A社は、得意先であるB社に対して5千万円の貸付金を有していますが、B社は3年ほど前から債務超過の状態となり、その業績及び資産状況等からみても、今後その貸付金の回収が見込まれない状況にあります。
そこで、A社はB社に対して有する貸付金5千万円について書面により債務免除を行うことを予定していますが、これを行った場合、A社のB社に対する貸付金5千万円を貸倒れとして損金算入することは認められますか。
なお、A社とB社との間には資本関係や同族関係などの特別な関係はなく、A社とB社との取引はいわば第三者間取引といえるものです。
当該貸付金については、貸倒れとして損金の額に算入されます。
(理由)
1 御照会の趣旨は、第三者に対して債務免除を行った場合に、その債務免除額は損金の額に算入できるかということかと思われます。この点、法人の有する金銭債権について、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額は、その明らかにされた日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入することとされています(法人税基本通達9-6-1(4))。
この場合の貸倒損失の計上は、金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合の債務免除の取扱いですので、その債務者が第三者であることをもって無条件に貸倒損失の計上ができるというものではありませんが、第三者に対して債務免除を行う場合には、金銭債権の回収可能性を充分に検討した上で、やむなく債務免除を行うというのが一般的かと思われますので、一般には同通達の取扱いにより貸倒れとして損金の額に算入されます。
(注) 第三者に対して債務免除を行う場合であっても、同通達に掲げる場合と異なり、金銭債権の弁済を受けることができるにもかかわらず、債務免除を行い、債務者に対して実質的な利益供与を図ったと認められるような場合には、その免除額は税務上貸倒損失には当たらないことになります。
2 A社の場合、第三者であるB社は債務超過の状態にあり、B社に対する貸付金の免除は、今後の回収が見込まれないために行うとのことですから、当該貸付金については上記1の取扱いにより貸倒れとして損金算入されます。
3 なお、上記1の取扱いの適用に当たっては、次の点に留意する必要があります。
(1) 「債務者の債務超過の状態が相当期間継続」しているという場合における「相当期間」とは、債権者が債務者の経営状態をみて回収不能かどうかを判断するために必要な合理的な期間をいいますから、形式的に何年ということではなく、個別の事情に応じその期間は異なることになります。
(2) 債務者に対する債務免除の事実は書面により明らかにされていれば足ります。この場合、必ずしも公正証書等の公証力のある書面によることを要しませんが、書面の交付の事実を明らかにするためには、債務者から受領書を受け取るか、内容証明郵便等により交付することが望ましいと考えられます。
法人税基本通達9-6-1(4)
注記
令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。