【照会要旨】

 農事組合法人である当法人は、各事業年度の決算の確定の時に組合員に対してその者がその事業年度中に当法人の事業に従事した程度に応じて剰余金を分配することとしております。
 当事業年度においては、当事業年度の決算の確定の時に、当法人を構成する組合員に対して、前事業年度以前に発生した剰余金(以下「前期繰越剰余金」といいます。)の額の減少を伴う剰余金の分配(以下「本件配当」といいます。)を行う予定です。
 この場合、本件配当の原資には前期繰越剰余金が含まれることとなりますが、当法人において本件配当の金額は当事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなりますか。
 なお、本照会に当たっては、次の1から5までのことを前提とします。

1 当法人は、農業協同組合法(以下「農協法」といいます。)第72条の10第1項第2号に規定する農業の経営(以下「農業の経営」といいます。)のみを事業としていること。

2 当法人が前期繰越剰余金の額の減少を伴う剰余金の分配をすることは、当法人の定款に違反するものではないこと。

3 当法人は、当法人の事業に従事する組合員に対し、給料、賃金、賞与その他これらの性質を有する給与の支給を行っていないこと。

4 本件配当は、農協法第72条の31第2項の規定に基づき支出される剰余金の分配であり、その剰余金の分配を受ける個人において、所得税法施行令第62条第2項の規定により配当所得、給与所得及び退職所得以外の各種所得に係る収入金額とされるものであること。

5 前期繰越剰余金は、農業の経営により生じたものであること。

【回答要旨】

 本件配当の金額は、法人税法第60条の2第2号に掲げる金額に該当するため、貴社の当事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなります。

(理由)

1 法人が行う剰余金の分配は、原則として、資本等取引に該当することから各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されませんが(法法22丸3丸5)、協同組合等が各事業年度の決算の確定の時にその支出すべき旨の決議をする次の(1)及(2)の金額については、別段の定めによって、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされています(法法60の2)。

(1) その組合員その他の構成員に対しその者がその事業年度中に取り扱った物の数量、価額その他その協同組合等の事業を利用した分量に応じて分配する金額

(2) その組合員その他の構成員に対しその者がその事業年度中にその協同組合等の事業に従事した程度に応じて分配する金額(以下「従事分量配当金額」といいます。)

2 本件配当は事業に従事した程度に応じて剰余金を分配するものであるため、本件配当の額は従事分量配当金額に該当することが考えられますが、この従事分量配当金額は、その剰余金が農業、漁業又は林業の経営により生じた剰余金から成る部分の分配の額に限られ、固定資産の処分等により生じた剰余金の分配の額はこれに該当しないとされています(法基通14−2−2)。これは、従事分量配当金額が、組合員が協同組合等の営む事業に従事した日数、その労務の内容及び責任の程度等に応じて分配がなされるものの額で、その事業に関する一種の役務提供に対する反対給付の性質を有するものであるところ、固定資産の処分等により生じた剰余金の分配など協同組合等の営む事業と関連しない事業により生じた剰余金の分配の額は、その性質にそぐわないため、従事分量配当金額には該当しないとしているものです。
 そうすると、事業に従事した程度に応じて分配する剰余金の分配が前期繰越剰余金の減少を伴うものであったとしても、その前期繰越剰余金がその協同組合等の営む事業により生じたものであれば、その事業に関する一種の役務提供に対する反対給付の性質に変わりはないため、その前期繰越剰余金を原資とした剰余金の分配の額も従事分量配当金額に該当すると考えられます。

3 以上のとおり、本件配当はその原資に前期繰越剰余金が含まれますが、その前期繰越剰余金は農業の経営により生じたものであるため、本件配当の額は従事分量配当金額に該当します。
 したがって、貴法人は、本件配当の額を当事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなります。

【関係法令通達】

 法人税法第22条第3項、第5項、第60条の2第2号
 法人税基本通達14−2−2

注記
 令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。