【照会要旨】

 A社はB社を被合併法人とする吸収合併を行うことを予定しています。なお、A社及びB社の発行済株式の全部はいずれもP社に保有されています。この吸収合併は、100%グループ内での合併であり、また、B社は、資産評定後の資産の取得価額の合計額が負債の額の合計額に満たない、いわゆる債務超過の法人であることから、B社の株主であるP社に対してA社株式その他の資産を何ら交付しない無対価合併(以下「本件合併」といいます。)とすることを予定しています。
 本件合併後、P社は保有するA社株式の全部をX社に譲渡することを予定しているため、本件合併が適格合併に該当するためには、法人税法第2条第12号の8ハに規定する共同で事業を行うための合併の要件に該当する必要がありますが、本件合併は当該要件に該当しないことから、非適格合併に該当します。
 この場合に、本件合併において、資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額はどのように算定することとなりますか。

図|合併株式譲渡

【回答要旨】

 資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額はないものとされます。

(理由)

  1.  非適格の無対価合併により被合併法人から資産又は負債の移転を受けた場合の資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額は、次の(1)又は(2)の区分に応じてそれぞれ次のとおりとなります(法法62の812、法令123の1016)。
    1. (1) 非適格の無対価合併が、被合併法人と合併法人の株主構成が等しい関係(法令4の32二ロ)がある無対価合併である場合において、一定の資産評定(法規27の163)が行われているときは、次のイの金額がロの金額を超える場合のその超える部分の金額が資産調整勘定の金額となり、ロの金額がイの金額を超える場合のその超える部分の金額が差額負債調整勘定の金額となります(法法62の812、法令123の1016一、法規27の1634)。ただし、次の(2)に該当する場合には、(2)によることとなります。
    2. イ その移転を受けた事業に係る営業権(独立取引営業権(※1)を除きます。)のその一定の資産評定による価額
    3. ロ その移転を受けた事業に係る将来の債務(退職給与債務引受額(※2)又は短期重要債務見込額(※3)の基因となる債務を除きます。)でその履行に係る負担の引受けをしたものの額
    1. (2) 非適格の無対価合併により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の取得価額(上記(1)の一定の資産評定を行っている場合には、上記(1)イの営業権の価額を含みます。)の合計額がその無対価合併により移転を受けた負債の額(退職給与債務引受額及び短期重要債務見込額に係る負債調整勘定の金額及び上記(1)ロの金額を含みます。)の合計額に満たない場合には、資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額はないものとされます(法令123の1016二)。
    2. (※1) 独立取引営業権とは、営業権のうち独立した資産として取引される慣習のあるものをいいます(法令123の103)。
    3. (※2) 退職給与債務引受額とは、退職給与債務引受けに係る金額として算定される一定の金額をいいます(法法62の82一、法令123の107)。
    4. (※3) 短期重要債務見込額とは、移転を受けた事業に係る将来の債務で、その履行がその無対価合併の日からおおむね3年以内に見込まれるものについて負担の引受けをした場合のその債務の額として算定される一定の金額をいいます(法法62の82二、法令123の108)。
  2.  また、非適格の無対価合併で被合併法人と合併法人の株主構成が等しい関係(法令4の32二ロ)がある場合の合併法人における増加する資本金等の額は、原則として、その無対価合併により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額(資産調整勘定の金額を含みます。)からその無対価合併により移転を受けた負債の価額(負債調整勘定の金額を含みます。)を控除した金額(抱合株式(法法242)がある場合には一定の調整を行います。)となります(令81五ロ)。このため、移転を受けた資産の価額が移転を受けた負債の価額に満たない場合には、増加する資本金等の額はゼロとなります。
  3.  本件合併は、非適格の無対価合併に該当しますが、本件合併によりA社がB社から移転を受けた資産の取得価額の合計額が移転を受けた負債の額の合計額に満たないことから、資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額は、ないものとされます。また、本件合併は、被合併法人であるB社と合併法人であるA社の株主構成が等しい関係(P社がA社及びB社の株式の全部を保有)がある非適格の無対価合併に該当しますが、本件合併により移転を受けた資産の価額から移転を受けた負債の価額を控除した金額はゼロとなることから、本件合併により増加する資本金等の額はゼロとなります。
     なお、その満たない部分の金額は寄附金の額その他その満たない部分の金額の性質に応じた処理となります。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の8ハ、第62条の8第1項〜第3項、第12項
 法人税法施行令第4条の3第2項第2号ロ、第8条第1項第5号、第123条の10第3項、第7項、第8項、第16項
 法人税法施行規則第27条の16第3項、第4項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。