内国法人A社は、アメリカ、タイ及びイタリアの美術館等から絵画等(絵画、美術工芸品、遺跡の埋蔵品、恐竜の化石等)を借り受け、展覧会等の用に供していますが、これらの絵画等の賃借料の支払に当たって源泉徴収は必要ですか。
なお、絵画等の著作権は、著作者の死亡後70年以上経過しているため、消滅しています。
(注) 海外の美術館等は日本に恒久的施設を有しません。
照会の絵画等の賃借料は、所得税法第161条第1項第11号ハ《国内源泉所得》に規定する使用料(注1)に該当しますので、その支払の際に源泉徴収が必要ですが、支払先の美術館等はいずれも租税条約締結国の居住者等であることから、各国との租税条約の規定(注2)に応じて次のとおりとなります。
アメリカの美術館等に支払うものである場合・・・・・・租税条約上の事業所得条項が適用されるので、我が国の国内に恒久的施設を有しない場合には所得税は課されず、所得税の源泉徴収も要しません。
タイの美術館等に支払うものである場合・・・・・・国内法の規定により源泉徴収を要します。
イタリアの美術館等に支払うものである場合・・・・・・租税条約上の使用料条項が適用され、日伊租税条約に規定された軽減税率による所得税の源泉徴収を要します。
設備の使用料を使用料条項に含めていないもの(アメリカ、オーストラリア、イギリス、ノルウェー、フランス等)・・・・・・事業所得条項が適用され、我が国の国内に恒久的施設がなければ免税となる。
設備の使用料を使用料条項に含めておらず、かつ、事業所得条項からも除外しているもの(タイ)・・・・・・租税条約上特段の規定は存在しない所得(いわゆる明示なき所得)であり、日タイ租税条約においては、当該所得を所得源泉地国においても課税できることとしていること(日タイ租税条約第20条第3項)から、国内法の規定による課税関係となる。
設備の使用料を使用料条項に含めるもの(イタリア、インド、ベトナム、韓国、中華人民共和国等)・・・・・・当該使用料条項に規定する軽減税率により源泉徴収を要する。所得税法第161条第1項第11号ハ、第212条第1項、所得税法施行令第284条第1項、所得税基本通達161−39、各国との租税条約、租税条約等実施特例省令第2条、第9条、第9条の5
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。