(新設)
(説明)
措置法第70条の6の4第1項においては、「山林」とは、立木又は土地をいうと規定されている。また、森林法第2条第1項においては、「森林」とは、次に掲げるものをいい、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除くと規定されている。
ところで、平成24年度税制改正において創設された「山林についての相続税の納税猶予」制度は、森林法(昭和26年法律249号)の規定に基づき、森林経営計画について市町村長等の認定を受けること、また、被相続人は生前に当該認定を受けた森林経営計画に従い森林経営を行ってきたことについての農林水産大臣の確認を受けていることなど、森林法の規定に基づく認定や確認が「山林についての相続税の納税猶予」の適用を受けるための前提条件となっていることに鑑みると、措置法第70条の6の4第1項に規定する「山林」は、森林法第2条第1項に規定する「森林」と同義と解するのが相当である。本通達ではこのことを留意的に明らかにした。
したがって、財産評価基本通達において立木として評価するものであっても措置法第70条の6の4第1項に規定する「山林」に該当しないもの(庭園にある立木など)もあれば、財産評価基本通達において立木以外の財産として評価するものであっても同項に規定する「山林」に該当するもの(立竹など)もあることに留意する。
(参考)
(新設)
(説明)
措置法第70条の6の4第1項の適用対象となる同項に規定する特例山林は、林業経営相続人が、自ら経営を行うものであることが要件とされている。ここでいう経営とは、同項においては、施業又は当該施業と一体として行う保護をいうと定義されているが、山林の経営を専業としていない場合や他人に経営の全部又は一部を委託した場合には、自ら経営を行うものに該当するのか疑義があるところである。
ところで、山林についての相続税の納税猶予制度は、森林の多面的機能の発揮、林業再生及び木材供給の拡大のためには、森林の施業の集約化や路網整備等による林業経営の効率化(採算性の向上)・継続確保等を通じた森林整備を推進することが不可欠であり、こうした政策を支援する観点から設けられた制度である。このような政策目的の観点からも、条文の文理上も特に経営の意義を専業に限る必要はないことから、林業経営相続人が会社、官庁等に勤務するなど他に職を有し又は他に主たる事業を有している場合であっても、山林の施業又は施業と一体として行う保護を林業経営相続人が自ら行う限り、経営に該当することを留意的に明らかにした。
(注) 農地等についての贈与税・相続税の納税猶予等の要件である「農業経営を行う者」の意義についても会社、官庁等に勤務するなど他に職を有し又は他に主たる事業を有している場合であっても、その耕作又は養蓄の行為を反復、かつ、継続的に行っている限り、措置法令第40条の6第5項第3号又は第40条の7第2項第1号の規定の農業経営を行う者に該当すると上記と同様に解している(70の4-6、70の6-8参照)。
また、林業経営相続人が経営の全部又は一部を他の者に委託している場合は、自ら経営をしていないことからその旨を留意的に明らかにした。
(注) 措置法規則第23条の8の4第13項第5号イにおいては、特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林について、その経営の全部又は一部を他の者に委託した場合には、納税猶予税額の全部について納期限が到来することとされている。
(新設)
(説明)
措置法第70条の6の4第1項の規定の適用を受けることができる山林は、被相続人から相続又は遺贈により取得したものに限られている。
ところで、遺産の分割には、遺産は特定の相続人が取得し、他の相続人にはその代償としてその遺産を取得した特定の相続人が以前から有する固有財産を与える方法によるものがある。これは一般に遺産の代償分割といわれているものである。
この遺産の代償分割により他の共同相続人の固有財産である山林を取得した場合に、当該山林について同項の規定の適用を受けることができるかどうか疑義があるところであるが、その代償財産として取得した山林は、被相続人から直接相続又は遺贈によって取得したものでないことからその山林は同項の適用対象とはならない。本通達はそのことを留意的に明らかにしたものである。
(注) 特例山林の前提である特例施業対象山林について、措置法第70条の6の4第2項第3号では、「被相続人が当該被相続人に係る相続の開始の直前に有していた山林」とされている。
(新設)
(説明)
担保提供に関する原則は、国税通則法の規定に基づくものであることを留意的に明らかにしたものである。
(新設)
(説明)
担保として必要な財産の価額は、本税のほか猶予期間中の利子税も担保する必要があることを留意的に掲げたものである。
この場合に、担保提供時には「林業経営相続人の死亡の日まで」という未確定の猶予期間に係る利子税を計算することができないことから、必要担保額の計算に当たっては「林業経営相続人の平均余命年数に相当する納税猶予期間中の利子税の額」による取扱いとしたものである。
また、納税猶予税額の計算の基礎となった特例山林の全部が担保提供される場合であっても、同様の取扱いであり、農地等の納税猶予及び非上場株式等の納税猶予と異なり、いわゆる「みなし充足」の取り扱いとならないことを留意的に明らかにしたものである。
(新設)
(説明)
