【照会要旨】

 当社(3月決算法人)は、清算中の内国法人であり、×3年3月10日に残余財産の確定をした後、×3年3月20日に残余財産の分配及び清算結了をする予定です。
 当社は、×1年2月1日に、保有していた譲渡損益調整資産に該当する土地及び建物をA社に譲渡しましたが、当社とA社との間には法人税法第2条第12号の7の6に規定する完全支配関係があることから、その譲渡により生じた譲渡損益(土地については譲渡損失額、建物については譲渡利益額。)を繰り延べています。
 このような場合、当社の残余財産の分配及び清算結了を行う日(×3年3月20日)の属する事業年度は存在しないため、当社は、当該残余財産の確定の日の翌日(×3年3月11日)にA社との間における完全支配関係を有しなくなったものとして、×3年3月11日の前日である×3年3月10日の属する事業年度の所得金額の計算において、その繰り延べた譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する額を益金の額又は損金の額に算入することとなりますか。

【回答要旨】

 照会意見のとおりとなります。

(理由)

 内国法人が譲渡損益調整資産を当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に譲渡した場合(以下、その譲渡をした内国法人を「譲渡法人」といいます。)には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額はその譲渡した事業年度の損金の額又は益金の額に算入することとされています(法61の111)。
 この繰り延べた譲渡利益額又は譲渡損失額については、譲渡法人が譲渡損益調整資産の譲受法人との間に「完全支配関係を有しないこととなつたとき」は、当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を譲渡法人の当該完全支配関係を有しないこととなった日の前日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされています(法61の113)。
 ところで、清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定した場合には、当該事業年度開始の日から残余財産の確定の日までが事業年度(以下「最後事業年度」といいます。)となりますが(法141五)、清算中の法人において、この「完全支配関係を有しないこととなつたとき」を残余財産の分配が行われた日と解した場合には、当該残余財産の分配が行われた日は当該清算中の法人の最後事業年度が終了した後の日であるため、当該譲渡利益額又は譲渡損失額を精算する機会が永久に失われることとなり不合理であると考えられます。
 したがって、「完全支配関係を有しないこととなつたとき」を残余財産の確定の日の翌日と解することで、繰り延べた譲渡利益額又は譲渡損失額を貴社の最後事業年度に精算することが相当であると考えられます。

【関係法令通達】

法人税法第2条第12号の7の6、第14条第1項第5号、第61条の11第1項、第3項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。