【照会要旨】

 馬主として登録されている非居住者(以下「非居住者馬主」といいます。)が、その所有馬を国内の調教師に預託し、国内のレースに出走させることにより支払を受ける競馬の賞金等(賞金、諸手当及び賞品)は、所得税法上どのように取り扱われますか。

【回答要旨】

 所得税法上は、非居住者馬主が支払を受ける競馬の賞金等については、恒久的施設(以下「PE」といいます。)の有無にかかわらず、総合課税の対象となります。
 なお、非居住者馬主が租税条約締結国の居住者である場合には、租税条約の規定によりこれと異なる課税関係となる場合があります。

 国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得については、国内源泉所得とされています(所得税法第161条第1項第2号)。
 ところで、非居住者馬主が国内で馬主活動を行うためには、国内で馬主の登録をするとともに、調教師にその所有する競走馬を預託する必要があります。そして、調教師に預託された預託馬については、調教師により厩舎において飼養管理・育成調教され競走に出走するとともに、それ以外の間は育成・休養のために国内の牧場に預けられることとなります。
 また、所得税法上、競走馬は減価償却資産に該当するとともに(所得税法第2条第1項第19号、所得税法施行令第6条第9号イ)、競馬の賞金等に係る所得は、所得税法上「競走馬の保有による所得」とされているところです(所得税法施行令第200条第2項)。
 そうすると、非居住者馬主が取得する賞金等については、国内で管理・育成等をしている競走馬(資産)を国内で開催される競走に出走させることにより得られるものであることから、「国内にある資産の保有により生ずる所得」であると解されます。
 したがって、所得税法上は、非居住者馬主がPEを有するかどうかに関係なく、総合課税の方法により課税されることとなります(所得税法第161条第1項第2号、第164条第1項)。
 なお、非居住者馬主が租税条約の締約国の居住者である場合には、競馬の賞金等は事業所得条項又はその他所得条項(注)のいずれかによることとなりますが、一般に租税条約においては「事業」という用語の包括的な定義を置いておらず、この場合、条約の適用を受ける租税に関する締約国の法令において有する意義を有するものとされています(OECDモデル条約第3条第2項)。
 我が国においては、競走馬の保有に係る所得が事業に該当するかどうかは、競走馬の保有の規模、収益の状況その他の事情を総合勘案して判定することとし、一定の規模を有している場合には事業とすることとしています(所得税基本通達27−7、平15個人課税課情報第6号「競走馬の保有に係る所得の税務上の取扱いについて」)。
 そのため、非居住者馬主の競走馬の保有による所得が事業と認められる場合において、PEを通じて当該事業を行わないとき又はPEを有しないときは日本では課税されず、当該所得が事業と認められない場合には、その他所得条項(注)によりわが国での課税関係の有無を判断し、課税関係が生じる場合には国内法の規定により判断することとなります。

(注) その他所得条項の規定がない条約締結国の居住者に対しては、国内法の規定により課税関係を判断することとなります。

【関係法令通達】

所得税法第2条第1項第19号、第161条第1項第2号、第164条第1項、所得税法施行令第6条第9号、第200条第2項、所得税基本通達27-7、平15個人課税課情報第6号「競走馬の保有に係る所得の税務上の取扱いについて」、OECDモデル条約第3条第2項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。