宗教法人A神社は、季節ごとの周辺風景を解説する動画を撮影し、その視聴による収入を得ることを目的として、動画配信サービスを行うプラットフォーマーXとの間で、動画コンテンツの使用許諾契約を締結することとなりました。宗教法人A神社は、当該使用許諾契約に基づくライセンスの供与(以下、当該使用許諾契約に基づき供与されるライセンスを「本件ライセンス」といいます。)により、プラットフォーマーXが提供する次の1から3までの役務提供に基づく収入を得ていますが、当該収入の額は、法人税法上の収益事業(無体財産権提供業)に係る収益の額に該当することとなりますか。
1 プラットフォーマーXは、幅広い企業から広告を請け負い、配信を行う動画コンテンツ内にその広告を表示することで広告料収入を得ておりますが、本件ライセンスを受けた動画コンテンツについて広告を表示した際には、その動画コンテンツを視聴した視聴者における広告表示回数に応じて、広告料収入の一定割合を宗教法人A神社に支払うことになっております。
2 プラットフォーマーXは、配信中に視聴者からなされたコメントを動画コンテンツ内に表示するサービスを行っておりますが、そのコメントの表示時間や色、文字数に応じて視聴者から対価を得ることとしております。本件ライセンスを受けた動画コンテンツについてコメントを表示した際には、視聴者から受領した対価の一定割合を宗教法人A神社に支払うことになっております。
3 プラットフォーマーXは、配信中に動画作成者に向けて視聴者からスタンプ等のデジタルコンテンツを送信させるサービスを行っておりますが、その送信するスタンプ等の種類に応じて視聴者より対価を得ることとしております。本件ライセンスを受けた動画コンテンツについて配信システム内でデジタルコンテンツが送信された際には、視聴者から受領した対価の一定割合を宗教法人A神社に支払うことになっております。
照会要旨1から3までに基づき宗教法人A神社が得る収入の額は、収益事業(無体財産権提供業)に係る収益の額に該当します。
(理由)
1 法人税法上、内国法人(人格のない社団等を含みます。)に対しては、各事業年度の所得について法人税を課することとされており(法法3、5)、このうち公益法人等又は人格のない社団等に対しては、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得には法人税を課さないこととされています(法法6)。
したがって、公益法人等又は人格のない社団等に対しては、収益事業から生じた所得にのみ法人税が課されることとなります。
2 法人税法上の収益事業とは、販売業、製造業その他の一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいい(法法2十三)、この一定の事業には無体財産権提供業が含まれています(法令5三十三)。無体財産権提供業とは、その有する工業所有権その他の技術に関する権利又は著作権(出版権及び著作権隣接権その他これに準ずるものを含みます。)の譲渡又は提供を行う事業をいうこととされています(法令5
三十三)。この点、著作権の提供とは、著作物の複製その他著作物の利用の許諾又は出版権の設定をする行為をいうものと解されます。
動画コンテンツは一般的には著作物に該当するところ、公益法人等又は人格のない社団等が、動画配信事業者と動画コンテンツの使用許諾契約を締結し、それに基づいてその動画配信事業者にその動画コンテンツを使用するためのライセンスを供与し、その動画配信事業者からその動画コンテンツの使用に関して収入を得る場合には、その行為は収益事業(無体財産権提供業)に該当し、その行為から生じた所得について法人税が課されることになります。
この点、公益法人等又は人格のない社団等の得る収入が、動画配信事業者がその視聴者から受領した広告表示やスタンプ送信等の対価の一部であり、動画コンテンツ(著作物)の使用に対する直接の対価ではない場合であっても、その広告表示やスタンプ送信などが動画コンテンツ(著作物)の提供に関連する一連の行為であると認められるときは、その収入の額は、動画コンテンツを使用させるためのライセンス(著作権)の提供に係る収益の額、すなわち、収益事業(無体財産権提供業)に係る収益の額に該当すると判断されることになります。
3 宗教法人A神社は、プラットフォーマーXとの間で動画コンテンツの使用許諾契約を締結し、当該契約に基づいて動画コンテンツをプラットフォーマーXに使用させているところ、照会要旨1から3までの行為はいずれも当該契約に基づきプラットフォーマーXが行う動画コンテンツの使用に関連する一連の行為であると認められますので、宗教法人A神社がこれらの一連の行為から得た収入の額は収益事業(無体財産権提供業)に係る収益の額に該当することとなります。
法人税法第2条第13号、第3条、第5条、第6条
法人税法施行令第5条第1項第33号
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。