【照会要旨】

 当社は、国内株式市場で上場している内国法人であり、展開する事業の一つにA事業があります。このたび、当社は、いわゆるスピンオフの手法でA事業を独立させるため、単独新設分割型分割(以下「本件分割」といいます。)により、新たにA社を設立する予定です。当社は、その分割対価資産としてA社株式の交付を受け、本件分割の日において、剰余金の配当により当社株主に当社株式の保有割合に応じた数のA社株式を交付する予定です。
 ところで、当社は、X国のY銀行に当社株式を預託し、Y銀行が当社株式を裏付けした証券(以下「本件証券」といいます。)を発行してX国の株式市場に上場させることで、X国からの資金調達をしています。このため、当社の株主名簿には、当社株式を預託しているX国のY銀行が記載されていますが、当社とY銀行と本件証券保有者との関係では、本件証券保有者が当社株式に係る諸権利(配当の受領権、株主総会の議決権等)を有しており、Y銀行は、これらの諸権利を行使する本件証券保有者の代理人という関係となっています。
 この場合、単独新設分割型分割の適格要件の一つとして、いわゆる株式あん分交付要件がありますが、当社の株主名簿に記載された株主であるY銀行にA社株式を交付すれば、実際の配当の受領権を有する本件証券保有者にA社株式をあん分して交付したものとして取り扱い、株式あん分交付要件を満たすと解してよいでしょうか。
 なお、本件証券保有者には、本件分割に伴い、保有する本件証券の数に応じてY銀行からA社株式に係る諸権利が付与されることとされています。

【資本関係図】
資本関係図

【回答要旨】

 本件証券保有者の代理人であるY銀行に貴社の発行済株式等の総数のうちに占めるY銀行の有する貴社の株式の数の割合に応じてA社株式が交付されていれば、貴社の株式の実際の権利者である本件証券保有者にA社株式があん分して交付されているものとして取り扱い、本件分割は株式あん分交付要件を満たすと解して差し支えありません。

(理由)

1 単独新設分割型分割の適格判定における株式あん分交付要件について

(1) 単独新設分割型分割の適格要件の一つとして、株式あん分交付要件があり、具体的には、その分割において分割対価資産として分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式(出資を含みます。以下(1)において同じです。以下「分割承継法人等の株式等」といいます。)が交付される場合、当該分割承継法人等の株式等が分割法人の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める当該分割法人の各株主等の有する当該分割法人の株式の数(出資にあっては、金額)の割合に応じて交付されるものであることとされています(法法2十二の十一括弧書)。
 なお、この株式あん分交付要件については、分割法人の株主等へ交付する分割承継法人の株式の数が分割法人の株式の保有数に対応していない場合には、その分割前の資本関係に異動が生ずることとなるため、適格要件の一つとされていると考えられます。

(2) ところで、分割対価資産として分割承継法人等の株式等の交付を受ける分割法人の株主等に、株主名簿に記載された者に代わって他に当該分割承継法人等の株式等に係る権利を有する者がいる場合において、株主名簿に記載された者又は実際に権利を有する者のいずれを株式あん分交付要件の判定の基礎となる「株主等」とするかについて、疑義が生ずるところです。
 この点、株式あん分交付要件の判定における株主等についても、株主名簿に記載された者の代わりに実際の権利者がいる場合には、その実際の権利者を「株主等」として、株式あん分交付要件の充足性を判断することが適当と考えられます。

2 本件分割の株式あん分交付要件の充足性
 貴社の株主の権利関係において、本件証券保有者が貴社の株式に係る諸権利(配当の受領権、株主総会の議決権等)を有していることからすれば、Y銀行は、本件証券保有者の代理として貴社の株主名簿に記載されており、貴社の株式に係る実際の権利者は本件証券保有者と判断することが相当と考えられます。
 この点、上記1を踏まえると、本件分割においては、本件証券保有者を株主等として、株式あん分交付要件の充足性を判断することが適当であると考えられるところ、Y銀行に貴社の発行済株式等の総数のうちに占めるY銀行の有する貴社の株式の数の割合に応じたA社株式が交付されることで、本件証券保有者にはA社株式が直接交付されませんが、貴社の株式に係る諸権利(配当の受領権、株主総会の議決権等)の行使を本件証券保有者に代わってY銀行が行使するという関係下でY銀行がA社株式の交付を受けていれば、実際の権利者である本件証券保有者にA社株式が交付されているものとして取り扱って差し支えないものと考えられます。
 また、上記1(1)の株式あん分交付要件の「分割法人の株主等へ交付する分割承継法人の株式の数が分割法人の株式の保有数に対応していない場合には、その分割前の資本関係に異動が生ずることとなる」という点について、本件分割によりA社株式がY銀行に貴社の発行済株式等の総数のうちに占めるY銀行の有する貴社の株式の数の割合に応じて交付されていれば、他の貴社の株主の権利関係に影響を及ぼすものではなく、本件分割前の貴社と貴社の株主との間の資本関係に異動が生ずるものではありません。加えて、本件証券保有者には、本件分割に伴い、保有する本件証券の数に応じてY銀行からA社株式に係る諸権利が付与されることとされていますので、各本件証券保有者間で不平等に取り扱われているとはいえません。
 以上のことからすると、本件証券保有者の代理人であるY銀行に貴社の発行済株式等の総数のうちに占めるY銀行の有する貴社の株式の数の割合に応じてA社株式が交付されていれば、貴社の株式の実際の権利者である本件証券保有者にA社株式があん分して交付されているものとして取り扱い、本件分割は株式あん分交付要件を満たすと解して差し支えありません。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の11

注記
 令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。