【照会要旨】

 不動産賃貸業を営む当社(3月決算)は、X1年3月期において消費税法第30条第10項《仕入れに係る消費税額の控除》に規定する居住用賃貸建物(※)を取得し、事業の用に供しました。
 当社は消費税等の経理処理について税抜経理方式を適用していますが、同項の規定によりX1年3月期に対応する課税期間(当社の事業年度となります。)において仕入税額控除ができない当該建物に係る課税仕入れ等の税額に相当する金額は、法人税法上、資産に係る控除対象外消費税額等として損金の額に算入できますか。
 また、当該建物については、取得から2年以内に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供する計画があり、これが実行された後に当社が継続して当該建物を保有する場合には、X3年3月期において仕入れに係る消費税額が調整され(消法35の21)、仮受消費税等の金額から仮払消費税等の金額を控除した金額と納付すべき消費税等の額に差額が生じますが、この差額は益金の額に算入することになりますか。

【回答要旨】

 いずれも照会意見のとおり取り扱われることとなります。

(理由)

  1.  事業者が、国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象とはなりません(消法3010)。
     ただし、この規定の適用を受けた居住用賃貸建物について、その仕入れ等の日から一定期間内に課税賃貸用(非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用)に供した場合や一定期間内に他の者に譲渡した場合には、仕入れに係る消費税額を調整することとされています(消法35の2、以下この調整を「居住用賃貸建物の仕入控除税額の調整計算」といいます。)。
     また、資産に係る控除対象外消費税額等とは、内国法人がその課税期間につき消費税法第30条第1項の規定の適用を受ける場合で、税抜経理方式を適用したときにおける課税仕入れ等の税額とこの税額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額のうち、同項の規定による控除をすることができない金額とこの金額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額でそれぞれの資産に係るものとされています(法令139の45)。
  2.  税抜経理方式を適用する貴社が、消費税の申告に当たり消費税法第30条第1項の規定に基づき仕入税額控除の計算を行う場合において、同項の規定による控除することができない仮払消費税等の額は、控除対象外消費税額等に該当することになります。
     したがって、貴社が取得した居住用賃貸建物に係る仮払消費税等の額は、資産に係る控除対象外消費税額等として、法人税法施行令第139条の4((資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入))第1項から第4項までの規定により、X1年3月期以降の事業年度において、貴社が損金経理した金額のうち一定の金額を損金の額に算入することができます。
  3.  また、ご照会の建物について居住用賃貸建物の仕入控除税額の調整計算が行われた場合には、X3年3月期における控除対象仕入税額が増加するため、仮受消費税等の金額から仮払消費税等の金額を控除した金額と納付すべき消費税等の額に差額が生じますが、当該差額はX3年3月期の益金の額に算入されることになります(平成元年3月1日直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」6)。
     なお、X3年3月期において居住用賃貸建物の仕入控除税額の調整計算が行われた場合であっても、当該計算は資産を取得した課税期間(事業年度)の仕入控除税額を修正するものではなく、また、法人税法上、これに対応して経過した事業年度における処理を修正する規定もないため、X1年3月期に生じた控除対象外消費税額等を遡及して修正する必要はありません。

[参考]

※ 「居住用賃貸建物」とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含みます。)以外の建物であって高額特定資産(注1)又は調整対象自己建設高額資産(注2)に該当するものをいいます。
 なお、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、その全てが店舗である建物など建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。

  1. (注1)「高額特定資産」とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
     また、「調整対象固定資産」とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で消費税等を除いた税抜価格が100万円以上のものをいいます。
  2. (注2)「調整対象自己建設高額資産」とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の100/110に相当する金額等の累計額が1,000万円以上となったものをいいます。

【関係法令通達】

 法人税法施行令第139条の4
 消費税法第2条第1項第16号、第12条の4、第30条、第35条の2
 消費税法施行令第5条
 平成元年3月1日直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」1(14)、6

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。