【照会要旨】

 当社は、従業員に対する退職一時金の支給について、企業内退職金制度(以下「本件退職金制度」といいます。)のほか、確定給付企業年金制度(以下「本件DB制度」といいます。)を導入しており、その概要は次のとおりです。
《本件退職金制度の概要》
 当社は、当社における勤続年数が3年以上で、かつ、定年(満60歳)又は自己都合により退職した者に対し、退職一時金を支給します。
《本件DB制度の概要》
・ 本件DB制度は、加入者期間が10年以上である加入者(受給権者)が、満60歳に達した後、本件企業を退職したときは、加入者(受給権者)に対し、老齢給付金を年金により支給します。
・ 本件DB制度は、上記の老齢給付金のほか、@加入者期間が3年以上10年未満で本件企業を退職したことにより加入者の資格を喪失した者及びA加入者期間が10年以上で満60歳に達する前に本件企業を退職したことにより加入者の資格を喪失した者に対し、脱退一時金を支給します。
・ 本件DB制度の加入者は、本件企業に使用されなくなった日の翌日に加入者の資格を喪失します。

 当社の従業員Aは、令和×年12月31日に自己都合により退職し、翌年(令和×+1年)1月1日に加入者資格を喪失しました。事務手続の都合上、翌年(令和×+1年)1月に脱退一時金(以下「本件脱退一時金」といいます。)の支払を受け、その後、退職一時金(以下「本件退職一時金」といいます。)の支払を受けています。
 本件退職一時金の収入すべき時期は、その支給の基因となった退職の日(令和×年12月31日)となりますが、本件脱退一時金については、どの年分の収入金額として退職所得の計算をするのでしょうか。

【回答要旨】

 本件脱退一時金は、令和×年の退職所得の収入金額として退職所得の計算を行います。

 所得税法第31条に規定する退職手当等とみなされる一時金の収入すべき時期は、その一時金の支給の基礎となる法令、契約、規程又は規約により定められた給付事由が生じた日によるものとされていますが、居住者が一の勤務先を退職することにより二以上の退職手当等の支払を受ける権利を有することとなる場合には、その者の支払を受ける退職手当等については、これらのうち最初に支払を受けるべきものの支払を受けるべき日の属する年における収入金額として退職所得の計算をする旨定められています。
 そして、勤務先を退職することにより、この勤務先から退職手当等の支払を受けるほか、所得税法第31条各号に掲げる一時金(確定拠出年金法の規定に基づき老齢給付金として支給される一時金を除きます。)の支払者からもこの一時金の支払を受けることとなる場合は、この「居住者が一の勤務先を退職することにより二以上の退職手当等の支払を受ける権利を有することとなる場合」に該当します。
 従業員Aは、貴社を退職することにより本件退職一時金及び本件脱退一時金の支払を受ける権利を有することとなりますので、本件脱退一時金については、本件退職一時金の支払を受けるべき日(令和×年12月31日)の属する令和×年における収入金額として退職所得の計算をすることとなります。
 なお、事務手続の都合により支払の順序は本件脱退一時金が先となるとのことですが、実際の支払の先後は本件退職一時金及び本件脱退一時金の収入すべき時期には影響しません。

【関係法令通達】

 所得税法第30条第1項、第31条第3号、第36条
 所得税法施行令第77条
 所得税基本通達36―10、36―11(1)

注記
 令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。