合に、残余財産の分配が見込まれるかを判定するものであると解され、債務超過の状態にあるときに限らず、残余財産が零となるときも「残余財産がないと見込まれるとき」に該当すると考えられます。

3 したがって、本件の場合、期限切れ欠損金額を基礎として計算した金額に相当する金額をその事業年度(当期)の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。

【関係法令通達】

 法人税法第59条第4項
 法人税基本通達12−3−8

注記
 令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。