【照会要旨】

 A社は、B社の発行済株式の70%を保有しています。また、A社が発行済株式の全てを保有するC社は、B社の発行済株式の20%を保有しています。それ以外のB社の発行済株式(10%)については、A社及びC社以外の者(以下「その他の株主」といいます。)が保有しています。
 A社は、その他の株主の全てに対して株式売渡請求(会社法179〜179の10)をするためのB社の承認(以下「本件承認」といいます。)を受け、その他の株主が保有するB社株式の全部を取得する予定です。なお、この取得の対価としてA社は金銭を交付します。
 A社は本件承認によりC社が保有するB社株式は取得しませんが、A社が本件承認によりその他の株主が保有するB社株式の全部を取得することは、法人税法第2条第12号の16に規定する株式交換等に該当しますか。
 該当する場合、その株式交換等が適格株式交換等に該当するための要件の1つとして、株式交換等完全子法人の株主に株式交換等完全親法人の株式以外の資産が交付されないこと等とする対価要件(法法2十二の十七柱書き。以下「対価要件」といいます。)がありますが、A社がB社株式の取得の対価として金銭を交付したとしても、この株式交換等は、この対価要件に該当しますか。

図|株式売渡請求

【回答要旨】

 A社が本件承認によりその他の株主が保有するB社株式を取得することは、株式交換等に該当し、本照会の株式交換等は対価要件に該当します。

(理由)

  1.  株式交換等とは、株式交換及び一定の行為(全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求による完全子会社化)により対象法人がその株主である法人との間にその法人による完全支配関係を有することとなることをいいます(法法2十二の十六)。
  2.  上記の一定の行為のうち、株式売渡請求による完全子会社化は、株式売渡請求に係る承認により法令(外国の法令を含みます。以下同じです。)の規定に基づき対象法人の発行済株式等の全部が一の株主等に取得されることとなる場合のその承認をいいます。この発行済株式等からは、株式売渡請求を行う一の株主等又はその一の株主等との間に完全支配関係がある者が有するものを除くこととされています(法法2十二の十六ハ)。
     ここでいう株式売渡請求とは、対象法人の一の株主等がその対象法人の承認を得てその対象法人の他の株主等の全てに対して法令の規定に基づいて行うその対象法人の株式の全部を売り渡すことの請求をいいます。この他の株主等からは、その株式の発行法人(対象法人)及び株式売渡請求を行う法人(一の株主等)との間に完全支配関係がある者を除くこととされています。
  3.  本照会では、A社は、本件承認により、法令の規定に基づきその他の株主が保有するB社株式については取得していますが、C社が保有するB社株式については取得していませんので、「対象法人の発行済株式等の全部が一の株主等に取得されることとなる場合」に該当するのか疑問が生じます。しかしながら、C社はA社との間に完全支配関係がありますので、本件承認によりA社がC社の保有するB社株式を取得しなかったとしても、この株式売渡請求に該当し、本件承認によりA社がその他の株主が保有するB社株式の全部を取得することは、株式交換等に該当します。
     この株式交換等が適格株式交換等に該当するための要件の1つである対価要件の「株式以外の資産」からは、株式売渡請求による対象法人株式の取得の対価として交付される金銭その他の資産が除かれています(法法2十二の十七)。
     このため、本件のように、A社がB社株式の取得の対価として金銭を交付したとしても、対価要件に該当します。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の16、第12号の17

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。