A社では、付与機関(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)からプライバシーマークの使用許諾を受け、これを広告用資料に使用して、個人情報の取扱いを適切に行う体制を整備している企業であることをアピールしたいと考えています。
ところで、プライバシーマークの使用許諾を受けるまでには、次のような費用が必要となりますが、これらの費用に係る税務上の取扱いはどのようになるのでしょうか。
(注) プライバシーマーク制度の概要は上記付与機関(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)のホームページに掲載されています。
(注)
(理由)
事業者が付与機関等に支払う申請料、審査料等は、当該事業者が個人情報の取扱いを適切に行う体制等を整備していると認められる事業者であることの付与機関等の付与認定を受けることを目的とする費用です。
これらの費用は、次に掲げることからすれば、申請料についてはその支払日の属する事業年度、審査料等については付与機関等からの請求書受領日の属する事業年度において、それぞれ損金の額に算入することになると考えられます。
プライバシーマーク使用料は、付与機関との間で締結したプライバシーマーク付与契約に基づき、付与機関が所有する商標権であるプライバシーマークを2年間使用する許諾を得るために支出する費用です。
したがって、プライバシーマーク使用料は支出の効果が2年間に及ぶものと認められるところ、税法上、支出の効果が1年以上に及ぶ費用のうち一定のものについては、繰延資産に該当することとされており(法2二十四)、当該「一定のもの」に該当すれば本件のプライバシーマーク使用料は繰延資産に該当することとなります。
当該「一定のもの」については、法人税法施行令第14条第1項各号《繰延資産の範囲》に掲げられており、本件のプライバシーマーク使用料は同項第1号から第5号まで、及び第6号イからニまでのいずれにも該当しないことから、同号ホに規定する「イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に該当するかどうかを検討することとなります。
この点、法人税基本通達8-1-10《出版権の設定の対価》の(注)において「他人の著作物を利用することについて著作権者等の許諾を得るために支出する一時金の費用」が法人税法施行令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当することからすれば、同様に他人の商標権の使用許諾を得るために支出する本件のプライバシーマーク使用料も繰延資産に該当すると解することとなります(この場合の償却期間は支出の効果の及ぶ期間、すなわち契約期間の2年となります。)。
ただし、プライバシーマークの使用料は、小規模事業者は5万円、中規模事業者は10万円とされており、いずれも20万円未満ですから、法人税法施行令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》の規定を適用して、その支出の日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
また、大規模事業者(お尋ねのA社)のプライバシーマークの使用料は20万円ですが、この金額は消費税込みの金額ですから、大規模事業者が税抜経理方式によっている場合には、その使用料の額は20万円未満となり、この場合には中小事業者と同様にその支出の日の属する事業年度において損金の額に算入することができることとなります(平成元年3月1日付直法2−1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)の9)。
(注)
付与認定の更新等に要する費用については、更新等に係るものではありますが、その内容は1(1)及び(2)の費用となんら変わるところはなく、税務上も1の(1)及び(2)の費用と同様に取り扱うこととなると考えられます。
法人税法第2条第24号
法人税法施行令第14条、第134条
法人税基本通達8−1−10、8−2−3
平成元年3月1日付直法2−1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。