【照会要旨】

 当社は、国内で小売業を行う合同会社であり、米国親法人の全額出資により設立された完全子会社です。
 日米租税条約第10条第3項(配当免税条項)では、配当を支払う内国法人の「議決権のある株式の50パーセント以上」を米国法人が所有する場合には、この米国法人への配当について免税とされ、所得税の源泉徴収を行う必要がないとのことですが、当社は合同会社であり、株式を発行していないため、米国親法人は、当社の「議決権のある株式」を所有していないと思われます。
 したがって、当社が米国親法人に支払う利益の配当は、配当免税条項の要件を満たさないと考えられますので、当社は当該利益の配当について所得税の源泉徴収をする必要があると解してよいでしょうか。
 なお、米国親法人は、上記の株式所有要件を除き、日米租税条約における配当免税の適用を受けるための要件を全て満たしています。 

【回答要旨】

 貴社が米国親法人に支払う利益の配当については、所得税の源泉徴収をする必要はありません。

 日米租税条約において、親子会社間配当に対して一般の配当よりも軽減した税率や免税を設けたのは、事業活動に係る直接投資としての性格が強い親子会社間の株式投資についてその配当に対する源泉地国における課税を減免することにより、二国間の直接的な投資交流の促進を図ることにあると考えられます。
 この考え方からすると、配当免税条項における「議決権のある株式」の一定割合の所有についての要件は、親法人の子法人に対する支配関係を判定する基準として、親法人が子法人の意思決定権の一定割合を有していることを要求するものであると考えられますが、これは、株式を通じて意思決定権を有する株式会社だけではなく、持分を所有することを通じて意思決定権を取得することができる合同会社にも該当するものと解されます。
 また、合同会社の意思決定は、持分を有する社員(定款で業務執行社員を定める場合には、業務執行社員)の員数に基づいてなされるものとされていますので(会社法590条、591条)、配当免税条項における上記の考え方を踏まえると、米国親法人がその子会社である合同会社の業務執行権を有する社員の員数に占める割合で判定するのが相当と解されます。
 したがって、本件のように合同会社である内国法人が米国親法人の完全子会社である場合には、社員が1人であり、その者が業務執行権を有する社員の100パーセントを占めることから、議決権のある株式の50パーセント以上を所有するという配当免税条項の要件を満たしていると考えられますので、所得税の源泉徴収をする必要はありません。

(注) 租税条約に関する届出を行うことが必要となります。
※ 租税条約の規定に基づき源泉徴収税額の免除を受けるための手続

【関係法令通達】

日米租税条約第10条第3項、会社法第590条、第591条

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。