問 被相続人甲は、自己の所有する土地(200平方メートル)の上にアパート1棟(10室)を所有し、これを貸付事業の用に供していたが、相続開始の1か月前にこのアパートの1室が空室となり、相続開始の直前においては9室を貸し付けていた(この空室については、甲の大学生の子を住まわせるため新規の入居者の募集を中止していた)。
 上記アパートとその敷地(200平方メートル)については、甲の配偶者乙が相続により取得し、9室の貸付事業について乙が引き継ぎ、申告期限まで引き続き貸付事業を行っている。
 乙が貸付事業を引き継いだ部分について、貸付事業用宅地等(貸付事業用宅地等の要件は満たしている。)として選択して小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その1))、第11・11の2表の付表2の2(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その2))及び第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))の記載はどのようにすればよいか。

 路線価 1平方メートル 200,000円、借地権割合 70%、借家割合 30%


 相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その1))、第11・11の2表の付表2の2(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その2))及び第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))の記載は次頁のとおり。
 なお、本件における減額される金額及び課税価格に算入される金額は次のとおり。

1 財産評価基本通達に基づき、土地の評価を行った場合の評価額
 貸家建付地の評価額
 @200,000円×200平方メートル=40,000,000円
 40,000,000円×(1−0.7×0.3×(180平方メートル/200平方メートル))=32,440,000円

2 貸付事業用宅地等について減額される金額等の計算

(1) 空室に対応する敷地部分の評価額
 @200,000円×20平方メートル=4,000,000円・・・まる1

(2) 賃貸中の部屋に対応する敷地部分の評価額
 @200,000円×180平方メートル=36,000,000円
 36,000,000円×(1-0.7×0.3)=28,440,000円・・・まる2

(3) 小規模宅地等について減額される金額及び課税価格に算入される金額の計算
 28,440,000円(まる2)×50%=14,220,000円・・減額される金額
 28,440,000円−14,220,000円=14,220,000円・・・まる3
 4,000,000円(まる1)+14,220,000円(まる3
 =18,220,000円・・課税価格に算入される金額

(参考)
 被相続人又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業の用に供されていた宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、これらの宅地等のうち、被相続人等の事業の用に供されていた宅地等以外の用に供されていた部分があるときは、被相続人等の事業の用に供されていた部分に限られる(措令40の2まる2)。
 例えば、相続開始の直前に空室となったアパートの1室については、相続開始時において継続的に貸付事業の用に供していたものと取り扱うことができるか疑義が生ずるところであるが、空室となった直後から不動産業者を通じて新規の入居者を募集しているなど、いつでも入居可能な状態に空室を管理している場合は相続開始時においても被相続人の貸付事業の用に供されているものと認められ、また、申告期限においても相続開始時と同様の状況にあれば被相続人の貸付事業は継続されているものと認められる。
 したがって、そのような場合は、空室部分に対応する敷地部分も含めて、アパートの敷地全部が貸付事業用宅地等に該当することとなる。

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