措置法第70条の6の4第1項は、期限内申告に限り適用されるのであるが(ゆうじょ規定も設けられていない。)、本通達では、農地の納税猶予及び非上場株式等の納税猶予における取扱いと同様に、例外的に、修正申告又は更正があった場合でも、その修正申告又は更正が期限内申告書の提出により同項の規定の適用を受けた特例山林の評価誤り又は税額計算誤りのみに基づくものであるときは、当該修正申告又は更正により納付すべき相続税額(附帯税を除く。)については、当初からこの制度の適用があるものとして取り扱うこととしている。
これは、期限内申告に含まれている特例山林の単純な評価誤りや税額の計算誤りのような軽微な原因に基づく増加税額については、納税者の立場を考慮し、納税猶予の適用を認めようとするものである。したがって、修正申告又は更正に基づく税額であっても、当該修正申告又は更正の基因となった事実のなかに当該原因によるもの以外のものが含まれているときは、この取扱いは適用されない。また、これにより納税猶予の適用が受けられるのは、特例山林の評価誤り又は税額の計算誤りによって増加する本税の額に限られ、附帯税の額についてまでは適用されない。
また、これによる納税猶予の適用は、その効果を相続税の申告期限まで遡及することとしていることから延滞税についてはこれを課される余地がない。
なお、これによる納税猶予の適用についても一般の場合と同様に、当該修正申告又は更正による相続税の本税額とその本税に係る利子税の額との合計額に相当する担保の提供が必要であるが、その担保の提供に係る期限は、農地の納税猶予及び非上場株式等の納税猶予における取扱いと同様に、国税通則法第35条第2項の規定による納期限である当該修正申告書の提出の日又は当該更正に係る通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日までとして取り扱うこととしている。
(注)
(新設)
(説明)
措置法第70条の6の4第2項第4号柱書においては、林業経営相続人の要件の1つとして、「被相続人から前項の規定の適用に係る相続又は遺贈により当該被相続人が当該相続の開始の直前に有していた全ての山林の取得をした個人であること」が規定されている。したがって、林業経営相続人に該当するためには、山林についての相続税の納税猶予の対象となる同条第1項各号の要件を満たす同条第2項第3号に規定する特例施業対象山林だけでなく、被相続人が相続の開始の直前に有していた山林の全てを当該被相続人から取得した者でなければならないこととなる。本通達ではそのことを留意的に明らかにした。
また、措置法規則第23条の8の4第8項第6号においては、林業経営相続人の要件の1つとして、「その有する山林(同項第5号ロ及びハに掲げるものを除き、被相続人から相続又は遺贈により取得したものを含む。)の全て及び当該個人が他の山林の所有者から経営の委託を受けた山林の全てが、特定森林経営計画が定められている区域内に存すること」が規定されている。また、措置法第70条の6の4第2項第4号ロにおいては、「当該個人が、当該相続の開始の時から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限まで引き続き当該相続又は遺贈により取得をした当該山林の全てを有し、かつ、当該特定森林経営計画に従ってその経営を行っていること」と規定されている。したがって、林業経営相続人に該当するためには、相続又は遺贈により取得した当該山林以外に山林を有する場合又は他の山林所有者から経営の委託を受けた山林がある場合には、これらの山林の全て(措置法規則第23条の8の4第8項第5号ロ及びハに掲げるものを除く。)が特定森林経営計画が定められている区域内に所在することとなるよう、被相続人から森林法第17条の規定により包括承継した特定森林経営計画について同法第12条の規定により変更の認定を相続税法第27条第1項の相続税の申告期限までに受けなければならないこととなる。本通達のまた書ではそのことを留意的に明らかにした。
なお、措置法第70条の6の4第6項においては、「相続に係る相続税の申告書の提出期限までに、当該相続又は遺贈により取得をした山林の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合には、適用しない。」と規定されていることから、(注)1においてはそのことを留意的に明らかにした。
さらに、同条第8項においては、「第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする相続人が提出する相続税の申告書に、特例施業対象山林の全部につき同項の規定の適用を受けようとする旨の記載がない場合・・・には、適用しない。」と規定されていることから、(注)2においては記載が求められているのは、特例施業対象山林のうち措置法第70条の6の4第1項各号の要件に該当するものであることを併せて留意的に明らかにした。
(参考)
(新設)
(説明)
林業経営相続人が、措置法第70条の6の4第1項の規定の適用を受けるためには、同条第2項第4号に規定する要件等を満たし、かつ、相続税の期限内申告書及び担保の提供に関する書類を当該申告書の提出期限までに提出する必要があるが、同項第3号に規定する特例施業対象山林を相続又は遺贈により取得した相続人等が相続税の申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その者(以下「第1次林業経営相続人」という。)においてこれらの要件を満たすことは困難である。
そのため、第2次林業経営相続人が一定の要件を満たす場合には、第1次林業経営相続人についても措置法第70条の6の4第1項の規定の適用があるものとし、このことに関する読み替え規定が、措置法令第40条の7の4第3項に規定されている。
本通達は、第1次林業経営相続人が措置法第70条の6の4第1項の規定の適用を受けるための留意事項を次のとおり明らかにしたものである。